2009年10月11日 (日)

「死刑のある国ニッポン」読者レビュー(藤井誠二氏ブログより)

ノンフィクションライター・藤井誠二氏のブログ「ノンフィクションライター的日常」
http://ameblo.jp/fujii-seiji/
の10月1日記事に、
藤井氏と森達也氏の共著
「死刑のある国ニッポン」(週刊金曜日)
http://www.kinyobi.co.jp/publish/publish_detail.php?no=730
の読者レビューが掲載されています。

各コメントそれぞれに「死刑」について考えさせられる部分があるので、皆様にもお読みいただきたく、ご紹介します。

※藤井誠二氏ホームページ
「叛虚構主義」
http://fujiiseiji.ledbrain.que.jp/

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2009年9月19日 (土)

「難解な法律概念」、裁判員裁判、評議、理解

 「難解な法律概念」を裁判員裁判でどのように扱うか、が問われています。

 以下の報道は、評議の様子が一部垣間見える報道です。この質問をし、または質疑の中からこの部分を報道に載せた記者の感覚・問題意識は、とても鋭いと思いました。

(以下東京新聞2009年9月18日より一部引用)

千葉、強盗致傷適用し執行猶予 「刑法の定義分かった」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009091801000490.html

 適用する罪名が初めて争点となった裁判員裁判で千葉地裁(小坂敏幸裁判長)は18日、無職安田直樹被告(49)に対し検察側が主張した強盗致傷罪を適用、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡した。検察側求刑は懲役4年、弁護側は窃盗罪と傷害罪の適用を求め懲役1年6月、執行猶予3年が相当としていた。裁判員裁判での執行猶予判決は3件目で、すべて保護観察付きとなった。
 判決後、裁判員6人、補充裁判員3人の経験者全員が記者会見。強盗という言葉の印象と事件内容の違いに裁判員を務めた60代の男性は「最初はこれで強盗と思ったが、裁判長が強盗にもいろいろあるんですと丁寧に説明してくれた」とし、女性裁判員経験者は「裁判長の説明で、刑法でいう強盗の定義を理解できた」と話した。

(以下略、以上引用終わり)

なお、「市民感覚」と裁判員裁判という切り口で東京新聞2009年9月10日朝刊「特報」で特集が組まれています(私もコメントを寄せています)ので、機会があれば、お読み下さい。その記事にもあるように、「罪刑法定主義」の意義が看過されないよう、また本来必要とされる形で「市民感覚」が生かされるよう、きちんとした検証がすでに必要となっているように思います。

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2009年8月 3日 (月)

【情報提供】①被告人の着席位置②被告人の服装③手錠、腰縄

本日から、裁判員裁判が実際に始まりました。

裁判員裁判開始に伴い、いくつか刑事裁判の実務上運用に変化が生じていますが、
本日日弁連会員宛にファックスされている「日弁連ニュース」には、
①被告人の当事者席着席
②被告人の服装
③被告人の手錠、腰縄について、
の各情報が記載されています。
以下、とくに弁護士宛周知のため、アップします。

①被告人を当事者席に着席させる申し入れについて

 法務省矯正局は、6月に、「裁判所の指示により、被告人を弁護人席の隣に着席させる場合がある」旨記載した、被告人の着席位置に関する通達を発しています。また日弁連からは最高裁に対して、弁護人がこれを求めた場合は各裁判体において柔軟に対応するよう求める要望書を提出し、最高裁はこれを各地裁宛に通知するとともに、前記法務省矯正局通達の周知も行ったとのことです

②被告人の服装について

 被告人からの申出により、拘置所から、ワンタッチ式ネクタイと特殊サンダル(革靴風のもの)が貸与されます。

③被告人の手錠、腰縄について

 法務省矯正局は7月24日、裁判所から入廷前解錠(事前解錠)の方針が伝えられた場合は、刑事施設と裁判所で打ち合わせを行い、原則として事前解錠を行う旨の基本方針を定め、通達を発したそうです。

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2009年7月 6日 (月)

本日19時「報道発ドキュメンタリー宣言」

本日19時からのテレビ朝日「報道発 ドキュメンタリー宣言」のご紹介をさせていただきます。
詳細は番組下記サイトをご覧下さい。

http://www.tv-asahi.co.jp/d-sengen/

(以下上記サイトより引用)

ある日突然、犯人に
~痴漢冤罪弁護人の闘い~

「私は痴漢冤罪を闘っています」
突如身に降りかかった犯罪者という烙印。
無実を訴え、戦い続ける人々がいる。
有罪率99.9%。。。
やってないのにやったとされる人間のために闘う弁護士・秋山賢三。
痴漢冤罪事件で史上初めて最高裁で逆転無罪を勝ち取った彼の闘いに密着。

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2009年6月 6日 (土)

足利事件

足利事件について、受刑者であった菅家利和さんが釈放されたニュースが大々的に報道されています。

私たちは、菅家さんの今後の生活を支援するとともに、この事件からは、今後のための教訓を得なければなりません。そこで以下、毎日新聞2009年6月5日等を参考に、以下に時系列で事件・裁判経過を整理してみました。整理してみると、とても多くのポイントに気付かされます。ご参考に、アップします。

<経過>
90年5月13日 女児の遺体発見

91年8月 女児の半袖下着の体液と菅家さんが捨てたごみのDNA型についての「DNA鑑定」

※このゴミ袋は捜査機関による無断持ち去りとのこと

91年12月 菅家さんを逮捕、起訴

91年12月1日朝 菅家さん任意同行
同日午後10時ごろ 「自白」

 ※菅谷さん:「刑事に髪を引っ張られたり、け飛ばされたりして『早くしゃべって楽になれ』と厳しく追及された」「夜まで『自分はやっていない』と言ったが、受け付けてもらえず自白してしまった」

 ※12月1日毎日新聞
  「元運転手、きょうにも聴取 現場残存資料、DNA鑑定で一致」
  「(栃木県足利市での前年5月の女児殺害事件で、)同県警足利署捜査本部は30日までに、身辺捜査していた同市内の元運転手(45)の体液と遺体発見現場に残されていた資料をDNA(デオキシリボ核酸)鑑定で照合したところ「一致する」との鑑定結果を得た。このため捜査本部は1日朝にも元運転手に任意同行を求め、事件との関連について事情聴取を始める。(以下略)」

 ※12月03日読売新聞
  「難事件を解決したDNA鑑定」
  「栃木県足利市の河原で昨年5月、4歳の幼女が殺されていた事件で、45歳の元保育園運転手が逮捕された。容疑者は性的異常者と見られるが、自分の欲望のために、罪もない無抵抗な幼女を殺害する犯行は、憎んでも余りある。同市周辺では、昭和54年から3件の幼女殺害事件が未解決のままだ。絞殺して遺体を河原に捨てる手口などから、捜査当局は、この男との関連性を追及している。これほどの犠牲者を出す前に、容疑者を逮捕していればと思うと残念だ。(以下略)」

 ※なお、1979年、1984年の幼女殺害事件についても自白し、足利事件起訴後に再逮捕(1979年事件について)もされたが、処分保留のまま釈放、1993年1月に両方の事件とも不起訴となった。

92年2月 初公判、起訴事実を認めた

 ※証拠品の着衣を見せて確認する検察官に対して
  「これは女児のものか」「はい、そうです」
 ※菅家さん:当初の心境について
  「傍聴席に刑事がいるとびくびくしていたため、無罪を主張できなかった」

 ※ここで検察側161点証拠請求につき、弁護側はDNA鑑定に関する鑑定書3通以外の全証拠に同意したとのこと( http://www.watv.ne.jp/~askgjkn/nenn.htm

   6月 被告人質問
  「『自転車に乗るかい』と声をかけて女児を誘い、乗せたが、気が変わり、わいせつ目的が生じた。抱きついたら声を出して騒がれたので、とっさに手が首にいってしまった」

  12月 第6回公判で起訴事実を一転否認

 ※その後 裁判所に「自白」上申書提出
  …家族に無罪を訴えた手紙を書いた理由を説明する中で「心配をかけると思い無実だと書きました。(極刑かもしれないと)怖くなってやっていない、と話しました」と説明

93年1月 第7回公判で起訴事実を再び認める

   3月25日 検察側が無期懲役を求刑

      弁護側がDNA鑑定に証拠能力がないと無罪主張

   6月24日 第10回公判で再び否認。再度論告弁論、結審

   7月7日 宇都宮地裁無期懲役判決

   ※判決内容(自白の信用性、供述の変遷に関する量刑理由)は下記の通り

(※控訴審から佐藤博史弁護士受任、「一審の弁護士から『菅家さんは犯人である』と聞いていました」)

96年5月9日 東京高裁が控訴棄却

   ※判決内容(ごみ袋収集の違法性、自白の信用性)は下記の通り

00年7月17日 最高裁が上告棄却。無期懲役確定

※判決内容:「記録を精査しても、被告人が犯人であるとした原判決に、事実誤認、法令違反があるとは認められない。なお、本件で証拠の一つとして採用されたいわゆるMCT118DNA型鑑定は、その科学的原理が理論的正確性を有し、具体的な実施の方法も、その技術を習得した者により、科学的に信頼される方法で行われたと認められる。したがって、右鑑定の証拠価値については、その後の科学技術の発展により新たに解明された事項等も加味して慎重に検討されるべきであるが、なお、これを証拠として用いることが許されるとした原判断は相当である。」

02年12月 宇都宮地裁に再審請求

08年2月13日 宇都宮地裁が再審請求を棄却

   2月18日 弁護団が即時抗告

   10月 東京高検がDNA再鑑定に反対しないとの意見書提出

   12月 東京高裁の即時抗告審でDNA再鑑定を決定

09年5月18日 東京高裁が遺留物と菅家さんのDNA型が一致しないとの鑑定書を検察と弁護団に交付

   5月19日 弁護団、東京高検に対し、無期懲役刑執行停止と釈放を要請

参考:足利事件HP
http://www.watv.ne.jp/~askgjkn/
田村譲松山大法学部教授HP
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/asikagajikenn.htm
佐藤博史弁護士インタビュー記事
http://allatanys.jp/B001/UGC020006020090508COK00288.html

・地裁判決内容抜粋
(判例タイムス820号177ページ)

「そこで次に、被告人の自白の信用性について検討すると、前掲各証拠によれば、被告人は、本件により初めて取り調べを受けた当日に犯行を自白し、以後捜査段階においては一貫してこれを維持し、公判でも最終段階に至るまでほぼ自白を維持していたのであり、途中、M1を誘い出した目的など犯行の状況について捜査段階と一部異なる供述を法廷でした際にも、M1殺害という犯行の基本的部分についてはこれを認めていたこと、右自白に際して捜査官の強制や誘導が行われたことを窺わせる事情はないこと(検察官作成の捜査報告書からは、被告人は自発的に供述していることが認められる。)、捜査官や裁判官に対してだけでなく、弁護人に対してもほぼ一貫して事実を認めていたことが認められる(なお、被告人は、精神鑑定を行った医師に対しても、同様の供述を行っている。)。
 また、自白内容についてみると、例えば、第一回公判期日において、証拠物であるM1の着衣についての記憶の有無を尋ねられた際に、記憶にある物とない物、あるいはおおむね記憶に残っている物をそれぞれ区別して述べるなど、供述内容は捜査、公判段階を通じて相当具体的であるとともに、その内容は自然であって、格別疑問を差しはさむべき点は認められない。
 そうすると、本件犯行を認めた被告人の自白は信用することができ、先に挙げた事情とあいまって、被告人がM1の殺害等を行ったと認めることができる。」

「なお、被告人は、本件による起訴後間もない時期から、被告人の兄弟等に宛てた手紙に自分は無実である旨書いていたことが認められ、第六回公判期日の被告人質問において、裁判長や検察官の質問に対しては犯行を認め、申し訳ないことをしたなどと述ベていたものの、その直後に弁護人から右手紙について質問されてからは一転して犯行を否認し、第七回公判期日で再び自白に転じた。そして、犯行を認めたまま第九回公判期日で一旦弁論が終結したものの、被告人はその約二か月後に再び犯行を否認する旨の手紙を弁護人に送り、再開後の公判でも犯行を否認するに至っている。
 そこで、右否認について検討すると、被告人が否認に転じたのは、犯行への関与の有無という、まさに自分が重い刑に処せられるか、あるいは無罪となるかの分かれ目となる最も基本的部分についてであって、被告人もこの点に最大の利害と関心を持っていたはずであるにもかかわらず、第六回公判期日に至るまで弁護人に対しても事実を認めていたこと、また右期日以降も、否認を維持することが可能であったにもかかわらず、間もなく再び自白に転じたように、否認の態度自体が極めてあいまいであること、公開の法廷においてはもちろんのこと、多数の関係者に対して犯行を自白しながら、後になってそれを再三にわたり変転させたことについて、被告人自身その理由をはっきり述べていないことにも照らすと、これらの否認供述はたやすく信用しがたい。特に、右兄弟等への手紙についてみると、その内容は、拘置所での生活のつらさを訴えたり、兄弟等に対して差入れ等を要求する等の記載が主で、無実を訴える部分は付随的に書かれているものがほとんどであって、いわゆるアリバイなどを含めた無実の具体的内容に関する記載は存在しない。そして、右手紙を書いた理由につき被告人が公判で供述するところにも照らすと、被告人としては、拘置所で暮らすようになってそれまでの生活が激変し、大事件を起こしたとして肉親からの面会もなく寂しかったことから、見捨てられるのを恐れ、無実を訴えた可能性が高い。また、第六回公判期日での否認についても、その直前に、極刑を望むとのM1の両親の手紙が証拠調ベとして朗読されていることからすると、被告人は、これに動揺し、兄弟等ヘの手紙に関する弁護人の質問を契機に一時否認に転じたものと考えられる。さらに、弁論が一旦終結した後に被告人が再び否認に転じたこと及び判決を一か月後に控えた時期に弁護人に前記の手紙を出したことの理由については、判然としないところがあるが、否認の態度自体のあいまいさなどに照らして、これをたやすく信用できないことは先に述べたとおりである。
 そして、先にもみたとおり、被告人の自白が具体的かつ自然で信用できるものであり、これを裏づける客観的証拠も存在するのであるから、被告人の否認によっても先の事実認定は左右されない。」

「ところが、被告人は、被害者の両親に対して謝罪を行うでもなく、また、公判で一時「被害者に対して申し訳ない。」などと述べておきながら、最終的には犯行を否認するなど、自己の行為を真撃に反省しているとはいえない。」

・高裁判決内容
(判例タイムス922号296ページ)

「 被告人が投棄したごみ袋収集の違法性
 所論は、本件DNA型鑑定は、現場資料との異同比較の資料として、被告人が投棄したごみ袋の中のティッシュペーパーに付着していた精液を用いて行なわれたが、捜査官がこのようなごみ袋を収集して内容物を犯罪捜査に用いることは、ごみとして焼却処分されるものと了解して投棄した被告人の意思に反する事態であり、捜査官の任意捜査活動として許される範囲を逸脱し、個人のプライバシーを著しく侵害するものとして違法であるといわなければならず、また、本件の捜査では、被告人以外にも、投棄したごみ袋を捜査官に開披され内容物を見分されてしまった者が少なからずあったであろうから、このような、広範囲の、著しいプライバシー侵害を伴う捜査方法を将来にわたって抑止するためにも、本件ティッシュペーパーを証拠資料に用いることは禁止しなくてはならず、これと一体をなす本件DNA型鑑定の結果も、違法収集証拠そのものとして、証拠能力が否定されなくてはならない、と主張する。
 検討するに、関係証拠によれば、平成二年一一月初めころ、本件の被疑者として被告人が捜査の対象に浮かび、同年一二月初めから捜査員がほとんど連日にわたりその行動を密かに観察していたが、本件ティッシュペーパー五枚は、翌平成三年六月二三日、捜査員が福居町の被告人の借家付近で張り込み中に、被告人がビニール袋を右借家に程近いごみ集積所に投棄したのを認め、午前一〇時一〇分ころこれを拾得して警察署へ持ち帰り、内容物を見分して発見したものであって、警察官が特定の重要犯罪の捜査という明確な目的をもって、被告人が任意にごみ集積所に投棄したごみ袋を、裁判官の発する令状なしで押収し、捜査の資料に供した行為には、何ら違法の廉はないというべきである。」

なお高裁判決中自白の信用性判断部分については、上記判例タイムス誌上では省略されていますが、その解説中で、「結論として、被害者の半袖下着に付着していた犯人の精液を資料にして判定されたABO式血液型、ルイス式血液型の2種の血液型ばかりでなく、MCT118法によるDNAの型が被告人のそれと合致すること、被告人の性行、知的能力、生活ぶり、本格的事情聴取の初日に早くも被告人が自白し、捜査官の押し付けや誘導などがなかったことを被告人自身認めながら、犯人であればこそ述べ得るような事柄について客観状況によく符合する具体的で詳細な供述をしたことなど本件の関係証拠を総合すれば、被告人の原審の審理後半以降当審にいたる犯行否認の供述にもかかわらず、被告人が被害者を猥せつ目的で誘拐して殺害し遺棄したことを認定するについて、合理的疑いを容れる余地はないというべきである、と述べている。」と触れられています。

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2009年5月21日 (木)

裁判員制度、開始。

裁判員制度が、始まりました。

問題は多数残されています。ただ、私は実務家です。今現にある制度の中で、目の前のひとつの事件や一人の人に対して弁護士として何ができるか、が私の最後の行動規範です。実務家には、他の誰にもできない、実務家のやるべきことがあると思っています。

今日という日が刑事裁判史にどのような意味を持つか、そのことはこれからも考え続けていきます。ただ、その前に、私は実務家です。私はまず、実務家としてやるべき(、と自分が信じている)ことをやっていきます。

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2009年4月15日 (水)

供述の信用性評価手法について:最高裁H21・4・14判決(無罪)

下記事件最高裁判決につき、最高裁HPにも判決文がでていましたので、あわせてアップします。
なお、主任弁護人は当事務所所属の秋山賢三弁護士です。

那須弘平補足意見中の下記指摘は、これまで弁護人側から再三指摘されてきた点でもあり、重要だと思います。
那須裁判官:
「痴漢事件について冤罪が争われている場合に,被害者とされる女性の公判での供述内容について「詳細かつ具体的」,「迫真的」,「不自然・不合理な点がない」などという一般的・抽象的な理由により信用性を肯定して有罪の根拠とする例は,公表された痴漢事件関係判決例をみただけでも少なくなく,非公表のものを含めれば相当数に上ることが推測できる。しかし,被害者女性の供述がそのようなものであっても,他にその供述を補強する証拠がない場合について有罪の判断をすることは,「合理的な疑いを超えた証明」に関する基準の理論との関係で,慎重な検討が必要であると考える。」
「被害者が公判で供述する場合には,被害事実を立証するために検察官側の証人として出廷するのが一般的であり,検察官の要請により事前に面接して尋問の内容及び方法等について詳細な打ち合わせをすることは,広く行われている。痴漢犯罪について虚偽の被害申出をしたことが明らかになれば,刑事及び民事上の責任を追及されることにもなるのであるから(刑法172条,軽犯罪法1条16号,民法709条),被害者とされる女性が公判で被害事実を自ら覆す供述をすることはない。検察官としても,被害者の供述が犯行の存在を証明し公判を維持するための頼りの綱であるから,捜査段階での供述調書等の資料に添った矛盾のない供述が得られるように被害者との入念な打ち合わせに努める。この検察官の打ち合わせ作業自体は,法令の規定(刑事訴訟規則191条の3)に添った当然のものであって,何ら非難されるべき事柄ではないが,反面で,このような作業が念入りに行われれば行われるほど,公判での供述は外見上「詳細かつ具体的」,「迫真的」で,「不自然・不合理な点がない」ものとなるのも自然の成り行きである。これを裏返して言えば,公判での被害者の供述がそのようなものであるからといって,それだけで被害者の主張が正しいと即断することには危険が伴い,そこに事実誤認の余地が生じることになる。」
「満員電車内の痴漢事件については上記のような特別の事情があるのであるから,冤罪が真摯に争われている場合については,たとえ被害者女性の供述が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で,弁護人の反対尋問を経てもなお「不自然・不合理な点がない」かのように見えるときであっても,供述を補強する証拠ないし間接事実の存否に特別な注意を払う必要がある。その上で,補強する証拠等が存在しないにもかかわらず裁判官が有罪の判断に踏み切るについては,「合理的な疑いを超えた証明」の視点から問題がないかどうか,格別に厳しい点検を欠かせない。」

なお近藤崇晴裁判官も、「「被害者」の供述内容が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で「不自然・不合理な点がない」といった表面的な理由だけで,その信用性をたやすく肯定することには大きな危険が伴う。」とし、上記補足意見に賛同しています。

電車痴漢:防衛医大教授に逆転無罪 最高裁「判断慎重に」
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090415k0000m040081000c.html

 東京都世田谷区を走行中の満員電車で06年、女子高校生に痴漢をしたとして強制わいせつ罪に問われた防衛医科大教授、名倉(なぐら)正博被告(63)=休職中=の上告審判決で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は14日、懲役1年10月の実刑とした1、2審判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。小法廷は「被害女性の証言の信用性を疑う余地がある。犯罪の証明が不十分」と述べた。名倉さんの無罪が確定する。
 最高裁が痴漢事件で2審の有罪判決を覆したのは初めて。小法廷は満員電車の痴漢事件の審理について「特に慎重な判断が求められる」と初判断を示し、理由として「客観証拠が得られにくく被害者の証言が唯一の証拠である場合も多い。被害者の思い込みなどで犯人とされた場合、有効な防御は容易でない」と述べた。被害証言を補強する他の証拠を求める内容と言え、捜査や公判に大きな影響を与えそうだ。
(中略)小法廷は、鑑定で指から下着の繊維が検出されていないなど客観証拠がなく、起訴内容を支える証拠は女性の証言だけと指摘。そのうえで▽女性が積極的に痴漢行為を回避していない▽起訴内容の行為の前に痴漢被害を受けて下車しながら、再び被告のそばに乗車した経緯は不自然--などの点から「信用性を全面的に認めた1、2審の判断は慎重さを欠く」と結論づけた。
 判決は5人の裁判官のうち3人の多数意見。田原裁判長と堀籠幸男裁判官は「女性の証言を信用できるとした1、2審の認定に不合理はない」と反対意見を述べた。
(以下略、以上引用終わり)

(判決文:裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37531&hanreiKbn=01

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2009年2月26日 (木)

「音声認識システム」

以下の報道がされています。

連日開廷で論告・弁論も証拠調べから間がないということになると、このような対応が必要になると思います(これは、従来通りの記録・書面に頼るということとイコールではありません)。

(以下東京新聞2,009年2月25日より一部引用)
弁護・検察側に提供 法廷発言記録 最高裁方針『口頭審理に集中を』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009022502000052.html
 五月から刑事裁判に導入される裁判員制度で、法廷での発言内容を裁判員が評議の場で確認できるよう音声や文字、映像データで記録した「音声認識システム」について、最高裁は、当初想定した裁判員だけでなく、弁護、検察側双方にもデータを提供する方針を決めた。
 音声認識システムは法廷に設置したカメラやマイクで発言を録音・録画。同時に発言内容を自動的に文字化してDVDなどに記録する。キーワードや発言者などを入力すると、検索した部分が文字と映像で再生される。
(中略) 最高裁によると、システムは当初、裁判員向けの使用を想定していたが、弁護、検察側双方から提供を求める声があった。最高裁の担当者は「裁判員だけでなく弁護人、検察官も発言内容の記憶を呼び起こす必要が生じると考え、希望があれば提供することを決めた」と説明する。
(中略) 弁護、検察側双方に提供されるデータは音声と文字のみ。動画はプライバシー保護のため提供されない。
(以下略、以上引用終わり)

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2009年1月21日 (水)

最高裁の模擬裁判検証結果報告書作成を受けて

裁判所、検察庁、弁護士会の法曹三者ではここ数年継続的に各地で裁判員模擬裁判を行ってきましたが、最高裁が今回、その検証結果をまとめたようです。

「“最高裁がイメージする”裁判員裁判」は、そろそろ全体像が固まってきたように思います。

個人的にはこの間の模擬裁判を見てきて、裁判員裁判の実施は手続的変化・刑事訴訟法的変化のほか、刑事実体法の解釈にも大きな変容をきたしているように感じ、この点に強い問題意識を持っています。
とくに、故意(殺意など)の認定については、実行行為をした個別被告人の主観面としての故意の認定というより、「こういう客観的状況では常識的に見て故意ありとみるべきである」といった形で認定され始めているように感じます(これまでも、「実務的」とされる解釈では、あったことですが)。すなわち、個別具体的事件では主観面では様々な要素があり、同じ客観的状況でも一律に簡単に故意を認定できるはずがないのですが、その点が完全に放棄されはじめたような印象です。「強度の殺傷能力があるもの」が「身体の枢要部」に刺さっていたら、それだけで決まり、といった具合に。

個別事件のまたは個別の人間の実態まで目を向けない裁判がこれから始まってしまうように思います。
それがここで言う「真相解明」なのでしょうか?これが単なる危惧で終わればいいのですが。

(以下東京新聞2009年1月20日より引用)
『真相解明が最優先』 模擬裁判報告書 最高裁 審理短縮偏重に警鐘
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009012002000085.html
 刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の五月開始を控え、最高裁は、四年間にわたって全国で実施してきた模擬裁判の成果と課題を検証した報告書をまとめた。裁判員になる国民の負担を軽減するため、審理期間の短縮を重要課題としてきたが、報告書は「真相解明は、審理期間の短縮以上に重要な課題」と強調している。
 模擬裁判は二〇〇五年から、全国の地裁、支部で約五百五十回実施された。審理や評議の状況を裁判官が検討し、多数を占めた見解を中心に報告書がまとめられた。裁判員制度のあり方では「国民の負担を軽くしつつ、真相の解明を満たすもの」などと規定。模擬裁判は裁判員裁判の七割が三日間で終了することを前提に実施されたが、報告書は「必要な審理は尽くされるべきだ」と結論付けた。
 初公判前に争点を絞り込む公判前整理手続きについては「証拠の点数を減らすことに力を尽くすのではなく、真相解明に必要不可欠な証拠を整理することが重要だ」とした。
 昨年十二月にあった広島市の少女殺害事件の控訴審判決で、広島高裁は、犯行場所などが明らかになると思われる検察官調書を公判前整理手続きで証拠採用しなかった一審を厳しく批判したが、報告書も証拠の絞り過ぎに警鐘を鳴らした。
 また、裁判員の辞退を認めるかどうかの判断について「無用な呼び出しを避けるため、できる限り早期に辞退を認めるような運用をするべきだ」と提言。
 裁判員の選任手続きは、あくまで辞退事由などを判断するためのものととらえ、(1)質問は必要最小限にする(2)裁判員候補者が検察側や被告・弁護側に有利かどうかを見極めるために質問したり、人柄や能力を探るためだけの質問も許されない-とした。
(以上引用終わり)

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2008年12月 3日 (水)

12月6日NHKスベシャル:裁判員模擬裁判(死刑求刑事件)

NHKスベシャルで、裁判員裁判について、以下の番組が放映されるそうです。
番組紹介を読むかぎり、①死刑求刑事件②台本なし、と、これまで法曹三者での模擬裁判で実施を申し入れても実現できなかった内容で、かなり関心を引かれます。

模擬裁判はあくまで模擬ですから本当の事件と同じにはなりえないのですが、それでも現実の事件で裁判員が直面しうる問題については、出来るかぎりきちんと事前検証する努力、たとえばこういった模擬裁判が必要だと思います。
その準備を除いた状態で、「負担はありません」「誰でもできます」といったトーンで告知をすることは、いかがなものでしょうか。

放映日時:12月6日(土)午後7時30分〜8時30分

(NHK:番組ホームページ)
http://www.nhk.or.jp/special/onair/081206.html
(番組紹介)
12月初め、全国30万人(350人に1人の割合)の元に、裁判員の候補になったことを知らせる通知が届く。裁判員制度がいよいよ来年5月に始まり、決して他人事ではないことを、実感する瞬間だ。
裁判員制度は無作為に選ばれた6人の市民がプロの裁判官3人とともに判決を下すもの。対象は殺人・強盗致死傷などの重大刑事事件で、年間およそ3000件にのぼると見られる。最も重い刑は「死刑」。一般の市民が被告の生死を決める重い判断を迫られることになるが、その時にどのような葛藤を抱くことになるのか、どのような決断をしなければならないのかについては、裁判所による検証が行われていない。
そこでNHKでは独自に、本格的な模擬裁判を実施した。実際に起きた強盗殺人事件をモデルに、裁判官、検察官、弁護士役をいずれも経験豊富な専門家に依頼し、台本なしで真剣勝負をしてもらった。主役となる裁判員は無作為で選ばれた一般の市民6人。3日間にわたって行った裁判で、彼らは何に悩み、どんな意見を戦わせたのか、そのドキュメントを通じて、裁判員制度で私たちが向きあうことになる現実を浮き彫りにする。

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2008年12月 2日 (火)

ご参考:裁判員はどんなときに辞退できるのか?

いよいよ先週末裁判員候補者あて通知の発送がされ、すでに候補者の元へ届いているようです。

2008年11月28日毎日jp
裁判員制度:裁判員候補に通知 最高裁、29万5000人に発送
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081128dde001040064000c.html

2008年12月1日読売オンライン
「裁判員通知来た」ブログで公開相次ぐ…氏名・顔写真も
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081130-OYT1T00723.htm?from=navr

2008年12月2日アサヒドットコム
最高裁コールセンターに電話3890件 裁判員候補通知
http://www.asahi.com/national/update/1202/TKY200812010439.html

さて、
欠格事由(立場上、裁判員になれない人)や辞退可能事由のある人は、今回の通知に対して、そのことを記入して返送することになっています。

そこで、裁判員になれない人、辞退できる人についてどのように定められているか、法令の関係部分をピックアップしてみました。
ご参考にどうぞ。

1 

裁判員法

(裁判員の選任資格)
第十三条  裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。

(欠格事由)
第十四条  国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。

一  学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない者。
 ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。
二  禁錮以上の刑に処せられた者

三  心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者

(就職禁止事由)
第十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。

一  国会議員

二  国務大臣

三  次のいずれかに該当する国の行政機関の職員
イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)
ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第七条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員
ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「防衛省職員給与法」という。)第四条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員及び防衛省職員給与法第四条第二項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第一項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員

四  裁判官及び裁判官であった者

五  検察官及び検察官であった者

六  弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者

七  弁理士

八  司法書士

九  公証人

十  司法警察職員としての職務を行う者

十一  裁判所の職員(非常勤の者を除く。)

十二  法務省の職員(非常勤の者を除く。)

十三  国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)

十四  判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者

十五  学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授

十六  司法修習生

十七  都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長

十八  自衛官

2  次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。

一  禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者

二  逮捕又は勾留されている者

(辞退事由)
第十六条  次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。

一  年齢七十年以上の者

二  地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)

三  学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)

四  過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者

五  過去三年以内に選任予定裁判員であった者

六  過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)

七  過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者

八  次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者

イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。

ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。

ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。

ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。

(事件に関連する不適格事由)
第十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。

一  被告人又は被害者

二  被告人又は被害者の親族又は親族であった者

三  被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人

四  被告人又は被害者の同居人又は被用者

五  事件について告発又は請求をした者

六  事件について証人又は鑑定人になった者

七  事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者

八  事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者

九  事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者

十  事件について刑事訴訟法第二百六十六条第二号の決定、略式命令、同法第三百九十八条から第四百条まで、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。
 ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。

(その他の不適格事由)
第十八条  前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。

2 

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第十六条第八号に規定するやむを得ない事由を定める政令

内閣は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)第十六条第八号の規定に基づき、この政令を制定する。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「法」という。)第十六条第八号に規定する政令で定めるやむを得ない事由は、次に掲げる事由とする。

一 妊娠中であること又は出産の日から八週間を経過していないこと。

二 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある親族(同居の親族を除く。)又は親族以外の同居人であって自らが継続的に介護又は養育を行っているものの介護又は養育を行う必要があること。

三 配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、直系の親族若しくは兄弟姉妹又はこれらの者以外の同居人が重い疾病又は傷害の治療を受ける場合において、その治療に伴い必要と認められる通院、入院又は退院に自らが付き添う必要があること。

四 妻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は子が出産する場合において、その出産に伴い必要と認められる入院若しくは退院に自らが付き添い、又は出産に自らが立ち会う必要があること。

五 住所又は居所が裁判所の管轄区域外の遠隔地にあり、裁判所に出頭することが困難であること。

六 前各号に掲げるもののほか、裁判員の職務を行い、又は裁判員候補者として法第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することにより、自己又は第三者に身体上、精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由があること。

※なお以下の記事には、過去の模擬裁判で辞退が認められた例・認められなかった例がのっています。あくまで模擬裁判での例ですが、参考になるかもしれません。

2008年11月29日アサヒドットコム
裁判員辞退、最高裁は「柔軟に判断」
http://www.asahi.com/national/update/1129/TKY200811290073.html

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2008年11月 1日 (土)

裁判員裁判・公判段階で裁判員が指摘した新争点の扱いについて(審理計画の変更)

東京地裁で行われた模擬裁判で、以下の展開になったようです。
実際の裁判は「審理計画」どおりにいかないことがある「生き物」だ、ということを伝える事例ですね。
その後の顛末はまだ確認していないので、情報を得たいと思います。

事案の詳細はわかりませんが、随所の模擬裁判でときに見られるような「まあ、これは模擬裁判ですから…まあ、とりあえず今回はこういうことで」のような安易な訴訟指揮に流れず、かつ裁判員の意見をいれた点では、裁判長の訴訟指揮を評価すべきでないかと思います。もちろん実際の裁判でも、このような裁判員の疑問を無視する運用では、到底市民の信頼は得られないでしょう。

対して、検察官の応答は、「審理計画」の名の下に、裁判員の疑問にすら答えようとせず、検察官の負う立証責任を果たそうとしないものです。検察官はあくまで「公益の代表者」であって、有罪獲得ゲームのプレイヤーではないはずです。今回のような対応はその本来の立場にも反するし(最近はとくに検察官の「プレイヤー」化(刑訴法用語でいうと「当事者主義」への純化)が顕著のように思います)、実体的真実発見の見地にも反すると思うのですが、どうでしょうか。

(以下2008年10月29日・日テレNEWS24より引用)
模擬裁判で意見が対立、審理予定が遅れる
http://www.news24.jp/121945.html
 来年5月からの裁判員制度を前に、28日に東京地裁で行われた模擬裁判で、一般の市民から選ばれた裁判員と裁判官の意見が割れ、審理の予定が遅れるという異例の事態となった。
 この模擬裁判では、一般市民から選ばれた裁判員から「被害者の供述内容が信用できるのか疑問がある」と意見が出て、「供述内容が信用できる」とする裁判官との間で意見が対立した。このため、裁判長は「本来であれば被害者の証人尋問を行うべき状況」と説明した。これに対し、検察側は「公判前整理手続きをして争点整理をしたのに、裁判所がまた新たな争点を出すのか」と激しく反論した。しかし、裁判長は「裁判員は公判から審理に加わっているので、公判前整理手続きの内容には縛られない」との見解を示し、検察側に被害者の供述を裏付ける証拠を29日までに提出するよう求める異例の展開となった。
 実際の裁判員裁判でも起こりうることとみられ、模擬裁判だけのハプニングとして片づけられないとの指摘も出ている。 (以上引用終わり)

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2008年10月27日 (月)

検察官の弁護妨害言動を違法とする判決

以下の判決をご紹介します。

このようなケースは、私もたびたび経験があります。いちいち提訴しないだけで(本来は今回の事件のように、白黒はっきりさせたほうがよいのですが、刑事事件終了後に依頼者をそこまで付き合わせるわけにもいかず、責任追及を断念しています。)、この種の捜査機関発言をあげていけば、まさにきりがありません。

人質司法の中で、自分の生殺与奪を握っている(と感じられる)捜査機関にこんなことを言われて、揺らがない被疑者がいるでしょうか。とくに、初めて留置された被疑者、身に覚えのない被疑事実で留置された方ほど、このような揺さぶりには弱いと思います。

冤罪の危険を思えば、捜査機関のこのような言動は犯罪的ですらあると思います。
でもこの件については、結局誰も責任をとらない(とらせない)のでしょうね。担当検察官も、運が悪かった程度にしか思っていないのではないでしょうか(そんなことはないというのであれば、処分結果を公表してほしいものです。)。おそらく、自分の言動の何が問題なのかすら、自覚がないのでしょう。

最初から冤罪を生みたいと思っている捜査官はいないと思いますが、「取調べの客体」と毎日接しているうちに、感覚が麻痺してくるのでしょうか。それでも僕は最後には内部の心ある人の改革に期待しているところがあるので、お人よし、と言われるのですが。

(以下毎日新聞10月25日より一部引用)
<弁護権侵害>国側に10万円の賠償命令 横浜地裁
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081025k0000m040118000c.html
検察官が取り調べ中に「弁護過誤だ」などと告げ、弁護権を侵害されたとして、妹尾孝之弁護士(横浜弁護士会)が国に150万円の賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は24日、10万円の支払いを命じた。宮坂昌利裁判官は「容疑者との信頼関係を破壊する言動で、弁護士の接見交通権を実質的に侵害しており違法」と指摘した。妹尾弁護士によると、取り調べ中の弁護士批判を違法としたケースは「非常に珍しい」という。
判決によると、妹尾弁護士は06年に競売入札妨害事件で逮捕された神奈川県秦野市元課長(52)の私選弁護人。受任後に元課長が自白調書の署名拒否に転じると、横浜地検の担当副検事は「弁護士は責任とってくれないよ」「洗脳されてるんじゃないの」と述べた。
国側は「副検事は弁護過誤を説明調で話題にした」と主張したが、宮坂裁判官は「元課長が取り調べ内容を記したメモなどの方が信用できる」と退けた。その上で「元課長の弁護人への信頼が激しく揺れ動いたことは容易に想像でき、ルール違反と言わざるを得ない」と批判した。
(以下略、以上引用終わり)

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2008年10月24日 (金)

「モリのアサガオ」

「モリのアサガオ」(郷田マモラ作・双葉社)という漫画があります。「死刑」の是非に悩む若い刑務官を主人公に描かれた作品です。

この作品中で、主人公は、「死刑存置←→死刑廃止」の間で何度も揺れ動きます。
償い、「更生」の意味、ありかた、そのプロセスと行き着く先、冤罪の問題その他、さまざまに悩んでいます。

「死刑」を真剣に考えるなら、迷宮に入り込むのではないかと思うのです。まさにこの作品のいう「モリ」のような、深い、うごめくような闇の中に。
そこまで迷い込ませてしまうものが、「死刑」という刑罰なのではないでしょうか。

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2008年10月 9日 (木)

橋下弁護士敗訴判決に接して

しばらく更新をごぶさたで、失礼しました。

さて、この判決にはやはり触れておいたほうがいいかな、と思います。

(以下東京新聞2008年10月2日より一部引用)
橋下知事に800万賠償命令 懲戒請求呼び掛け 弁護団へ『不法行為』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008100202000222.html
 山口県光市の母子殺害事件被告の元少年(27)=死刑判決で上告中=の弁護団だった四人が、テレビ番組で懲戒請求を呼び掛けられ業務に支障を来したとして、橋下徹大阪府知事に計千二百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二日、広島地裁(橋本良成裁判長)であった。
 橋本裁判長は「呼び掛けに合理性はなく不法行為に当たる」と指摘。発言が名誉棄損に当たると認定し、計八百万円の支払いを命じた。
(中略) 橋本裁判長は「弁護団の主張内容は荒唐無稽(むけい)で許されない」といった当時弁護士だった橋下知事のテレビ発言について、弁護士として法的根拠がないことを知っていながら、あえて請求を呼び掛けており「違法性の程度が大きい」とした。
 「死体をよみがえらす」といった元少年の主張について「(弁護団が)組み立てたとしか考えられない」とした発言についても「弁護団が主張を創作したと想起させる」と判断。名誉を棄損するとした。
 さらに「弁護士の品位を失う非行に当たるかは世間の評価に従うべきだ」とする知事の主張を、弁護士の使命を理解しないものだと批判した。
 その上で、多数の懲戒請求により「弁護団は答弁書作成など事務負担を要し、精神的被害を受けた」とした。
 判決によると、橋下知事は昨年五月、出演した民放番組で、差し戻し控訴審の弁護団を批判し「見ている人が一斉に懲戒請求をかけたら、弁護士会としても処分を出さないわけにはいかない」と発言。放送後、「意図的な裁判遅延だ」などと四人が所属する広島弁護士会に、大量の懲戒請求が出された。
 今年一月時点で二千五百一件に上ったが、弁護士会はいずれも「懲戒不相当」と処分しないことを決定。橋下知事は法廷に一度も姿を見せなかった。
(以上引用終わり)

このニュースも消費されていくのか、判決から日が経って、早くもこのニュースのかけらも残っていないような。
良心的メディアによる、きちんとした検証を期待します。

さてこの間、「弁護士」たちのもろさも垣間見えました。
「世論 」に迎合するがごとく、無責任に思い付きのような弁護団批判をする「弁護士が」、実は多くいました。もちろん中には立派な見識のもと根拠のある批判もありましたし、それについては弁護士業界全体として真摯に受け止めなければならないと思いますが。
とにかく、刑事弁護の意味を当の弁護士業界で相当数の弁護士が共有していないことも、よくわかりました。そう考えると、橋下氏、懲戒請求者やメディアだけを批判できません。

とにかくこの判決のあるなしにかかわらず、今日も明日も刑事裁判は続き、そこに弁護士は立ち続けます。その歴史を振り返り、その意味を日々謙虚に考え、検証しときには改めながら、それでも刑事弁護をやらなければならないと考える弁護士は、前に進むしかないのでしょうね。

この事件、提訴のときは懐疑的にみていましたが、今では、さまざまな問題をあぶりだした点でも、一定の意義があったのではないかと考えています。

※関連最高裁判例:最判平成19年4月24日
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34555&hanreiKbn=01

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2008年8月29日 (金)

秋山弁護士インタビュー記事紹介

毎日新聞(東京版)2008年8月27日朝刊に、当事務所多摩パブリックの秋山賢三弁護士のインタビューが記載されていますので、ご紹介しておきます。

毎日新聞2008年8月27日、「だいあろ~ぐ:東京彩人記」
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20080827ddlk13040256000c.html

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2008年8月28日 (木)

裁判員裁判の平均審理日数は4日?

裁判員裁判の審理期間について:来年度予算の概算要求に関する以下の報道によると、裁判所は、3割の事件は4日以上、1割は5日以上かかり、平均で4日間審理と想定したようですね。

(以下アサヒドットコム2008年8月25日より一部引用)
裁判員の日当・旅費、年間32億円 最高裁予算要求へ
http://www.asahi.com/national/update/0825/TKY200808250332.html
 来年5月に始まる裁判員制度で、参加した市民たちに裁判所が支払う1年間の費用について最高裁は日当が約20億円、旅費が約12億円になると試算し、約32億円を来年度予算として概算要求する方針を固めた。ただし、対象事件の増減などによっては、支払い実績は大きく変動する可能性もありそうだ。
 日当と旅費は、実際に裁判員を務めた市民だけでなく、候補者として呼び出されて裁判所に足を運びながら選ばれなかった市民にも支払われる。
(中略)1年間の事件数については、03~06年の4年間の動向から約3600件と想定した。07年は2643件しか対象事件がなかったが、多めに見積もった。
 また、7割の事件は3日以内に終わると見込んでいるものの、5日以上かかる事件も1割はあり、長くかかる事件ほど辞退を希望する人の割合も増えると想定している。このため、平均すると4日間の審理で、最大で100人を呼び出し、60人程度に来てもらう必要があると試算している。
(以上引用終わり)

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2008年7月14日 (月)

布川事件、再審開始(抗告審)

布川事件の第二次再審請求抗告審について、高裁への抗告が棄却されたそうです。以下、ご紹介します。

(以下東京新聞2008年7月14日より一部引用)
布川事件、高裁も再審開始認める 自白の信用性否定
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008071490122017.html
 茨城県利根町で1967年、男性が殺害され現金が奪われた「布川(ふかわ)事件」で、無期懲役刑が確定した元被告の桜井昌司さん(61)と杉山卓男さん(61)=いずれも仮釈放中=の第二次再審請求抗告審で、東京高裁は14日、再審開始を認める決定をした。検察側の最高裁への特別抗告は憲法違反や判例違反の場合に限られるため、再審開始決定が維持される可能性が高い。
 決定で門野博裁判長は、新証拠は再審開始の要件となる「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に当たると判断。「(無期懲役刑とした)確定判決の事実認定には合理的な疑いが生じ、同判決の判断を維持することはできない」と結論付けた。
(中略)弁護側は(1)検察側が自白の任意性を証明する証拠とした取り調べの様子を録音したテープは改ざんされた(2)自白では殺害後に便所から脱出したとあるが、実験では不可能だった-とする新証拠を提出。門野裁判長は「自白テープには中断などが認められ、自白の信用性に影響を及ぼす」とした。
 2005年の水戸地裁土浦支部は「下着で絞めた可能性が高く、自白は捜査官に誘導された可能性がある」として再審開始を決定。検察側が即時抗告していた。
(以上引用終わり)

布川事件HP:http://www.fureai.or.jp/~takuo/fukawajiken/

参考:刑事訴訟法
<再審請求>
第四百三十五条  再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。
(1~5、7号略)六  有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。
第四百四十八条  再審の請求が理由のあるときは、再審開始の決定をしなければならない。
第四百五十条  第四百四十六条、第四百四十七条第一項、第四百四十八条第一項又は前条第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

<即時抗告>
第四百二十一条  抗告は、即時抗告を除いては、何時でもこれをすることができる。但し、原決定を取り消しても実益がないようになつたときは、この限りでない。
第四百二十二条  即時抗告の提起期間は、三日とする。
第四百二十三条  抗告をするには、申立書を原裁判所に差し出さなければならない。
2  原裁判所は、抗告を理由があるものと認めるときは、決定を更正しなければならない。抗告の全部又は一部を理由がないと認めるときは、申立書を受け取つた日から三日以内に意見書を添えて、これを抗告裁判所に送付しなければならない。
第四百二十六条  抗告の手続がその規定に違反したとき、又は抗告が理由のないときは、決定で抗告を棄却しなければならない。
2  抗告が理由のあるときは、決定で原決定を取り消し、必要がある場合には、更に裁判をしなければならない。
第四百二十七条  抗告裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。

第四百二十八条  高等裁判所の決定に対しては、抗告をすることはできない。

<特別抗告>
第四百三十三条  この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令に対しては、第四百五条に規定する事由があることを理由とする場合に限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2  前項の抗告の提起期間は、五日とする。
第四百五条  高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一  憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二  最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三  最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。

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2008年7月 8日 (火)

「懲戒請求扇動訴訟」結審とのことですが…

全然報道がありませんが、橋下弁護士(現大阪府知事)に対して起こされていた「懲戒請求扇動訴訟」が、結審(=「証拠調べが終了し、あとは判決を待つのみ」という意味です)したようです。
判決言渡し期日は、平成20年10月2日(木)10:00~、とのこと。

ネタ発見元はブログ「大法原の隠棲処」。
http://d.hatena.ne.jp/windspiritroula/20080707/1215401526

参考:「光市事件懲戒請求扇動問題弁護団広報ページ」
http://wiki.livedoor.jp/keiben/d/FrontPage

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2008年7月 6日 (日)

きっとみんな、笑いたいのです。

先日、ある方から、久しぶりにメールが来ました。

数年前に刑事弁護(覚せい剤使用事件)を担当した人からです。
執行猶予期間が満了したことの報告と、この間のお礼のメールでした。

弁護士であってよかった、と思える瞬間です。

正直なところ刑事弁護・刑事裁判に対して暗い気持ちを感じることもあるこの頃ですが、このようなことがあると、折れそうな気持ちが、奮い立ちます。
がんばらないといけませんね。
メール、ありがとうございました。今回は、あなたが僕に力をくれました。

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2008年7月 5日 (土)

裁判員模擬裁判(続・完)

裁判員模擬裁判の続報(完)です。

ところで私は今回の模擬裁判についていろいろ批判もしていますが、これはもちろん、今回の参加者を非難する趣旨では決してありません。参加者の活動があって、はじめてこのような貴重な検証資料が得られたのです。そしてこれを先につなげるために、このような貴重な努力と経験を踏まえて、「刑事裁判」のありかたを、今こそ社会全体で広く議論をする必要があると考えています。
(いずれかのマスコミで、模擬裁判での裁判員経験者を集めたインタビューなどをしてくれませんか?これは正式な裁判員裁判ではなくあくまで模擬裁判で、また報道機関にも公開されているものですから、守秘の誓約書でも書かされていない限り、「守秘義務」には反しないでしょう。)

とにかく、皆様、お疲れ様でした。

さて、本題(内容の検討)です。

鑑定人尋問(2日目)は、最初に鑑定医による30分程度のプレゼンテーション(パワーポイント使用)があり、今回の事件が統合失調症の圧倒的な影響下にあることの説明がされました。
その後弁護側、検察側から各30分程度の質問がされました。
裁判員も一人一問づつくらい、質問をされていました。

そして被害者遺族の調書朗読と意見陳述がなされ、論告(求刑懲役10年:心神耗弱前提)、弁論(心神喪失無罪)を経て、2日目は終了。

評議(3日目)は、最終的に、裁判員が
 有罪(心神耗弱)5:無罪(心神喪失)1
裁判官が
 有罪(心神耗弱)1:無罪(心神喪失)2
 ※ただし無罪票の1名も、本音の心証では心神喪失との雰囲気(裁判員のうち1名が有罪に入れないと、有罪にはならない(裁判員法67条1項))ため、模擬裁判ゆえの特性として、裁判員の多勢の結論に合わせて有罪に変えた?)でした(うがった見方でしょうか・・・?)。
で、結局、6:3で有罪(=多数決により、懲役6年)、となりました。

ちなみに量刑意見分布は、
7年(2名)、6年(3名★★)、5年(1名)、4年6月(1名★)、3年(1名=無罪意見だった裁判員)、2年6月(1名)、
★が裁判官の意見、その他が裁判員の意見です。

※裁判員法
第六十七条(評決) 前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2  刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。

感想:

① 検察側は終始パワーポイントを有効に使い、ペーパーレスで冒頭陳述、論告を行っていました。また立ち位置、しぐさ、話すスピード、トーンなどいろいろ考えて実践していることが伺え(裁判員からも高く評価されていました)、その工夫には、見習うべき点が多々ありました。パワーポイントをうまく使えば、ペーパーレス弁論は可能と思えます(尋問は、さすがに完全ペーパーレスでは難しいかもしれません)。
また、ペーパーを持って尋問・弁論する姿については、傍聴していたある方から、「台本を読んでいるみたいで、聞いている方はそこにのめり込めない」との感想をもらいました。

② 論告で、「医療刑務所でも処遇は可能」との主張がありましたが、訴訟活動中、医療刑務所処遇についての証拠は法廷に出てきていませんでした。刑事訴訟規則211条の3の趣旨との関係では、どう考えるべきでしょうか。
 また、検察官による積極的立証がされていない「専門的経験則」に基づいた論告部分もありましたが(「生きていてほしいという願望が、被告人の追想妄想につながった」という主張)、これはやはり同規則との関係で、検討を要するように思います。

※刑事訴訟規則
(弁論の方法)
第二百十一条の三 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調べの後に意見を陳述するに当たり、争いのある事実については、その意見と証拠との関係を具体的に明示して行わなければならない。

③ 弁論で弁護側が平成20年4月5日最高裁判決(http://lawyer-m.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/h20425_346e.html)を引用していましたが、これはどの程度裁判員に理解されたのか、このような裁判例の説明の仕方・弁論への折り込み方(論文調になることで聞き手に拒否感をもたれない工夫)が難しいと感じました。

④ 弁論で弁護側が論告の内容を批判対象として引用したところ、検察官から、引用が不正確、との異議が出ました。論告について詳細なペーパーが配られないと、このように、論告への弁護側反論の準備が十分になしえないとに感じます。

⑤ 評議冒頭では、裁判官がかなり丁寧に「検察官の立証責任」「合理的疑い」の説明をされていたように感じました(「黒か白か」、「黒か黒じゃないか」という有名なたとえを使っていました)。
(・・・この点についてはあとの⑩もご参照ください)
 また、評議の進め方では、裁判官の意見の押しつけにならないよう、相当に気を遣っているようには感じました。

⑥ 無罪意見だった人が、そのわずか後に量刑評議で「3年」とか「6年」と意見を言う姿には、(この模擬裁判ではその方たちを責められませんが、)やはり強い違和感がありました。本物の裁判では、ここは、もめる要因にならないでしょうか?

⑦ 評議の後の意見交換で、「最初から有罪に決めていた」という裁判員が複数おられました。その理由について、たとえばAさんの述べたものは「被害者には何の落ち度もない」「精神障害は理由にならない」「遺族の感情」というものでした。Bさんも「自分の息子に(被告人を)重ねてみた」「(その場合、)罪は償わなければならないと思う」と話をされていました。
 このエピソードは、裁判員制度の根本的問題を示しているように思います。

⑧ 有罪とされた方に裁判官が「合理的な疑い」との関連でどのように自分で説明をつけたかを質問したときに、多くの方が「証拠から有罪と思った」という表現で答えていました。
 「証拠から」というのは、発言の文脈からは「書証」のことを指しており、公判供述(被告人)・公判証言(鑑定人)は含まないものと思われます。そして今回の書証は、自白調書は不採用になり、その他は、簡易鑑定書(=心神耗弱)の他は、争いのない時系列などのみです。
 すなわち、これらのみから「心神耗弱」と認定することはさすがに困難で、結局は鑑定人尋問と簡易鑑定書をセットで検察官立証の成否を判断して、「心神喪失の可能性もある」という合理的な疑いを払拭できたか、という判断にならなければおかしいはずです。
 ・・・⑦と重なる感想ですが、率直に言って、今回の結論は、「証拠」ではなく、「印象」(事件の「結果」の重大性)から有罪と決まってしまったと思いました。
  刑事裁判の「事実認定者」としてのその職責の重大性を考えれば、漠然とした「証拠から」という便利な言葉を用いるのではなく、もっと検討に時間をかけて、「自分が言う『証拠』とは、数ある証拠のうちの具体的にどれをさしていて、そこからどんな事実が認定できるのか」ということを、きちんと検討しないといけないのではないか、と感じます。
 結局、これも裁判員制度の根本的問題を示すものでしょう。

⑨ 鑑定人尋問で重要な争点として「追想妄想」が問題となっていましたが、おそらく裁判員のうち多くの方は、これを十分には理解されていなかった(そして、自分の先に出している結論に合わせて理解をしてしまっていた)と感じました。そして、この理解不十分は、鑑定医の説明不十分によるものではないと思います。

⑩ ⑦~⑨を見ていると、やはり「検察官の立証責任」「合理的疑い」については、裁判員の十分な理解・納得が得られたとは思えませんでした。そして、これを「市民感覚」という言葉で正当化することはできない(すべきでない)と思います。

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2008年7月 2日 (水)

裁判員模擬裁判(感想など)

八王子の裁判所では、今日から3日間、法曹三者による裁判員模擬裁判です。
被害者死亡事件で、争点は責任能力。
被告人は統合失調症で、「被害者を殺していない」と今でも思いこんでいる、という事案です。

今日は第1日目で、冒頭手続きから検察官による証拠調べ請求、被告人質問、検察官による捜査段階被告人調書の刑事訴訟法322条に基づく証拠調べ請求(結論は却下)までがなされました。参加された皆様、お疲れ様です。明日は、鑑定人尋問です。

実際に弁護を担当するという気持ちで傍聴していて、気になった点は、以下の通りです。

一日見ているだけでこれだけ気になるところがあるのですから(ただし、すべてこれまで予測されていた問題ですが)、模擬裁判が終わった後に、法曹三者、市民(裁判員)及びそれ以外の外部専門家(学者等)も交えた、きちんとした検証が必要だと思います。

① 被告人は「被害者は死んでいない」と明確に言っているのに、弁護人意見陳述では「被害者死亡」および「殺意」を争いませんでした。おそらく、被害者が亡くなっているのは客観的には明らかですし、また殺意を争っても「勝ち目」はないという判断も働いたことから、裁判員から見た印象と、「争点整理」を意識したのでしょう。ただ、客観的に明白な事実が何かは別にして、このような法廷陳述をした場合、弁護士倫理(弁護士職務規定22条1項)に抵触する可能性がありますし(おそらく、同46条にいう「最善の弁護活動」との関係が問題となるでしょう)、実際的な問題として、被告人と弁護人の関係に決定的な亀裂が入り、弁護活動の維持が不可能になる(→その場合(とくに国選の場合)、代わりにつく弁護士がいるのか?)可能性があります。

※弁護士職務規程
第二十二条 弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。
(刑事弁護の心構え)
第四十六条 弁護士は、被疑者及び被告人の防御権が保障されていることにかんがみ、その権利及び利益を擁護するため、最善の弁護活動に努める。

② 検察官が証拠調べ請求時に、請求証拠と立証事実の対照表(A41枚)を配布していましたが、ここの「証拠」の欄に、「被害者遺族意見陳述」が入っていました。これは刑事訴訟法292条の2第9項に明らかに反しています。弁護人も即座に異議を言うべきと思いましたし、裁判所も異議を待たずに指摘すべきでした。

※第二百九十二条の二  裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
9  第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。

③ また検察官が証拠調べ請求時に、事実経過に関する捜査報告書の内容をまとめて、捜査報告書とは別の一覧性のある表にして展示して見せていたのですが、これは明らかに別の証拠を作り出しているものです。これをするのであれば、合意書面(刑事訴訟法327条)にするか、事前に開示して弁護人の同意を得るべきでしょう。

※第三百二十七条  裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人が合意の上、文書の内容又は公判期日に出頭すれば供述することが予想されるその供述の内容を書面に記載して提出したときは、その文書又は供述すべき者を取り調べないでも、その書面を証拠とすることができる。この場合においても、その書面の証明力を争うことを妨げない。

④ 検察官が、被害者の死因に関する報告書(甲号証)添付の写真、それも被害者のを被告人に示して(それをパワーポイント経由でスクリーンに示して)、「あなたが刺したのはこの人ではないのですか」と尋問していました。今回の記録では模擬裁判記録なのでイラストでしたが、本番の裁判ではこれは本物の遺体写真となるのでしょう(イラストで、という話もありますが、今回のような「同一性確認」の尋問では、イラストというわけにもいかないでしょう)。その肯否および展示の方法は、議論のあるところです。

⑤ 検察官の刑事訴訟法322条に基づく被告人調書の証拠調べ請求の時、検察官は請求の理由及びそれが取り調べられるべき理由について、パワーポイントを用い、「裁判員のみなさん」へ、と説明していました。これは、裁判員法が証拠の採否(証拠能力の有無)について裁判「官」の専権としていること(裁判員法6条2項①)との関連で、不相当なものとされる余地があります。実際に今回の説明は、上記説明に名を借りて、実質的に検察官の「主張」(しかも公判提出証拠の裏付けのないものも含めて)にまで踏み込んでいました。裁判所は検察官の陳述を制限(刑事訴訟法295条1項)すべきだったと思いますし、弁護人も異議を言うべきでした。

※第三百二十二条  被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。

※裁判員法
(裁判官及び裁判員の権限)
第六条  第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一  事実の認定
二  法令の適用
三  刑の量定
2  前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一  法令の解釈に係る判断
二  訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条の決定を除く。)
三  その他裁判員の関与する判断以外の判断
3  裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。

⑥ この⑤の時にとくに感じたのですが、裁判員法廷では、いったん法廷が想定外の方向に(とくに、それが違法の恐れのある進行に)どどどっと流れた時に、裁判長がかなり自覚的に訴訟指揮を行わない限り、その流れをとどめるのが難しいように感じます。具体的にいえば、刑事訴訟法上明らかに異議に理由があるような場合でも、裁判員には刑事訴訟法の知識がないことなどを考慮すると、雰囲気的に、異議が言いづらくなるでしょう(言ってもちんぷんかんぷんだと、かえって心証を損なうのではないかと考えてしまう)。これを解消するには、ア 裁判官の専権事項については「裁判員向け」の説明を一切カットするか、イ 裁判員にも訴訟法上の異議につき法律上の権限として判断させることとし、その判断の理由について知り、考えるために十分な審理時間を与えること、のいずれかでしょうが、制度の精神を考えれば、方向としては(可能かどうかは別にして)後者=イのほうが望ましいように思います。

⑦ また、上記①~⑥のいずれも、検察官・弁護人双方の法廷活動が裁判員への「アピール合戦」になっている結果なのではないかな、と思います。抑制の利いた「プレゼンテーション」を超えてしまう(しかも、法律上許される範囲を超えた手段によるアピールがなされてしまう)危険性を常にはらんでいるように感じました。

⑧ ところで、今日の休憩時間中の評議は完全非公開でした(これまでの模擬裁判では、すべて傍聴人向けに中継がされていました)。冒頭手続きから初日の評議は、初めて刑事裁判に触れる裁判員がどのような点に反応して心証を作っていくのかを知る、大切な機会です。これを中継しない(裁判所以外には知らせない)というのは、いかがなものかと思います(この模擬裁判が検察庁、弁護士会に参加を求めて成立していることを考えても、好ましくないように思います)。模擬裁判実施のそもそもの趣旨も含めてお考えいただき、再考していただければと思うのですが・・・

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2008年6月24日 (火)

刑事法廷:被告人の着席位置について

刑事裁判で被告人が座る位置について、以下の報道がされています。

つまり、法廷での着席位置が、

1 これまでは
 
    裁判官
      ▽

検察官    弁護人
 △       △

      ▲
    被告人
 ーーーーーーー
   (傍聴席)

でしたが、

2 これからは

    裁判官
      ▽

検察官    弁護人
 △      △
          被告人
         ▲
 ーーーーーーー
   (傍聴席)

となる、ということです。

これは細かいようでいて、実はとても意味のあることだと思います。

(以下時事通信2008年6月21日より一部引用)
弁護士の隣に被告席=裁判員制度で実現へ-偏見排除へ見直し容認・法務省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080621-00000050-jij-soci
 来年5月から始まる裁判員制度で、法務省は21日までに、法廷で裁判長の正面などに座らされている拘置中の被告について、弁護士の隣に座ることを認める方針を決めた。制服姿の刑務官に挟まれたこれまでの座り位置では、被告が犯人だとの印象を裁判員に与えかねないとの判断。(中略)現在の刑事裁判では、被告は裁判長の正面や弁護士席の前に置かれたベンチに座る。保釈中の被告については、弁護士の隣に座ることを裁判所が許可した例があるが、拘置中の被告は警備上の理由から拘置所側が認めてこなかった。
(以下略、以上引用終わり)

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2008年5月 9日 (金)

最判H20・4・25(刑事精神鑑定について)

刑事裁判の精神鑑定につき、4月25日に、以下の最高裁判決が出ています。
とくに鑑定人の判断の尊重、という点につき、今後の事例への影響もあると思われるので、紹介しておきます。

(裁判所HPより)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36327&hanreiKbn=01

(判決趣旨まとめ)
1 責任能力判断の前提となる精神障害の有無及び程度等について,専門家たる精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合には,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,裁判所は,その意見を十分に尊重して認定すべきである。
2 統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた傷害致死の行為について,被告人が正常な判断能力を備えていたとうかがわせる多くの事情があるからといって,そのことのみによって心神喪失ではなく心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例

(判決抜粋引用:適宜読みやすくするために段落替えなどを行っています。)
1 坂口鑑定(=一審鑑定※松原注)及び深津鑑定(=二審鑑定※松原注)の評価について
(1)  被告人の精神状態が刑法39条にいう心神喪失又は心神耗弱に該当するかどうかは法律判断であって専ら裁判所にゆだねられるべき問題であることはもとより,その前提となる生物学的,心理学的要素についても,上記法律判断との関係で究極的には裁判所の評価にゆだねられるべき問題である(最高裁昭和58年(あ)第753号同年9月13日第三小法廷決定・裁判集刑事232号95頁)。
   しかしながら,生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば,専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には,鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり,鑑定の前提条件に問題があったりするなど,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである

(2)  この観点から坂口鑑定及び深津鑑定を見ると,両医師とも,いずれもその学識,経歴,業績に照らし,精神鑑定の鑑定人として十分な資質を備えていることはもとより,両鑑定において採用されている諸検査を含む診察方法や前提資料の検討も相当なもので,結論を導く過程にも,重大な破たん,遺脱,欠落は見当たらない。
   また,両鑑定が依拠する精神医学的知見も,格別特異なものとは解されない。そして両者は,本件行為が統合失調症の幻覚妄想状態に支配され,あるいは,それに駆動されたものであり,他方で正常な社会生活を営み得る能力を備えていたとしても,それは「二重見当識」等として説明が可能な現象であって,本件行為につき,被告人が事物の理非善悪を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力を備えていたことを意味しないという理解において一致している。
   このような両鑑定は,いずれも基本的に高い信用性を備えているというべきである。

(3)  しかるに,原判決は,両鑑定が,被告人に正常な精神作用の部分があることについて「二重見当識」と説明するだけでこれを十分検討していないとして,その信用性を否定している。しかし,両鑑定は,本件行為が,被告人の正常な精神作用の領域においてではなく,専ら病的な部分において生じ,導かれたものであることから,正常な精神作用が存在していることをとらえて,病的体験に導かれた現実の行為についても弁識能力・制御能力があったと評価することは相当ではないとしているにとどまり,正常な部分の存在をおよそ考慮の対象としていないわけではないし,「二重見当識」により説明されている事柄は,精神医学的に相応の説得力を備えていると評し得るものである。また,原判決は,深津鑑定については,前提事実に誤りがあるとも指摘するが,当たらないものである。
   そうすると,以上のような理由から前記(2)のように基本的に信用するに足りる両鑑定を採用できないものとした原判決の証拠評価は,相当なものとはいえない。

2 諸事情による総合判断について
(1)  被告人が犯行当時統合失調症にり患していたからといって,そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあったとされるものではなく,その責任能力の有無・程度は,被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである(最高裁昭和58年(あ)第1761号同59年7月3日第三小法廷決定・刑集38巻8号2783頁)。したがって,これらの諸事情から被告人の本件行為当時の責任能力の有無・程度が認定できるのであれば,原判決の上記証拠評価の誤りは,判決に影響しないということができる。そこで,更にこの観点から検討する。

(2)  信用に値する坂口鑑定及び深津鑑定に関係証拠を総合すれば,本件行為は,かねて統合失調症にり患していた被告人が,平成15年6月24日ころから急性に増悪した同症による幻聴,幻視,作為体験のかなり強い影響下で,少なくともこれに動機づけられて敢行されたものであり,しかも,本件行為時の被告人の状況認識も,被害者がへらへら笑っていたとか,こん倒した被害者についてふざけてたぬき寝入りをしているのだと思ったなどという正常とはいえない,統合失調症に特有の病的色彩を帯びていたものであることに照らすと,本件行為当時,被告人は,病的異常体験のただ中にあったものと認めるのが相当である。

(3)  他方において,原判決が説示するように,本件行為の動機の形成過程は,その契機が幻聴等である点を除けば,了解が可能であると解する余地がある。また,被告人が,本件行為及びその前後の状況について,詳細に記憶しており,その当時の意識はほぼ清明であること,本件行為が犯罪であることも認識し,後に自首していること,その他,被告人がそれなりの社会生活を送り,就労意欲もあったことなど,一般には正常な判断能力を備えていたことをうかがわせる事情も多い。
   しかしながら,被告人は,同種の幻聴等が頻繁に現れる中で,しかも訂正が不可能又は極めて困難な妄想に導かれて動機を形成したと見られるのであるから,原判決のように,動機形成等が了解可能であると評価するのは相当ではないというべきである。
   また,このような幻覚妄想の影響下で,被告人は,本件行為時,前提事実の認識能力にも問題があったことがうかがわれるのであり,被告人が,本件行為が犯罪であることも認識していたり,記憶を保っていたりしても,これをもって,事理の弁識をなし得る能力を,実質を備えたものとして有していたと直ちに評価できるかは疑問である。
   その他,原判決が摘示する被告人の本件前後の生活状況等も,被告人の統合失調症が慢性化した重篤な状態にあるとはいえないと評価する余地をうかがわせるとしても,被告人が,上記(2)のような幻覚妄想状態の下で本件行為に至ったことを踏まえると,過大に評価することはできず,少なくとも「二重見当識」によるとの説明を否定し得るようなものではない。

(4)  そうすると,統合失調症の幻覚妄想の強い影響下で行われた本件行為について,原判決の説示する事情があるからといって,そのことのみによって,その行為当時,被告人が事物の理非善悪を弁識する能力又はこの弁識に従って行動する能力を全く欠いていたのではなく,心神耗弱にとどまっていたと認めることは困難であるといわざるを得ない。

3 結論
 以上のとおり,本件記録に徴すると,被告人が心神耗弱の状態にあったとして限定責任能力の限度で傷害致死罪の成立を認めた原判決は,被告人の責任能力に関する証拠の評価を誤った違法があり,ひいては事実を誤認したものといわざるを得ない。これが判決に影響することは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 ところで,坂口鑑定及び深津鑑定は,統合失調症にり患した者の病的体験の影響下にある認識,判断ないし行動は,一方で認められる正常な精神作用により補完ないし制御することは不可能であるという理解を前提とするものと解されるが,これと異なる見解の有無,評価等,この問題に関する精神医学的知見の現状は,記録上必ずしも明らかではない。
 また,被告人は,本件以前にも,被害者を殴りに行こうとして,交際相手に止められたり,他人に見られていると思って思いとどまったりしているほか,本件行為時にも通行人が来たため更なる攻撃を中止するなどしており,本件行為自体又はこれと密接不可分な場面において,相応の判断能力を有していたと見る余地のある事情が存するところ,これをも「二重見当識」として説明すべきものなのか,別の観点から評価検討すべき事柄なのかについて,必ずしも明らかにはされていない。
 さらに,被告人は本件行為の翌日に自首するなど本件行為後程ない時点では十分正常な判断能力を備えていたとも見られるが,このことと行為時に強い幻覚妄想状態にあったこととの関係も,坂口鑑定及び深津鑑定において十分に説明されているとは評し難い。本件は,被告人が正常な判断能力を備えていたように見える事情も相当程度存する事案であることにかんがみると,本件行為当時の被告人の責任能力を的確に判断するためには,これらの点について,精神医学的知見も踏まえて更に検討して明らかにすることが相当であるというべきであり,当裁判所において直ちに判決するのに適しているとは認められない。
 よって,刑訴法411条1号,3号,413条本文により原判決を破棄し,更に審理を尽くさせるため本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(以上引用終わり)

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2008年4月18日 (金)

BPO「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」

光市事件報道について、
放送倫理検証委員会(BPO)の下記意見書(2008.4.15)が公表されています。

(BPOホームページ)
「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/kettei/f-index.html

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2008年4月14日 (月)

「ストップ冤罪 三多摩の夕べ」

明日、西国分寺で、「痴漢えん罪」について以下のイベントが開かれます。
題材となる二事件とも地元の事件で、かつ当事務所の秋山弁護士がトークセッションに参加するとのことです。
お時間が許せば、ご参加ください。

<ストップ冤罪 三多摩の夕べ>
日時    4月15日(火)午後6時開場、6時30分開会
会場    いずみホール(JR中央線・武蔵野線 西国分寺駅1分)
コンサート きたがわてつ「人権をうたう」
トーク   秋山賢三弁護士(元裁判官)
      川畑幸夫さん(志布志「踏み字」事件)
      痴漢デッチ上げ・沖田国賠 沖田さん
      町田痴漢冤罪事件 牧野さん
協力券   1000円
連絡先   「ストップ冤罪 三多摩の夕べ」実行委員会
      TEL/FAX 042-524-1532

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2008年4月 9日 (水)

裁判員法は5月21日施行。

裁判員法の施行期日が決まりました。
5月21日以降に起訴された対象事件(下記参照)について、裁判員裁判が行われます。
(同日から、被疑者国選弁護制度の拡大実施(=刑事訴訟法改正)も施行されるようです)

それにしても、裁判員法は5月27日までに施行しなければならなかったのですが、期限1週間前ですから、ぎりぎりですね。

弁護士会側の準備としては、5月21日の23日前に逮捕された事件からは裁判員裁判の実施可能性があるということになるので、4月29日の当番弁護士以降はそのつもりで対応しないといけないということになります。

いよいよ、といった感じです。

(以下東京新聞2008年4月8日より一部引用)
裁判員制度 来年5月21日施行 初公判は7―8月
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008040802002099.html
 法務省は八日、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度をスタートさせる裁判員法の施行日を二〇〇九年五月二十一日とする政令案を与党の専門部会に示し、了承された。政令案は近く閣議決定され、公布される。 
 五月二十一日施行になると、同日以降に起訴された殺人などの重大事件が裁判員裁判の対象となる。審理の迅速化のため導入された公判前整理手続きを経て、第一号の裁判は「早ければ来年七月下旬か八月上旬」(同省担当者)とみられる。
 年内には、選挙人名簿から裁判員候補者を抽出して本人に通知する手続きが始まる。
(以下略、以上引用終わり)

※裁判員法適用対象事件について(条文)

裁判員法第2条
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

裁判所法第26条
地方裁判所は、第2項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
2 左の事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
①合議体で審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
②死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪(刑法第236条、第238条又は第239条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)第1条の2第1項若しくは第2項または第1条の3の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和5年法律第9号)第2条または第3条の罪を除く。)に係る事件

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2008年3月28日 (金)

裁判員裁判:法廷の録画、被告人のネクタイ着用・着席位置など

裁判員裁判について、以下の報道がされています。
法廷の録画と、被告人に対する予断(偏見)排除のための方策です。

細かいことのようですが、いずれも、裁判員裁判を実施するならば、必須の対応でしょう。

法廷録画に関しては、弁護側にもその画像を提供すべきと思います(連日的開廷の場合に記録をとるのが難しいことについては、弁護側も状況は同じなので)。

なお高野隆弁護士のブログに、このネクタイ着用についての記事がアップされていたので(3月21日)、ブログの紹介とあわせて、以下にURLを貼り付けます。

「刑事裁判を考える:高野隆@ブログ」
http://blog.livedoor.jp/plltakano/archives/65019514.html

(以下NIKKEINET2008年3月21日より引用)
170法廷にカメラ設置・裁判員制度、証言など録画
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080321AT1G1203T20032008.html
 裁判員制度導入を前に、最高裁は法廷での被告の供述や証人の証言を録画するため、全国の地裁約170法廷にカメラを設置する。裁判員と裁判官で有罪無罪や刑の重さを決める評議の際、ポイントになる供述や証言をDVDで再生し確認できるようにする。裁判員がメモを取る負担を軽くし、被告や証人の表情から「心証」を取ることに集中してもらう狙いだ。
 最高裁によると、カメラ設置は裁判員裁判を実施する50地裁と10地裁支部の計約170法廷。2008年度中に被告や証人が立つ証言台を撮影できる位置に目立たないようにカメラを1台設置。裁判官や裁判員、検察、弁護人の質問に答える被告や証人の様子をDVDに録画する。
(以上引用終わり)

(以下読売オンライン2008年3月19日より引用)
裁判員裁判、予断排除のため被告のネクタイを容認
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080319-OYT1T00897.htm
 2009年に始まる裁判員制度で、法務省は、拘置中の被告に法廷でのネクタイ着用などを条件付きで認める方針を固めた。
 保釈されていない被告は、自殺や逃走を防止するため、ノーネクタイ、サンダル履きで出廷しているが、こうした服装が裁判員に「犯罪者のように見える」との予断を与えかねないと指摘されていた。同省は、被告が公判中に弁護士の隣に座ることも認める方針だ。
 拘置中の被告が出廷する場合、服装は原則自由だが、ネクタイは「自殺に使われる恐れがある」、靴は「逃走が容易になる」との理由で拘置所が認めていない。しかし、日本弁護士連合会は、拘置所を所管する法務省に対し、「裁判員が『やはり犯罪者なのか』という予断を抱けば、無罪推定の原則が揺らぐ」として、ネクタイ着用などを認めるよう要求していた。
 このため同省は、裁判員が参加する裁判に限定して服装の規制を緩める方針を固め、日弁連と最高裁に伝えた。ネクタイは「結び目がほどけない取り付け式のもの」、靴は「革靴に見えるが実際にはかかとの部分がない形状のもの」に限って容認。資力のない被告もいるため、拘置所が一定数を購入し、希望者に貸し出す案が有力だという。
 一方、日弁連は被告の座る位置についても、「刑務官に挟まれて弁護士の前のベンチに座るため、コミュニケーションが取りづらい」とし、弁護士の隣に座れるよう要請。同省は、刑務官が後ろに控えていれば、裁判員裁判では隣に座ることを認めることにした。
(以上引用終わり)

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2008年3月16日 (日)

取調べの「可視化」について(範囲拡大の報道とその評価)

取り調べの録画・録音(取り調べの「可視化」)について、以下の報道がありました。

一見評価されるべきことのようにも思えますが、「一部」の録画・録音では、ただのガス抜きで、まったく意味がないと思います。実際の取り調べの流れを有機的・動的にみれば、また冤罪被害は罪名の重さにかかわらず存在する(たとえば痴漢事件は、罪名としては条例違反など軽微で、裁判員裁判の適用事件にはなりません。)ことを考えれば、全事件、全過程の録画・録音が必須と思います。

なお全過程の録画・録音は「真相解明を害する」との意見もありますが、これは現に諸外国ではなされていることであり、その現実の前では、まったく説得力がありません。またこれで害される「真相」とは、単に捜査機関が考える「真相」、つまり単なる「予断」を示すものにすぎないのではないでしょうか。

(以下毎日jp2008年3月14日より一部引用)
裁判員制度:取り調べ、重大事件は録音・録画 検察、対象拡大へ
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/03/14/20080314dde001040005000c.html
 来春始まる裁判員制度に向け、法務・検察当局は、一部の事件で限定的に試行してきた取り調べの録音・録画の対象となる事件を大幅に拡大する方針を固めた。殺人など裁判員制度の対象となる重大事件について、原則的に行う方向で検討する。
 警察や検察による取り調べの在り方を検討してきた公明党法務部会は14日、「録音・録画による取り調べ状況の更なる可視化を含め、容疑者らの供述のみに依存しない捜査を目指すべきだ」とする提言案をまとめたが、法務・検察当局はこうした提言も参考にして、録音・録画の範囲を詰めるとみられる。
 現在、検察による録音・録画は、検察官が任意に選んだ事件で、主に自白をした動機や取り調べの様子を容疑者に確認する場面などに限って行われている。公明党案は「当面求める施策」として、裁判員対象事件のうち、▽当初否認していた場合▽責任能力が問題になる場合▽少年事件▽重大殺傷事件--などのケースは原則として録音・録画するよう提案している。
 一方、同党案は、「今後検討すべき施策」として、取り調べの全過程の録音・録画(可視化)も盛り込んだ。
(以下略、以上引用終わり)

(以下東京新聞2008年3月14日より一部引用)
取り調べの一部録音・録画 警察庁が本格検討へ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008031402095367.html
 捜査の在り方を検討してきた公明党のプロジェクトチーム(大口善徳座長)は十四日、二〇〇八年度中に警察の捜査で取り調べの一部録音・録画(可視化)を試行するよう求める提言をまとめた。警察庁は提言を受け、録音・録画実施の本格検討に着手する。
 現在、検察庁が一部の事件で録音・録画を部分的に実施しているが、警察庁は慎重な姿勢を示してきた。
 プロジェクトチームは検察庁にも録音・録画を拡大するよう求めており、近く党として、鳩山邦夫法相や警察庁の吉村博人長官に申し入れる。
 大口座長は記者会見で「警察庁も前向きに検討しており、実施されると考えている」と述べた。
 午後には、自民党のプロジェクトチームも会合を開催。同様の議論を行った。
 公明党の提言では、警察に対し、裁判員裁判の対象となる事件について検察庁の実施状況を参考にした上で「録音・録画を二〇〇八年度に可及的速やかに試行し、二年以内に検証して、本格実施を検討する」などとしている。
 また、検察に対しては裁判員裁判の対象となる事件のうち(1)容疑者が否認している(2)容疑者が少年(3)責任能力に問題がある(4)死刑相当の重大事件-などについては、〇八年度当初から原則として録音・録画を行うよう求めた。
 記録媒体は原本に被疑者の署名を求めて封印するとしている。
 当初の録音・録画は取り調べの一部で行うものだが、検察に対しては、取り調べの全過程に拡大することも今後の検討課題とした。
(以上引用終わり)

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2008年3月13日 (木)

痴漢えん罪・虚偽告訴

痴漢えん罪で、以下のような事件がありました。

(以下読売オンライン2008年3月11日から一部引用)
交際の女と痴漢被害でっち上げ…虚偽告訴容疑で大学生逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080311-OYT1T00670.htm
 地下鉄の車内でうその痴漢被害を申告したとして、大阪府警阿倍野署は11日、氏名略(24)を虚偽告訴の疑いで逮捕した。
(中略)調べによると、(氏名略)容疑者は当時交際していた奈良市の無職女性(31)と共謀。2月1日午後8時半ごろ、大阪市営地下鉄御堂筋線の動物園前―天王寺駅間の電車内で、堺市の男性会社員(58)が女性の尻を触ったとのうその申告をした疑い。
 (氏名略)容疑者は女性を知らないように装っていた。
 男性は(氏名略)容疑者らに天王寺駅の駅長室で同署員に引き渡され、府迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕されたが、否認。同署は3人の供述や証言が食い違うなどしたため、約22時間後、男性を釈放した。
 同7日夜、女性が同署に「金に困っていた(氏名略)容疑者から持ちかけられ、男性から示談金をもらうために2人で被害をでっち上げた。自分から男性に近づいた」と自首した。(以下略、以上引用終わり)

この件は女性が自首してきたからこれで終わりましたが、もっと周到な用意をしていれば、起訴されていたかもしれない事案です。起訴されれば、現在の刑事裁判の実情からして、有罪となる可能性は高いです。
また、今回の件でも、「逮捕された」という事実は消えません。仕方ない、ですませてよい問題ではありません。

当事務所の秋山賢三弁護士がこの件で昨日NHKの取材に応じていましたが(夜7時のニュースで放映)、そこでも述べていたように、今の厳しい運用、すなわち被害申告のみでどんどん逮捕していくような運用では、この種の事件はこれからも続くでしょう。
被害申告を受けても、当初段階できちんと「双方の」供述をとり、その信用性を「予断なく」慎重に吟味するという、あたりまえのことの再確認が必要です。また、身柄拘束の必要性がない場合までの安易な逮捕はあってはならないことを、再度、肝に銘じるべきです。そして不幸にして起訴されてしまったケースでは、裁判所が、「疑わしきは罰せず」という、えん罪防止のための刑事裁判の大原則を忠実に守ることが必要です。

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2008年2月22日 (金)

昭島市、「国際法務総合センター」構想を受け入れ?

現在八王子にある少年鑑別所、八王子医療刑務所、府中の関東医療少年院などを東中神駅近く、昭和記念公園横に移設するという法務省の計画(「国際法務総合センター」構想)について、地元で反対運動が起きていましたが、先日以下の「受け入れ」報道が出ました。

法務省によると、ここには(1)法務省関係の国際協力機関(2)職員研修所(3)嬌正医療センター(4)少年非行対策センター(5)併設する職員宿舎を作る計画だそうです。

各施設の概要は、法務省の説明によると、

「国際協力機関」は、国と国連との協定に基づき設立された刑事司法に関する国際研修等を行う「国連アジア極東犯罪防止研修所」及びアジア地域を中心に主として法整備支援を行う「法務総合研究所国際協力部」で、いずれも国の司法分野における国際協力の中心的役割を担う機関、

「職員研修所」は、刑事施設の刑務官や少年施設の法務教官等の研修を行う「嬌正研修所」と同研修所「東京支所」及び公安調査庁の職員の研修を行う「公安調査庁研修所」を集約するもので、教室等の施設のほかに受講職員用の寮も併設、

「嬌正医療センター」は、身体または精神疾患を持つ成人及び少年被収容者のための総合医療施設で、八王子医療刑務所、関東医療少年院及び神奈川医療少年院を統合整備するもの。なお将来的には、この嬌正医療センターを拡張して、急増している成人女子被収容者を対象とした医療的ケア等のための施設整備を検討。

「少年非行対策センター」は、東京家庭裁判所八王子支部が立川市に移転するのに伴い, これに対応する八王子少年鑑別所を移転整備するもの。併せて,青少年の非行やいじめ等の相談窓口を設置する。

だそうです。

※昭島市HP「 お知らせ > 立川基地跡地昭島地区」
http://www.city.akishima.tokyo.jp/1030Oshirase/03200oshirase.htm

以前の別の報道によると、ここへの移転を予定しているのは、アジア極東犯罪防止研修所(府中市晴見町、いわゆる「アジ研」)、矯正研修所(府中市晴見町)、矯正研修所東京支所(中野区新井)、公安調査庁研修所(渋谷区恵比寿南)、八王子医療刑務所(八王子市子安町)、関東医療少年院(府中市新町)、神奈川医療少年院(相模原市小山)、八王子少年鑑別所・東京婦人補導院(八王子市中野町)、とのこと。
また広さは約12万2000平米(=上記記事の約22ヘクタール)、総工費約390億円で、2008年度の特特会計予算で調査費を確保し土壌汚染の状況などを調べる現地調査を実施した上で、2009年度以降に設計や工事を進め、2013年度までには完成させたい考えだとのことです。

(以下アサヒドットコム2008年2月20日より一部引用)
昭島市長、計画受け入れへ 21日方針表明
http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000802200001
 法務省が昭島市の米軍立川基地跡地に計画している「国際法務総合センター」(仮称)について、北川穣一・同市長は計画を受け入れる方針を固め、21日の市議会特別委員会に報告する。しかし、医療刑務所などを統合する同センターの計画は、同省が昨年9月に発表して以降、地元住民や自治会が約2万6千人分の反対署名を集めており、さらなる反発は必至だ。
 同センターは基地跡地のうち、昭島市にかかる約70ヘクタールの3分の1、約22ヘクタールの使用を想定している。21日の市議会特別委で示される市作成のゾーニング案によると、跡地北側にセンターを配置し、南側の東半分に国営昭和記念公園を拡張、残りを国家公務員宿舎や民間利用に割り当てる。
 この時期の受け入れ表明は、跡地南側のJR青梅線・東中神駅前の整備など市の街づくりに、国の支援が得られる見通しがついたためという。
 法務省大臣官房の青沼隆之施設課長は「今回の計画がインフラ整備などの動機付けになる。(センターは)迷惑施設の側面もあり、国もかなり配慮するはずだ」と話す。
 昭島市は、基地跡地について、都や立川市とともに地元利用計画案を6月までに提出するよう、財務省から求められている。昭島市の受け入れ表明を受け、法務総合センターを含めた利用計画案を作ることになる。法務省の計画発表後、同市が土地取得して独自利用した場合の試算をしたところ、取得費だけで620億円以上。「年間公共事業予算が7億円の昭島市単独の事業は不可能」(北川市長)と結論づけた。
 地元住民が反対する一方で、昭島市商工会や地元商店会は地域の活性化につながると、法務省計画に賛成の意見書を提出している。
 地元住民が反対する一方で、昭島市商工会や地元商店会は地域の活性化につながると、法務省計画に賛成の意見書を提出している。
 北川市長は「地域の皆さんの反対も重々承知した上での苦渋の決断。基地跡地の開発は市の街づくりにおいて避けては通れない課題として、市民の理解を求めたい」と話している。
 一方、基地跡地西側の約400世帯でつくる「むさしの自治会」など地元住民は反発を強めている。同自治会は18日、井上三郎・市議会議長に建設反対の陳情と1万3106人分の署名を提出。地元主婦らでつくる「刑務所施設等建設反対の会」がすでに提出した署名と合わせると、約2万6千人分になる。
 法務省は市主催の市民説明会などで、現施設の老朽化や受刑者の増加、医師不足が施設の移転・集約につながったと説明。「住宅地から刑務所を見えないよう配慮する」とした。だが住民側は分散していた収容施設を1カ所に集めることに「治安や脱走など不安がぬぐえない」と訴える。13日には跡地内で絶滅のおそれがあるオオタカの飛来を確認、「緑と環境破壊につながる」とも訴えている。
 不満の矛先は、03年に実現可能な地元利用計画を提出するよう国から求められながら、具体的な計画を打ち出せなかった市にも向かう。
 むさしの自治会の藤原国広会長は「市民生活の安心と安らぎを守るのが行政の役割。国の支援に目がくらんで、市民が不安に思う施設を建てることが正しい政治判断なのか」と憤る。
 今後は署名活動を継続する一方、10月に予定される市長選への対応も含め、反対運動を強めていくという。
(以上引用終わり)

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2008年2月17日 (日)

刑事裁判・「精神鑑定」実施方法の工夫

重大刑事事件の精神鑑定について、以下の審理方法が採用されているようです。

鑑定人2名の「同時」採用というのは、私も初めて聞いたやり方です。鑑定人の確保に苦労しそうですが、方法としてはあってもよいように思います。

裁判員裁判を見据えて各裁判体で試みられている工夫の一環であることは間違いありませんが、今回のやり方が、どのような口述方法、質問方法をとるのか、裁判官の心証形成にどのように影響するのか、興味深いところです。

(以下アサヒドットコム2008年2月13日より一部引用)
被告の精神鑑定結果、口頭で 渋谷・夫殺害 来月報告
http://www.asahi.com/national/update/0213/TKY200802120308.html
 東京・渋谷で夫を殺害し、遺体を切断したとして殺人などの罪に問われた三橋歌織被告(33)の公判で、被告の精神鑑定の鑑定書を大幅に簡略化し、検察・弁護側双方の鑑定医2人が口頭で結果を報告する方法を採用することが12日、決まった。来春に始まる裁判員制度では鑑定結果を市民に理解してもらう仕組みが課題で、それを実際の法廷で先取りする工夫となる。報告は3月10日の予定だという。
 公判は昨年12月に東京地裁(河本雅也裁判長)で始まった。弁護側は犯行時は心神喪失か、心神耗弱だった疑いがあると訴えている。
 この裁判では裁判員制度を意識し、まず、検察側、弁護側が公判前整理手続きでそれぞれ請求した精神科医を初公判でともに鑑定人として採用。
(中略) 2人の鑑定医は、公判と並行して三橋被告と面談し、鑑定を進めてきた。7日と12日の被告人質問でも法廷に同席し三橋被告への質問も許可された。
 これまでは1人を採用して結果を待ち、必要な場合にはもう1人採用する形式だった。このやり方では審理が中断するうえ、鑑定期間も数カ月にわたり、審理が長期化する原因になってきた。
 また、従来の鑑定書は数十ページに及び、難解な専門用語が並ぶため、裁判官にも理解しづらいと指摘があった。裁判員制度では市民の負担を軽くするため、今回の工夫のように口頭による報告で理解できるような内容を目指すとみられる。用語をわかりやすくする作業も今後、進められる見通しだ。
(以上引用終わり)

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2008年2月15日 (金)

鳩山法務大臣発言について

鳩山邦夫法務大臣の発言が下記報道の通り報じられています。

「冤罪」という言葉の意味するもっとも大事な部分を、法務行政のトップに立たれる方なのに、まったく理解していないと言わざるを得ません。
冤罪とは、真犯人が見つかったか否かを問題として論じるものではなく、無実の罪に苦しむ被害者の、その「苦しみ」に着目して論じられるべきものなのではないでしょうか。
ちょっと、お話になりません。こんな発言、自分が権力を持っていることに無自覚な方の発言としか思えません。大臣は、事件の意味も内容も、実際のところは全く理解されていないのではないですか?「本音トーク」とはレベルの違う話で、失礼ながら、法務大臣として最も大事な部分が欠けており、職務不適格・許されないレベルの失言と感じます。

(以下関連記事)

(2008年2月14日毎日jp)
鹿児島県議選買収無罪事件:法相「冤罪ではない」
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080214ddm012040150000c.html
 鳩山邦夫法相は13日、法務省内で開かれた検察長官会同で訓示し、鹿児島県議選の買収無罪事件について「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではないと考えている」と述べた。鳩山法相はその後、記者団に「定義がはっきりしない冤罪というものをこの事件まで適用すると、無罪事件は全部冤罪になってしまう」と説明した。

(2008年2月14日毎日jp)
鹿児島県議選買収無罪事件:法相「冤罪」発言に官房長官が苦言
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/02/14/20080214dde007040016000c.html
 町村信孝官房長官は14日の記者会見で、鳩山邦夫法相が鹿児島県議選の買収無罪事件を「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と発言したことに対し「冤罪であるかないかという議論よりは、ああした不適切な手法による捜査は是正しなければいけないと強調すべきだ。その反省を強く持ち、今後、適正な捜査が行われるべきだと強調しなければいけない」と苦言を呈した。

(2008年2月15日毎日jp)
鳩山法相:自分の発言撤回 鹿児島県議選の買収無罪事件で
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080215k0000m010105000c.html
 鳩山邦夫法相は14日の衆院予算委員会で、鹿児島県議選の買収無罪事件について「被告の方が『冤罪(えんざい)が晴れた』とおっしゃるのを、私は否定する何の根拠も持っていない」と述べ、「冤罪と呼ぶべきではない」という自身の発言を事実上、撤回した。その上で「被告の方々が不愉快な思いをされたとすれば、おわびをしなければならない」と謝罪した。保坂展人氏(社民)の質問に答えた。
(中略) 鳩山氏は予算委で謝罪したものの、「今後、公式の場では冤罪という言葉は一切使わない」とも述べ、「冤罪の意味が不確定」という持論は変えなかった。(以下略)

(2008年2月15日毎日jp)
鳩山法相発言:鹿児島の元被告ら抗議声明 謝罪求める
http://mainichi.jp/select/today/news/20080215k0000m010142000c.html
 鹿児島県議選の買収無罪事件について鳩山邦夫法相が「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と発言した問題で、鹿児島県志布志市の元被告らは14日、発言の謝罪と撤回を求める抗議声明を発表し、法相に送った。
 声明は、元被告らが国と県を相手にした国家賠償請求訴訟の原告団長、藤山忠さん(59)が出した。
 藤山さんは声明で「(発言は)過ちを容認するもので、国民の生命と財産を守るべき司法の最高責任者の発言としては資質を問いたい」と批判。「この事件は警察、検察の犯罪。それが裁判、あるいは社会的に裁かれた」と訴え、発言の撤回と謝罪を求めている。
 法相には声明のほか、元被告ら6人の「抗議の一言」も送付。現金を配ったとして逮捕され、無罪となった中山信一県議(62)は「国民を守る立場の法務大臣がこのような軽い発言をすること自体許し難い」。取り調べ中に、親族の名前を書いた紙を無理やり踏まされた川畑幸夫さん(62)も「(無罪判決の)裁判そのものを否定する内容で許し難い。軽々しい発言の前に、事件が発生した現地に足を運ぶべきだ」と憤った。(以下略)

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2008年1月18日 (金)

裁判員「辞退」はこんな場合にOKだそうです

裁判員辞退理由について、

「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第16条第8号に規定するやむを得ない事由を定める政令案」に対する意見募集の結果について」(平成20年1月15日法務省刑事局)が公表されています。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&CLASSNAME=Pcm1090&KID=300090008&OBJCD=&GROUP=

…裁判員になりたくない人必見、ですが (^^;

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2008年1月16日 (水)

刑事弁護スキルアップに向けて

今日は弁護士会多摩支部の刑事弁護委員会でした。

委員会終了後は定例の勉強会。今日のテーマは「情状弁護」でした。新規登録されたばかりの新人弁護士さんもきていただいて、また内容も実りあるものでした。

このように弁護士会(の刑事弁護委員会)では、弁護士の研修のため、定期的に勉強会・研修会を開催しています。今年はとくに、わが弁護士会多摩支部刑事弁護委員会でも、平成21年度から始まる裁判員制度に対応した刑事弁護のための集中・連続研修会を実施予定です。

刑事裁判をめぐっても、時代はものすごいスピードで動いています。私たち弁護士は、その流れに振り回されないようにしながら、また失うべきでないものは守りつつ、よりよい刑事弁護を行う必要があります。そのために、弁護士会でも、このような勉強会など、随時さまざまなとりくみをしているのです。

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2008年1月15日 (火)

「社会奉仕命令」導入?

刑事裁判で裁判官が選択する刑の選択肢として、「≪社会奉仕命令付き≫執行猶予」というものが導入の方向へ向かっています。
「社会奉仕命令」の具体的内容としては、海外では、公共の場の清掃などがあるようですね。

報道によると、導入の背景には、刑務所の過剰収容問題の解決策の一つとして、実刑判決となっていたうちの一部事案につき、社会奉仕命令付き執行猶予判決とすることで、実刑判決を減らすということを想定しているとのことです。
が、一般的にはそれよりも、執行猶予付き判決の実効性に疑問を持つ向きから、より制裁的要素を付加する手段として受け止められているようにも思います。

もちろん私も、「懲役・禁固・罰金…」等の現行の刑種(末尾条文参照)が唯一絶対だとは思わず、中間処遇も検討すべきと考えているので、「社会奉仕命令」導入に反対というわけではありません。ただし今回の改正については、(実際に改正された場合)方向性としてどちらに転ぶのかを、今後慎重に見極めないといけません。

(以下読売オンライン2008年1月7日より一部引用)
清掃や落書き消去、判決に「社会奉仕」導入…政府方針
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080107it01.htm
 政府は、裁判の判決で懲役刑などの執行を猶予する条件として、公園の清掃や落書きの消去などを無報酬で行うことを命じる「社会奉仕命令」を導入する方針を固めた。
 実刑と執行猶予では大きな差があり、中間的な処遇が必要と判断した。新たな選択肢が加わることで執行猶予の判決が増え、刑務所の過剰収容に歯止めをかける効果も狙っている。政府は2008年中にも、刑法と刑事訴訟法の改正案を国会に提出することを目指している。
 社会奉仕命令の導入により、裁判所の懲役や禁固の判決は、〈1〉実刑判決〈2〉社会奉仕命令を条件にした執行猶予付きの判決〈3〉条件のない執行猶予付きの判決――という選択肢ができることになる。
(中略) 社会奉仕命令を執行猶予の条件とする対象として想定されているのは、道交法違反や業務上過失傷害などによる短期の懲役・禁固刑。裁判官は社会奉仕命令の作業時間の上限や下限を宣告し、受刑者が作業を行わなかった場合は刑務所に収容するなどの罰を科す。
 具体的な作業の中身については社会奉仕命令を監督する機関が決定する方向で、今後、監督機関や命令の対象となる犯罪、作業内容など、制度の詳細を詰めていくことにしている。
(中略) 今後、法制審議会では、英仏のように独立した刑としても社会奉仕命令を導入することや、懲役などの代替として導入することの是非についても引き続き検討する。
(以下略、以上引用終わり)

※参考:以下、刑法条文より抜粋

(刑の種類)
第九条  死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

(保護観察)
第二十五条の二  前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2  保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3  保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。

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2008年1月 3日 (木)

日弁連裁判員制度実施本部「法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム」最終報告書

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて、新年早々法律ネタですが、

日弁連のホームページを見ていたところ、裁判員制度実施本部内「法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム」の最終報告書が公表されていましたので、紹介します。 

http://www.nichibenren.or.jp/ja/citizen_judge/program/nichijyougoka.html

以下、冒頭あいさつより抜粋です。詳しくはリンク先をご覧ください。

プロジェクトチームの目的:
「法廷で使われていることばはわかりにくい」
これは、法廷を傍聴した市民のみなさんから必ず寄せられる声です。
法律用語はそもそもわかりにくい。
日常生活でめったに使わないような言い回しがされている。
一つの文がやたらと長くて理解しづらい。
早口でしゃべるので聞き取れない。
これでは、市民のみなさんが裁判員として参加しても、その役割を 十分果たすことができません!
これまで法律家だけが使ってきたことば、法廷でしか使われないことばを見直し、市民のみなさんが安心して参加できる法廷を作ろう。
これが「法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム」の 目指すところです。

最終報告書発表に際してのコメント:
2007年12月19日に、当連合会の裁判員制度実施本部・法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチームでは、最終報告書をとりまとめました。
プロジェクトチームでは、2005年11月14日にも中間報告書を公表していますが、最終報告書では、中間報告書の用語も含めて再構成をし、計61語の検討結果をこの度発表することとなりました。
裁判員裁判に関わる市民の方や法律家の皆様の刺激のひとつとなって、より分かりやすく正確な法廷用語が紡ぎ出されるきっかけになればと思います。
なお、本報告書を収めた書籍は2008年春の刊行が予定されています。

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2007年12月29日 (土)

07・12・25最高裁決定(警察官メモの開示)

先日のブログで紹介した証拠開示に関する高裁決定につき、最高裁決定が出ました。

さまざまな問題点が指摘されつつこれまで外部からは見えなかった警察による取調べに風穴をあける決定で(メモには、「調書」にはなっていない取調室内のやりとりが記録されている可能性があります。)、捜査の可視化、刑事訴訟法上の「当事者主義」の実質化にとって、非常に大きな意味のある決定です。刑事実務に与える影響はきわめて大きいと思います。

(以下東京新聞2007年12月27日より一部引用)
捜査メモの開示決定 最高裁『公文書』と初判断
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007122702075391.html
 警察官が取り調べの際に書き取ったメモについて、検察側に証拠開示する義務があるかが争われた裁判で、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は「警察官は捜査の詳細な記録を義務づけられており、捜査段階の備忘録やメモは公文書として開示対象となり得る」との初判断を示した。検察側に開示を命じた東京高裁決定を支持、検察側の特別抗告を棄却した。決定は二十五日付。 
 これまで開示対象は検察官が保管する証拠に限定されていたが、決定は「検察官保管の証拠にとどまらず、捜査段階で作成、入手した書面等」として対象を拡大した。警察官の作成したメモ類には弁護側に有利な内容が含まれている可能性もあり、今後、捜査機関の取り調べなどに大きな影響を及ぼすとみられる。
 偽の一万円札を銀行で両替したなどとして偽造通貨行使罪で東京地裁に起訴された男性被告(59)の裁判。
 被告は捜査段階で容疑を認める調書を作成されたが、初公判で「偽札とは知らなかった」と主張、容疑を認めた供述調書の任意性が争点となった。
 弁護側は、公判開始後に争点を絞る「期日間整理手続き」で、取り調べを担当した警部補のメモなどに捜査段階での否認の記述が残っている可能性があるとして開示を求めていた。
 東京地裁は「メモは存在しない。仮にあっても個人的な手控え」と請求を棄却したが、弁護側は即時抗告。東京高裁は「弁護側の主張と関連性が高く、被告の防御に必要な場合は、開示対象となる」と開示を命じていた。
 最高裁決定は、国家公安委員会が定めた犯罪捜査規範の「警察官は事件の審理に証人として出廷する場合などを考え、捜査の経過などを明細に記録しておかなければならない」との規定を引用。規定に基づいて作成されたメモ類は「個人的なメモを超えた備忘録であり公文書」と判断した。
 一方で、決定はプライバシー侵害や証拠隠滅につながるなどの支障があると裁判所が判断すれば、必ずしも開示の対象とはならない可能性も示唆した。
 警察官の取り調べメモについては、これまで名古屋、広島両高裁が非開示との判断を示していた。
(以上引用終わり)

決定全文は以下の通りです。

(最高裁HP)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35535&hanreiKbn=01

重要部分を抜粋します。

「公判前整理手続及び期日間整理手続における証拠開示制度は,争点整理と証拠調べを有効かつ効率的に行うためのものであり,このような証拠開示制度の趣旨にかんがみれば,刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含むと解するのが相当である。」

この部分は、開示の対象が検察官の手元に現にあるものに限られないこと、狭い意味での「証拠」として作成された者に限られないことを示したという点で、大きな意義があると思います。

そして、警察官作成のメモが開示対象になるとした部分ですが、

「犯罪捜査規範13条は,「警察官は,捜査を行うに当り,当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し,および将来の捜査に資するため,その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。」と規定しており,警察官が被疑者の取調べを行った場合には,同条により備忘録を作成し,これを保管しておくべきものとしているのであるから,取調警察官が,同条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,個人的メモの域を超え,捜査関係の公文書ということができる。これに該当する備忘録については,当該事件の公判審理において,当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,証拠開示の対象となり得るものと解するのが相当である。」

としています。

※参考条文

1 刑事訴訟法
( http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8c%59%8e%96%91%69%8f%d7%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S23HO131&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 )

第三百十六条の二十  検察官は、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
○2  被告人又は弁護人は、前項の開示の請求をするときは、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。
一  開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項
二  第三百十六条の十七第一項の主張と開示の請求に係る証拠との関連性その他の被告人の防御の準備のために当該開示が必要である理由

2 犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)
( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F30301000002.html )

(備忘録)
第十三条  警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。

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2007年12月18日 (火)

警察官作成の取調べメモ開示命令(東京高裁2007・11・8決定)

検察官側からの証拠開示について、刑事裁判実務大きな意味のある高裁決定が出ています。なお、検察側は最高裁への特別抗告中だそうです。

警察官作成の取調べメモ類は、これまで、「検察官の手持ち証拠ではない(あるとしても警察官の手元にあるものなので、証拠開示の対象とならない)」ということで、開示が拒否されてきました。しかし、捜査の適法性や調書(とくに自白調書)の任意性を検証するにはこのメモが大きな意味を持つことがあるため、開示を求める弁護側と検察側とで対立点となってきました。

今回の事例は、報道によれば、地裁では開示命令申し立てが棄却され、抗告審での開示命令のようです。最高裁の判断が注目されますが、刑事手続の実態をみればこれらは開示されてしかるべきものと考えますし、刑事訴訟規則198条の4もこれを求めるところでしょう。

(以下毎日jp2007年12月14日より一部引用)
<自白調書>検察側に取り調べメモ開示命令 東京高裁
 捜査段階で容疑を認める調書が作成されたが公判で否認した50歳代の男性被告を巡る裁判手続きで、東京高裁が検察側に警察官の取り調べメモや備忘録の開示を命じる決定を出していたことが分かった。検察はメモの存在を明らかにしておらず、裁判所が存在が明白でない資料の開示を命じるのは異例。今回の決定は、取り調べの可視化の問題にも一石を投じそうだ。
 決定は11月8日付で、高裁の門野博裁判長は「検察が容易に入手でき、弁護側主張の証明力が高い証拠は開示の対象とすべきだ」とした。また、「不当な調べの有無の水掛け論を防ぐには録音・録画が望ましいが、現状では捜査官の作成メモや取り調べ経過一覧表などの客観資料で立証するよう努力すべきだ」と指摘した。
(中略) 門野裁判長は「検察が開示義務を負うのは原則、手持ち証拠」としつつ、新たに導入された争点整理手続きに触れ「検察の判断のみで開示対象を決めれば重要証拠が開示されず、手続きの目的が達成できない恐れがある」と判断。警察官のメモは開示の必要性が認められ、開示による弊害も考えにくいと結論付けた。
(以下略、以上引用終わり)

※参考:刑事訴訟規則198条の4
検察官は、被告人又は被告人以外の者の供述に関し、その取調べの状況を立証しようとするときは、できる限り、取調べの状況を記録した書面その他の取調べ状況に関する資料を用いるなどして、迅速かつ的確な立証に努めなければならない

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2007年12月 6日 (木)

取調べ「可視化」に関して、警察庁長官の会見コメント

「取り調べの可視化」に関する警察庁長官の会見コメントです。

コメントを読むに警察庁はいまだ「全面可視化」には抵抗しているようですが、あるべき刑事司法を考えれば、もはやこの動きは逆らい難いものと思います。警察が単に「人を有罪にするための」警察ではなく、真にあるべき社会への寄与を評価される存在となるためためにも、狭い「利益」判断を超えた英断を期待したいところです。

(以下西日本新聞2007年11月30日より引用)
可視化論議避けられない 警察庁長官
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20071130/20071130_045.shtml
 警察庁の吉村博人長官は30日、東京の日本記者クラブで記者会見し、取り調べの録音・録画(可視化)論議について「まったく避けて通ることはできない」と述べ、柔軟に対応していく姿勢を示した。
 検察は取り調べの一部録音・録画を試行しており、吉村長官は「(警察は)制度として録音・録画をしていないが、そのことを頑迷固陋に死守するつもりはない」と説明。「検察庁の状況をよく聞きながら議論を深めたい」と述べた。
 その上で、日弁連や一部の裁判官が求めている全過程の可視化については「取り調べの機能を完全に阻害することになる。到底あり得ない」と強調した。
 警察庁は10月から、裁判員制度導入に向けて刑事手続きの在り方を検討する最高裁と日弁連、最高検による法曹3者協議会にオブザーバーとして参加。同協議会の場で録音・録画について議論を進める。
(以上引用終わり)

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2007年12月 1日 (土)

自白調書却下事例(報道)

自白調書の証拠請求が却下された事例の報道です。
捜査段階で弁護人から、自白の任意性が争いになるから取り調べを録画録音すべきとの申し出を受けていたにもかかわらず録画録音しなかった、という事例のようです。

(以下読売オンライン2007年11月29日より一部引用)
録画なく任意性疑問、大阪地裁が店員殺害で自白調書却下
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071129i305.htm
 大阪市淀川区のカラオケ店員(当時19歳)が淀川で殺害された事件で、殺人罪などに問われて有罪判決を受けた無職A被告(24)(控訴)の自白調書の一部について、大阪地裁が判決前の公判で「取り調べ状況の録画など客観的な証拠がない」と任意性に疑問を投げかけ、検察側の証拠請求を却下していたことがわかった。
 裁判員制度を控え、検察当局は自白の任意性を判断しやすいよう取り調べの録画・録音を試行中だが、一部にとどまっているのが現状。地裁の判断は録画などの積極的な活用を示唆したと言え、今後の捜査手法にも影響しそうだ。
 9月の同地裁判決によると、被告は、交際していた無職B被告(34)(控訴)と共謀し、2005年11月、暴行するなどして衰弱した店員に重しを付けて淀川に沈め、殺害した。
 A被告は昨年5月の逮捕の際に犯行を自供したが、その翌日に弁護人が接見してからは否認や黙秘に転じ、その後、再び殺害を認めた。弁護人は捜査段階で「供述の任意性が争いになる。取り調べを録画・録音すべき」と求めたが、検察側は録画しなかった。
 公判で、A被告は殺意を否認したうえで、「殺意を否定すると、検事に『調書が弱くなる』と言われた」などと主張。証人出廷した検事や警察官は「被告が自責の念で自白した」などと反論していた。
 横田信之裁判長は7月の公判で「捜査官は殺意を含めた自白を獲得する必要が高かった」「録画・録音などの証拠が提出されていない」などと指摘。逮捕翌日からの自白調書については「捜査官の意に沿って犯行を認めた疑いがある」として証拠採用しなかった。
(以下略、以上引用終わり※被告氏名はA・Bとしました)

なお判決自体は殺意を認定し懲役12年(求刑・懲役22年)となったそうです。

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2007年11月28日 (水)

裁判員選任手続

水島朝穂早稲田大学教授のHP内「今週の直言」に、裁判員模擬裁判での裁判員選任手続のレポートが出ていたので、紹介します。

http://www.asaho.com/jpn/index.html

なお裁判員裁判については、このコラム(「今週の直言」)内で引き続き検討するそうです。

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2007年11月25日 (日)

司法研修所「裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方」研究報告骨子

紹介が遅れていましたが、裁判員裁判について、以下のような報道もあります。
司法研修所委嘱の「裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方」に関する研究について、骨子がまとめられたとのことです。

今後はこれをもとに裁判員裁判に関する裁判所実務が動いていくと思われますので、重要な情報です。

(以下東京新聞2007年11月11日より一部引用)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007111102063529.html
裁判員が任意性判断 研究結果骨子判明 否定なら採用せず
 最高裁司法研修所(埼玉県和光市)による裁判員裁判の在り方に関する研究結果の骨子が十日判明し、自白調書の任意性が争われた場合、裁判員が認めない限り証拠採用しない方針が示されることが分かった。裁判官は検察側、弁護側双方の任意性立証を解説したり、自分の考えを説明したりしないことも盛り込まれている。
 研究結果の骨子は「裁判員裁判のイメージを示したもの」(最高裁刑事局)とされ、実務上の指針となりそうだ。また骨子は、富山などの冤罪(えんざい)事件で注目されている取り調べの録画を「有効な手段」と評価し、本格導入を促す可能性もある。
(中略)骨子によると、まず裁判員裁判の基本的な考え方として(1)法廷での供述・証言に基づき審理する「口頭主義」を徹底する(2)審理期間を大幅に削減し、公判に立ち会うだけで必要な判断資料が得られるよう工夫する(3)裁判官室で供述調書などを読み込む従来の方法は採らない-などと指摘した。
 続いて被告が捜査段階の自白を翻して起訴事実を否認し、捜査段階の自白調書は任意の供述か、取調官の強要によるものかが争われるケースに言及。これまでは取調官の尋問などが長く続き、裁判官が全供述調書を証拠採用した上で供述の変遷を検討して判断してきたが、裁判員裁判では「こうした手法は採り得ない」との見解を示した。
(以下略、以上引用終わり)

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2007年11月16日 (金)

「合理的疑いを超える証明」に関する最高裁決定(2007・10・16)

裁判員裁判実施を控え、「合理的疑いを超える程度の証明」とは何か、が改めて注目されています。

そんな中、以下のような最高裁判決が出ています。

(平成19年10月16日最高裁決定:裁判所HPより)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35273&hanreiKbn=01

上記決定文中では、この点について、
「刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。」
とされています。

ただこれだけ読むと、「合理的でないと思う場合は場合は合理的な疑いを差し挟む余地がない」というような、循環論法の域を超えていないように読めてしまうのですが…

※「『合理的疑い』を超える証明」とは・・・

刑事裁判で事実を認定する際には、
そのような事実を認定してよいか疑いが残る場合は事実認定をしてはならない(「疑わしきは被告人の利益に」=証拠調べを尽くしてもなお事実認定をするには疑問が残る場合には、被告人にとって利益な方向に判断する(=犯罪事実を認定してはならない))という意味で、
「合理的疑いを超える」レベルの証明が必要、と言われています。

(「疑わしきは被告人の利益に」というテーゼに疑問を持たれた場合は、仮に被告人の立場で自分の身に刑事裁判が降りかかってきたらということを、想像してみてください。)

ただこれだけでは判断の基準がまだよくわからないので、「確信」が必要だとか、「99.99%の心証」が必要だとか、いろいろな補足説明が試みられています。

つまり、「やってるっぽいけどなー・・・」というようなあいまいな心証で有罪認定をしてはならず、この点は裁判員にもきちんと理解していただく必要があります。そのため、ではこれを裁判員にどう説明すればいいかが、今、改めて刑事裁判の現場で、注目されているのです。

ちなみにアメリカの法教育では、「刑事裁判は白か黒かを決する場ではない。白かグレーか、を判断する場である。グレーであれば、無罪である」という点が教育されていると聞きます。早期のこのような教育なくしては陪審員制度または裁判員制度は機能しないと、私も思います。

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2007年11月15日 (木)

取調べ録画DVDによる調書却下事例(大阪地裁2007・11・14)

検察官の取調べを録画したDVDを証拠採用した刑事公判で、そのDVDを根拠として検察官作成の供述調書の任意性を否定した事例が報道されています。

(以下、アサヒドットコム2007年11月15日より一部引用)
http://www.asahi.com/national/update/1115/OSK200711150021.html
大阪地裁「自白誘導の疑い」と調書却下 DVD映像で
 殺人未遂罪で起訴された男性被告の取り調べの様子を録画したDVD映像が証拠採用された事件の第4回公判が14日、大阪地裁であり、西田真基裁判長は「映像から判断すると、検察官が被告の供述を誘導した疑いがぬぐえない」と述べ、検察側による被告の供述調書の証拠申請を却下した。最高検によると、取り調べ映像が法廷で上映された例はこの事件を含め4件あるが、映像をもとに裁判所が供述調書を却下したのは初めて。
(中略)被告は取り調べに殺意を認めたとされたが、初公判で否認。検察、弁護側双方の申請で取り調べのDVDが証拠採用され、7日の前回公判で上映された。
 西田裁判長は今回の公判で、被告が映像の中で「殺そうとは思わんけど」と殺意を否認するような発言もしていたと指摘。一方、取り調べにあたる検察官が「殺そうと思って刺したことに間違いないね」などと何度も早口で尋ねた点を挙げ、被告の供述は検察官によって誘導された、と判断した。さらに被告は高齢で耳が遠く、検察官の言葉を十分に理解していなかった可能性が高いとして、被告の供述調書に任意性はないと結論づけた。
(以下略、以上引用終わり)

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2007年11月10日 (土)

「再犯者6割」が示すもの

犯罪件数の6割が再犯者によるものだという、今年度犯罪白書(法務省発行)の統計が出ました。
このことは何を示し、社会に何を求めているのでしょうか。

(以下アサヒドットコム2007年11月6日より一部引用)
http://www.asahi.com/national/update/1106/TKY200711060079.html
「再犯者」の犯罪、全件数の6割に 犯罪白書
 罪を犯した後で再び罪を重ねる「再犯者」による犯罪は犯罪件数の6割を占める――。法務省は6日に公表した今年の「犯罪白書」に、こんな分析結果を掲載した。「少数の者によって多数の犯罪が引き起こされている」と指摘。
(以下略、以上引用終わり)

さて、この記事には、こんな部分もあります。

(以下、再び引用)
社会に出た後に仕事に就くための支援や、更生を見守る「保護観察」を充実させることで再犯を防ぐ必要があると訴えている。
(略)年代別では、初犯時の年齢が65歳以上の人は16%が6カ月以内、31%が1年以内に再び罪を犯していることもわかった。どの年齢層よりも高い数値だった。
 法総研は「覚せい剤や窃盗は何度も同じ罪を繰り返す傾向が強く、特別な指導が重要。特に窃盗は8割が無職で就業支援の必要性がある」「高齢者は就業が難しく、生活苦や居場所のなさから罪を重ねる場合が多い」と分析している。
(以上引用終わり)

ちなみに同種記事を報じた読売新聞でも、白書の分析内容の紹介で、

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071106i107.htm
65歳以上の高齢者では、多数回再犯者の過半数(51%)が窃盗。白書は、重い刑罰を科されても、同一の犯罪を繰り返し、再犯までの期間が短くなる者が存在すると指摘した。
(以上、読売オンライン2007年11月6日より引用)

との記載があります。

「再犯者が6割」ということだけが独り歩きすると、だから再犯を抑止するために今以上の厳罰化が必要なんだ、という論調につながりかねないと思うのですが、
大事なのはこのような背景分析で、分析結果は、じつは厳罰化の陰で、刑執行終了後のフォローの貧弱さがこのような事態を生んでいる(厳罰化では、このような事態を抑止しえない)ということへの着目をが求めているのだろうと思います。

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2007年10月18日 (木)

取調べ一部録画DVDの証明力について、判決が出ています。

検察官が取り調べの一部を録画したDVDを証拠請求し、採用された事件についての、初めての判決が出ています。
当該DVDの証明力をどのように判断するか、注目されていたものです。

(以下東京新聞2007年10月11日より一部引用)
取り調べ映像初採用判決 東京地裁 『証拠能力は限定的』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007101102055514.html
 フィリピンで2005年、保険金目的で会社員を殺害したとして、殺人罪などに問われた元会社員(氏名略)被告(56)の判決で、東京地裁は10日、同被告が自白した様子を録画したDVDについて「有力な証拠として過大視はできない」と述べ、証拠能力を限定的にとらえる判断を示した。(中略)
 法廷で罪を否認した(氏名略)被告が、DVDでは認めていることから、裁判所の判断が注目されたが、高木順子裁判長は「自白から約一カ月後に、自白の理由や心境を簡潔に述べたものを10分余り撮影したものにすぎず、有力な証拠として過大視することはできない」「(取り調べの際の脅迫などを否定した)警察官証言の信用性を支える資料にすぎない」と述べた。
(以下略、以上引用終わり)

妥当な判断でしょう。一応「検察官証言の信用性を支える」とはされていますが、その意味での証明力もきわめて低い(というより、ほとんど評価されない)ものではないかとも思います。

取り調べ過程を録画するならば、全過程を録画しないと、全く意味がないどころか、むしろ有害です。

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2007年10月13日 (土)

「喜連川社会復帰促進センター」開所

先日もブログに書いた「民間刑務所」について、新たな開所のニュースです。

(以下毎日jp2007年10月13日より一部引用)
民営刑務所:栃木で開所 障害者のリハビリプログラムも
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071014k0000m040044000c.html
障害者のリハビリプログラムを備えた全国初の刑務所「喜連川(きつれがわ)社会復帰促進センター」(栃木県さくら市)が13日、開所した。警備、職業訓練、教育などを民間が担う、東日本初のPFI方式で運営される。理学療法士やトレーナーによるリハビリ、作業療法などで受刑者の更生を図る。
 同センターによると、収容されるのは残りの刑期が1年以上8年未満の初犯の受刑者2000人。刑務官のほか、セコムなど7社による企業グループの社員150人が運営し、小学館プロダクションが矯正教育を行う。
 入所者のうち500人は、日常生活が可能な軽度の身体・精神障害者で、再犯防止の教育を受ける。これまで重度の障害者は医療刑務所に収容され専門的に処遇されてきたが、軽度の障害者の受け皿はなかったという。
(以下略、以上引用終わり)

PFI方式も、もはや定着した感があります。

さて今回の施設、「軽度」障がい者の受け入れという部分にスポットを当てているところは評価すべきでしょうが(必要性はきわめて高いと思います。ただし今回の「民間刑務所」のプログラム内容がよくわからないので、有効性についてはまだ何とも評価ができません)、問題は、なぜ国営ではそれができなかったのか/今もできないのか、という点だと思います。それがわからないと「民間刑務所」の肯否も論じにくいので、報道にも、その点にスポットを当ててほしいものです。

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2007年9月23日 (日)

本村洋さんの記者会見

光市事件被害者遺族の本村洋さんの、前回公判(被害者意見陳述と被告人質問が行われたそうです)後の記者会見の動画です。

(日テレNEWS24)
http://www.news24.jp/93483.html

発せられたあらゆる言葉が、突き刺さってくるように感じます。
あらゆる方が見て、そしてそこからさまざまなものを感じなければならない記者会見と思います。
また弁護士として言えば、刑事弁護を志す弁護士は、また被害者問題に携わる弁護士も、今回の記者会見で言葉を選んで慎重に語られたその言葉を、真摯に聞かなければなりません。そのうえで、あらためて「刑事弁護人の責務」「犯罪被害者支援の在り方」を、真摯に考えなければなりません。

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今枝弁護士のブログなど(光市事件関連)

光市事件の弁護人の一人今枝仁弁護士が、ブログを開設しています。
情報提供として。

「弁護士・未熟な人間・今枝仁・・・光市事件と刑事弁護」
http://beauty.geocities.yahoo.co.jp/gl/imajin28490

なお、光市事件弁護人のうち今枝弁護士を含む4名が原告となって提起した橋下徹弁護士に対する損害賠償請求訴訟事件の原告代理人弁護士ら(「懲戒扇動被害弁護団」)も、ホームページを開設しています。
トップページによると、「この事件に関する情報発信を通じて,より多くの方々に,光市事件に限らず,刑事裁判・刑事弁護の意義について考えていただきたいと思っています。」とのことです。
http://wiki.livedoor.jp/keiben/d/FrontPage

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2007年9月14日 (金)

光市事件について(情報と雑感)

今日は、光市事件について感心がある方のために、ネット上で取れるいくつかの情報ソース(これまで紹介していないもの)を紹介します。

1 まず、アジアプレス記者・綿井健陽氏のブログを紹介します。
中には光市事件弁護団の公判後記者会見の映像へのリンク(YAHOO動画)もあり、昨今のいびつな報道状況下では貴重な情報ですので、ご覧いただくべきものと思います。

http://blog.so-net.ne.jp/watai/

2 次に、産経新聞記者の福富正大氏のブログも紹介します。
今回の高裁公判での、検察側、弁護側それぞれの意見書がアップされています。

http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/

3 また、江川紹子さんのブログでも、「刑事弁護を考える~光市母子殺害事件をめぐって」と題して書かれています。

http://www.egawashoko.com/c006/000235.html

4 最後に紹介するのは、弁護士による3つのブログです。

「弁護士のため息」
http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/

「超初級革命講座」
http://tknr.net/

「津久井進の弁護士ノート」

http://tukui.blog55.fc2.com/

これらを紹介したのは、弁護団員である(そして、今回かの橋下弁護士(ブログ:http://hashimotol.exblog.jp/)を訴えた原告でもある)今枝弁護士が、ここにコメントをよせているからです。コメントからは誠実な人柄がうかがえ、そのコメントには、実際に刑事弁護を行なう身として強く共感できる部分が、多々あります。進行中事件、とくにこのような事件の弁護人がこのような形でコメントを公表することの是非にはもちろんさまざまな意見があろうかと思いますが、それはひとまずおくとして、上記記者会見とあわせて見ると、報道されている「弁護団」像と現実の「弁護人」像のズレが感じられるのではないでしょうか。

5 ただここまで紹介してこんなことを言うのもなんですが、
最後に付け加えるならば、事件の深刻さを考えると、当事者(とくに、被害者)を置き去りにしたこの間の「場外乱闘」には、強い違和感があります。このような場外乱闘とは違う形が、何とか作れないものでしょうか。事件の痛みを真摯に感じ、その痛みを胸にしながら、そのうえで市民がこれらの情報に触れ、考える、というようなありかたを何とか作れないものか、というのが、私の思うところです(そして今枝弁護士も、真に志すところとしては、それを目指しているように思います。)。

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2007年8月22日 (水)

「有罪・無罪」獲得ゲーム?

裁判は「有罪・無罪獲得ゲーム」なのでしょうか。
裁判員裁判の模擬裁判を経験したりまたは下記報道などを読んでいると、刑事裁判がおかしな方向へ進み始めているような気がします。これが杞憂であればいいのですが。

「有罪を取りに行く」あまり無罪方向の証拠を隠すことによって冤罪の危険を高める活動・「印象」獲得に走り検察官としての品位に疑問を抱かせるような活動などを私は危惧しているのですが、すでにいくつかの裁判員模擬裁判で、このような不安を抱かせる法廷活動を目にしています。このあたりのことは、今のうちに、もう少しきちんと議論しなければいけないと思うのです。

(以下東京新聞2007年8月16日より一部引用)
自白調書出さぬ選択も 最高検試案『疑問出ればダメージ』裁判員制度対策
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007081602041405.html
 市民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度に備え、最高検は、捜査・公判対策の「試案新版」を作り、「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針を打ち出した。
(中略)最高検は昨年三月に旧版の試案を公表。その後の法曹界の議論や模擬裁判などを踏まえて大幅改訂し、より実践的な指針として新版を作成した。
 新版は、有罪への疑問を抱かせかねない立証を控える一方、犯行の悪質さを訴えるため被害者を効果的に尋問することなど、裁判員に与える印象を重視した点が特徴。
 証拠について「従来はできるだけ多く提出した方が得策で、裁判官なら、いずれかの証拠で検察側主張を理解してくれるとの発想があった」とした上で「経験がない裁判員の理解力などを考えれば逆効果。誤った判断に導く恐れが高く、証拠を厳選する大胆な発想の転換が必要」と指摘した。
 特に、自白や被害者の供述は反対尋問で矛盾を突かれる可能性も高く、全体に及ぼす悪影響から「ほかの証拠で立証が十分可能と考えられれば、自白調書の証拠請求を控えるとの選択もあり得る」としている。
(以上引用終わり)

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2007年8月11日 (土)

8・10最高検通知

こんな報道があります。

内容的には当たり前のことだと思うのですが、
一部の検察官については、こんな当たり前のことでもされていない現実があるのです(ただ検察官だけが問題なのではなく、弁護士にもそれと同じくらい、なすべき弁護活動をしていない方々がおられるのも現実であり、以下の記述は弁護人活動のすべてを正当化する趣旨ではありません。)。

「冤罪」事件に限らない現在の刑事裁判の実態として、
たとえば検察官による冒頭陳述や論告の中には、証拠を無視して、たくさんある証拠の中から単純に被告人に最も不利と思われるものを、つぎはぎでつなぎ合わせただけのものもあります。
これは隠れた重大な問題だと思うのですが、特に被害甚大な重大事件で、その傾向が強くなるようにも思えます。そのことは多くの弁護士が感じているものと思いますが、今の「バッシング」情勢下では、それを口にすることすら(翻って被告人の不利益になりかねないので)はばかられるという状況です。

もちろん、そのような内容で固められた検察官冒頭陳述や論告は、被告人に有利な証拠には目をつぶり、被告人を非常にわかりやすい形で「悪」として提示したものとなって、事実と明らかに反する内容によって、被害感情に情緒的に訴え、報復感情をあおるものに仕上がります。
そしてそれを受けてマスコミはセンセーショナルに報道する、という流れが、今は出来上がってしまっています。

そして、被害者との関係では、もし検察官が被害者に対してもそのような形でしか事案・証拠の内容を説明していないとすれば、検察官を通じてしか証拠の内容・全体像を知りえない被害者側が、被告人・弁護人側の主張について誤解をし、被害感情をさらに増幅させてしまうてしまうのは当然です。そこには、不幸と憎しみの連鎖が生まれます。

検察官は検察庁法上「公益の代表者」と規定されている存在です。証拠を無視してただ単に被告人を極悪人と責めるだけ、それにより社会の喝さいを浴びるだけ、の仕事ではないはずです。身内たる最高検からこのような通知が出たことの意味を深く受け止めていただき、この通知の内容を特殊な事件のみにかかわるものとせずに、各検察官がその立場と責任を改めて十分に理解し、自覚していただきたいと思います。

(以下毎日インタラクティブ2007年8月10日から一部引用)
冤罪事件:最高検、再発防止策など通知
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070810dde007040064000c.html
 鹿児島県議選を巡る買収事件の無罪判決や富山県で判明した冤罪(えんざい)事件を受け、最高検は10日、捜査の問題点や再発防止策をまとめた報告書を作成し、全国の高検と地検に通知した。「証拠の吟味が不十分なまま起訴した」などと問題点を指摘したほか、被告の早期保釈に努め身柄拘束期間を「適正化」するよう求めた。
 報告書は、鹿児島事件について▽警察での自白内容について批判的視点から検討せず、供述の変遷理由の吟味も足りなかった▽買収資金の原資や使途が解明されず客観証拠による裏付けがなかった--などの問題点を挙げ、「消極証拠を虚心坦懐(たんかい)に評価する姿勢が不十分だった」と結論付けた。
 (中略)富山事件では、逮捕された男性の足のサイズと現場の足跡痕の照合作業や、犯行時間帯の男性の通話記録の検討などの捜査が不十分だったと指摘。両事件とも「経験の浅い主任検察官を上司が的確に指導しなかった」と捜査態勢の不備に言及した。
 再発防止策としては▽消極証拠も含めた証拠の十分な吟味▽警察の捜査状況を適切に把握し、問題があれば直ちに是正する--などを挙げた。
(以上引用終わり)

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2007年8月 6日 (月)

医療観察法に関する最高裁決定

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(いわゆる医療観察法)について、7月25日に下記のような最高裁決定が出ていました(今日まで気づきませんでした)。

内容的は、裁判所の入院決定について、要件を満たす場合の裁判所の裁量的判断を否定するもので、

「医療観察法の目的,その制定経緯等に照らせば,同法は,同法2条3項所定の対象者で医療の必要があるもののうち,対象行為を行った際の精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるようにすることが必要な者を同法による医療の対象とする趣旨であって,同法33条1項の申立てがあった場合に,裁判所は,上記必要が認められる者については,同法42条1項1号の医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定,又は同項2号の入院によらない医療を受けさせる旨の決定をしなければならず,上記必要を認めながら,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による措置入院等の医療で足りるとして医療観察法42条1項3号の同法による医療を行わない旨の決定をすることは許されないものと解するのが相当であ」る(下線は松原加筆)、

とのことです。

(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35004&hanreiKbn=01

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2007年7月16日 (月)

裁判員法・よくわからないところがあるぞ

裁判員裁判について、こんな記事がありました。

『無罪』過半数でも全裁判官『有罪』なら? 『双方の意見必要』 条文解釈で混乱 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007071502032623.html
 裁判員法67条(評決)評議における裁判員の関与する判断は、(中略)構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
 二〇〇九年から始まる裁判員制度で、被告が有罪かどうかを決める「評決」を規定した裁判員法六七条について、法曹界の一部から「条文の記述が不十分で、本来の意図と違った解釈ができる」という指摘が出ている。法務省は「明らかな誤解。誤った解釈が広がるのは困る」として、ホームページに新たに解説文を載せ、“火消し”に乗り出した。
(中略) 条文の趣旨は、有罪の評決をする場合は「有罪意見が過半数で、その中には裁判官と裁判員の双方が含まれることが必要」ということ。仮に一般の裁判員六人全員が有罪を主張しても、裁判官が一人も含まれないときは有罪は成立せず、無罪となる。
 だが、裁判員制度に反対する高山俊吉弁護士らは、その逆のケースを示して別の解釈をする。
 「仮に裁判員六人が無罪で、裁判官三人が有罪の場合、条文をそのまま読むと、無罪が過半数でも裁判官の意見が含まれないので、無罪にも有罪にもならずに評議は成立しない。だれかが意見を変えるまで評議を続けることになる」
 法務省の担当者はこの解釈を真っ向から否定した上で、「当然、無罪になる」と説明する。
 「六七条にある『評議の判断』とは、有罪か無罪かではなく、『検察官が有罪を証明できたかどうか』。裁判官三人が有罪意見でも過半数ではないのだから、犯罪の証明がないとして無罪となる」
 法務省の主張は、裁判員法は刑事訴訟法の特別法であり、刑訴法にある「犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言い渡しをしなければならない」という規定は当然、裁判員裁判にも適用され、そのことを裁判員法にわざわざ明記する必要はないという理屈だ。
 同省は十日付で、高山弁護士らが示した評決例をホームページで取り上げ、「双方の意見を含む過半数に達していないため、犯罪の証明があったとは認められず、無罪となります」との解説を掲載した。
(以下略、以上引用終わり)

結論としては法務省解釈でいいように思いますが(法務省の説明のほかにも、被告人に有利な片面的解釈と考えるなど、理屈の上でも説明はつくと思います)、条文を素直に読めば、高山弁護士らの解釈も成り立ちうるというべきでしょうね。

ちなみに法務省HP:http://www.moj.go.jp/

なおほかにも、裁判員法には、解釈が不透明なところがあります。
たとえば、67条2項。

(評決)
第六十七条  前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2  刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。

→ここの「不利」「有利」の判断方法も、いまだはっきりしていません。
たとえば懲役2年執行猶予3年と、懲役3年執行猶予2年は、どちらが被告人にとって有利なのでしょうか? 懲役3年執行猶予5年と懲役6か月(実刑)とは、どちらが被告人に有利なのでしょうか?

ちなみにこの場合は私が考えるに、

まず刑法の条文で、
(刑の種類)
第九条  死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
(刑の軽重)
第十条  主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
2  同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
3  二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。

とあり、
また同じく刑法で、
(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

とあることから、裁判員法67条2項と刑法9・10・25条をあわせて読んで、懲役刑部分のみをとって先に有利・不利を比較し、その上で評決が懲役3年となった場合に、あらためて執行猶予の評決を行う、となるのではないかと思っています(それが条文からは素直ですし、そうしないと実質的にも、有利・不利の判断の客観的基準が不明になってしまいますから・・・)。
しかし、その判断方法では、判断基準は明確になりますが、他方、一般に持たれている「実刑より執行猶予のほうが軽い」という感覚からはかい離するようにも思います(たとえば、「懲役3年執行猶予5年」が、「懲役2年6月(実刑)」よりも重く(=被告人に不利に)なる(3>2.5)が、それは一般の感覚には合わないでしょう)。

この点についても、私は、明確に論じているものをまだ見たことはありません。それどころか、私がこの点をある裁判官に聞いても、「気がつかなかった」と言っていました。なお先日の八王子での模擬裁判評議では上記の私の考え方とは違う評決方法をとっていましたが(実刑意見を執行猶予付き意見より軽いものとして整理していた)、それが意識的なものかどうかはわかりません。

このままでいいのでしょうか、裁判員裁判。日当を決める前に決めるべきことがあるのでは?制度開始はすぐそこに迫っています。

裁判員法:条文
http://law.e-gov.go.jp/announce/H16HO063.html

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2007年7月15日 (日)

裁判員法規則・公布

裁判員法規則が、7月5日に公布されています。

(以下、裁判所HP:規則全文)
http://www.courts.go.jp/kisokusyu/keizi_kisoku/keizi_kisoku_24.html

実は先週の木~金にも八王子で裁判員裁判の模擬裁判(裁判所、検察庁、弁護士会三者によるもの)があったのですが、そこでもいろいろと問題点が見られたように思います(とくに、評議の進め方について)。それらについては別稿でまとめて書きたいと思っていますが、今回の規則との関係でいうと、

(裁判員及び補充裁判員に対する説明・法第三十九条)
第三十四条 裁判長は、裁判員及び補充裁判員に対し、その権限及び義務のほか、事実の認定は証拠によること、被告事件について犯罪の証明をすべき者及び事実の認定に必要な証明の程度について説明する。

・・・この条文をいかに実効性あるものにするか(たとえば、①検察官に立証責任があること(=検察官(被害者)と弁護人(被告人)のどちらが信用できるかという天秤の問題ではないこと)②「合理的な疑い」があれば無罪とすべきこと③「合理的な疑い」という言葉の正確な理解などを、実際に裁判が始まるまでに、いかにして(裁判体による理解のムラがないように!)裁判員に理解してもらうか)が、裁判員裁判の成否の大きなカギを握っているように思います。そしてこれに失敗すると、裁判員裁判は、非公開の評議の中で、単に裁判官の判断に「市民」という錦の御旗をつけるだけ、という、これまでの裁判以上に危険なものになってしまうのではないでしょうか。
ちなみに今回の模擬裁判では、この条文はまだほとんど生きていないように思いました(もちろん、裁判所としては、まだ準備過程だから、といわれるのでしょうが)。

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2007年6月22日 (金)

「更生保護法」成立

ちょっと前の話になりますが、「更生保護法」が可決成立しました。

これまでの犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法を統合し、保護観察の遵守事項に、保護観察官や保護司との面接、生活状況の申告などを明記し、また個別の保護観察対象者に応じて保護観察官が禁止行為を具体的に指定すること・再犯防止プログラム受講の義務付けを可能とすることなどの手当がなされています。そして今までと大きな違いとして、保護観察対象者が遵守事項を守らなかった場合は、仮釈放の取消しや少年院への再収容が可能になりました。さらに、仮釈放等の判断の際に被害者から意見を聞く制度、保護観察対象者に被害者の心情を伝えることができる制度も導入されました

(法案)
http://www.moj.go.jp/HOUAN/KOUSEIHOGO/refer01.html

(以下アサヒドットコム2007年6月8日より一部引用)
保護観察強化で再犯防止 更生保護法が成立
http://www.asahi.com/national/update/0608/TKY200706080061.html
 刑務所から仮釈放されたり少年院を仮退院したりした人たちの「保護観察」の強化を柱とする「更生保護法」が8日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。保護観察中に守らせる内容を明確にし、守らなければ刑務所や少年院に戻らせる仕組みを規定。施設の外で社会復帰を目指させる保護観察の狙いは維持しつつ、「再犯の防止」を強く打ち出した。更生保護法制の大幅な見直しはほぼ60年ぶりとなる。
(以下略、以上引用終わり)

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2007年6月 8日 (金)

冤罪って本当にあるということ・ひどい取り調べって本当にあるということ・やってもいないのに認めちゃうって本当にあるということ

富山で、強姦として逮捕・起訴され、実刑判決を受け服役(!)した後に、真犯人が分かり、冤罪であることが明らかになった事件があります。

その取調べの実態が、今、明らかになっています。私たち弁護士の中では(とくに重大事件と言われる事件を被疑者が否認している場合には)半ば常識であるのですが、なかなか裁判所にも理解されなかった取り調べの実態が、このような残念の事件を通して、ようやく明らかになってきています。

やっていなくても認めてしまう、ということが現実にあることが分かるとともに、
警察が、被疑者供述の信用性判断における「秘密の暴露」を悪用している実態などが、よ~くわかります。

このような事態が明らかになっても富山県警は「言葉で供述を促したことはあったかもしれないが、手首をつかんで誘導させたような事実はない」「故意または重過失ではない」「職務上の義務に反したわけではない」などとコメントし、処分も行っていません。ここまで事情がはっきりしていて(誰が、被害者の部屋の見取り図を知っているのですか。誰が、犯人が「コンバースの靴」を履いていることを知っているのですか。)、そんなわけがないでしょう。

また検察官も、冤罪と分かった直後、「(捜査を担当した)県警の取調官と地検高岡支部の副検事を恨まない」という内容の調書をわざわざ作成しているようです。いったい何を考えているのか。法で定められている「公益の代表者」としての立場はどこへ行ったのでしょうか。

(以下アサヒドットコム2007年6月6日より一部引用)
「取調官に手首つかまれ図描いた」 富山・冤罪男性
http://www.asahi.com/national/update/0607/TKY200706060423.html
 強姦(ごうかん)などで逮捕され実刑判決を受けて、服役後に無実と分かった富山県内の男性(39)の冤罪事件で、男性が入ったことのない事件現場となった被害者の部屋の見取り図が、男性が作製したものとして裁判で証拠採用されていたことが分かった。男性は「県警の取調官に右手首をつかまれて描かされた」と話している。
 裁判の証拠書類によると、男性は02年5月1日に強姦未遂事件、同20日に強姦事件の見取り図を描いた。男性によると、20日は取調官に「肩の力を抜け」と言われペンを持った右手首をつかまれ、「ベッドがこのへんにあっただろう」などと誘導されながら、描かされたという。
 捜査で犯人はコンバース製の靴を履いていたとされていた。男性は「(犯行時に)私が履いていた靴」として、持っていなかった運動靴の絵を、取調官に「星のマークがついていただろう」などと誘導されて描いたという。
 富山県警が被害者の証言と異なる凶器を押収、それが裁判で凶器と認定されたことも分かった。
 強姦事件の被害者は、県警の調べに対して「男はギザギザの刃がついたサバイバルナイフのようなものを持っていた」「後ろ手で縛られたのはチェーンのようなものだと思う」と説明していた。だが、県警が逮捕前の同年4月8日に男性宅から押収したのは果物ナイフ。その後、男性宅の納屋からはチェーンでなく、ビニールひもが見つかった。同年5月23日に検察官が取った男性の調書には「女の子は気が動転していて記憶違いをしている」などと書かれている。
(以下略、以上引用終わり)

(以下毎日インタラクティブ2007年5月29日より一部引用)
富山・強姦冤罪事件:「捜査関係者恨まない」 地検、男性から調書
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070529ddm012040032000c.html
 富山県警に強姦(ごうかん)と同未遂容疑で逮捕された男性(39)が服役後に無実と分かった冤罪(えんざい)事件で、男性が弁護団に対し「冤罪と分かった直後、富山地検から『(捜査を担当した)県警の取調官と地検高岡支部の副検事を恨まない』という内容の調書を取られた」と話していることが分かった。
 富山県警が男性の誤認逮捕を発表したのは、今年1月19日。弁護団によると、その後の同24日、男性は富山地検で、検察官から無罪を証明するための調書を取ると説明を受けた。検察官は県警の捜査員や同地検支部の副検事の実名を挙げ、男性に「恨むか、恨まないか」と質問。男性は無実の強姦事件で取り調べを受けた際の威圧的な態度を思い出し、「恨みません」と答えた。検察官は、その言葉を盛り込んだ調書を朗読し、男性は調書に押印、署名したという。
(以下略、以上引用終わり)

参考:田村譲松山大学教授HP(事件に関する情報がまとめられています)
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/toyamaennzai.htm

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2007年6月 2日 (土)

光市事件・弁護団主張をめぐる議論

光市事件の弁護団主張をめぐって、下記ブログで興味深い議論がされています。
弁護士の内面的葛藤もふくめて、一読の価値があると思います。

元検弁護士のつぶやき「刑事弁護人の主張について」
(2007年5月26日)
http://www.yabelab.net/blog/2007/05/26-104928.php

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2007年5月27日 (日)

刑務所からどこへ行く

先日の日本刑法学会でこのような報告があったようです。
刑務所に送り込むだけ・社会からつまはじきにするだけでは何の解決にもなりません。
事態はかえって悪化し、新たな犯罪・新たな被害を生むだけです。

同じような話はたとえば山本譲司氏(元国会議員)の著書「獄窓記」「累犯障害者」にもあったような記憶があります(いつかこの本についても書いてみたいと思っています)。

(以下アサヒドットコム2007年5月26日より一部引用)
満期釈放受刑者の4割超、「帰る場所ない」
http://www.asahi.com/national/update/0526/OSK200705260041.html
 刑務所からの満期釈放者のうち、30年前には9%だった「帰る場所がない」人が、05年には4割を超えたことが、龍谷大学矯正・保護研究センターの浜井浩一教授の分析でわかった。厚生労働省研究班調査で25日、知的障害がある受刑者の約半数に引受人がなく、生活苦が再犯につながっていると明らかになったばかり。(中略)
 法務省の矯正統計年報を基に集計、26日、名古屋市で開かれた日本刑法学会で発表した。
(中略)1975年の1万1736人について、出所前に尋ねた帰住予定地をみると、「配偶者のもと」が最多で25%、「父母」24%、「更生保護施設」18%、「兄弟」10%の順。「雇い主」も3%おり、「その他」=なし=は9%だった。ところが、年を追うごとに、配偶者、雇い主、更生保護施設の割合が減り、「なし」が増加。05年の満期出所者1万3605人では「なし」が44%で最多に。次いで父母22%、配偶者10%、知人8%。更生保護施設は5%、雇い主は1%に満たなかった。 (以下略、以上引用終わり)

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2007年5月25日 (金)

民間刑務所

今日の毎日新聞夕刊一面に以下の特集が載っていましたので、紹介します。
財政的メリット、過剰収容対策面でのメリットはあるのでしょうが、このような形態の「民間刑務所」の是非については、議論のあるところです。

ところで職業訓練のバリエーションも増えたようですが、それは別に「民間刑務所」でなくてもできたことでは・・・?

(以下毎日インタラクティブ2007年5月25日より一部引用)
民間運営刑務所:スタート 職業訓練多彩に
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070525k0000e040081000c.html
民間の資金や活力を生かしたPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)方式による国内初の刑務所「美祢(みね)社会復帰促進センター」(山口県美祢市)が受刑者の受け入れを始めた。
(中略)同センターは美祢市が地域活性化の起爆剤として誘致した。セコム、小学館プロダクション、日立製作所などでつくる企業グループが05年、法務省と20年間の事業契約を結んだ。運営費を含む総工費は約517億円。“国営”に比べると約48億円節約できる。初犯で懲役8年未満の男女各500人を収容するが、「刑務所という名前に抵抗がある」という声もあり、この名称が採用された。
(中略)職員のうち、公務員である刑務官は従来通り、受刑者の処遇を担当。職業訓練や警備、給食などを民間職員や地域ボランティアが担う。ただ、民間警備員は受刑者を逮捕、拘束できない。脱走などの事態が生じれば、笛を鳴らすなどの警告をしながら追跡し、拘束は刑務官が到着するまで待たなくてはならないもどかしさもある。
 今年10月には「播磨」(兵庫県加古川市)と「喜連川(きつれがわ)」(栃木県さくら市)、来年10月には「島根あさひ」(島根県浜田市)の社会復帰促進センターも開所する予定だ。
(中略)法務省は「PFI刑務所の全国展開は難しく、今後の新設計画は未定。これ以上必要かどうかは改めて検討したい」と話している。
(以上引用終わり)

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2007年5月21日 (月)

裁判員の日当はいくらでしょうか?

答え:裁判員に対する日当は一日最高一万円に決まりそうです。

それにしてもこれも最高裁事務総局、いわゆる裁判所事務方で決めているようですが、「市民が参加する」裁判員制度を標ぼうするのなら、こういうことも市民に分かる制定過程を踏んで決すべきではないでしょうか?

そもそも全国でこの間繰り返されている裁判員模擬裁判(裁判所・検察庁・弁護士会によるもの:私も弁護人役で参加したことがあります。)についても、私の活動している八王子支部で開催されているものは、これまで一般市民には一切公開されていないのですから・・・市民感覚を入れることが目的なら、制度構築過程から(それも初期段階から)、市民の声を謙虚に、真摯に聞く姿勢を示すべきと思います。
2009年5月の裁判員裁判開始まで、もう時間はそれほど残されていません。いったん導入を決めた以上、「失敗」など許されません。ですが、刑事裁判の現場を知る弁護士の一人として正直なところを言えば、不安で一杯です。このままでは、いったいどうなるのだろう・・・

(以下アサヒドットコム2007年2月20日より一部引用)
裁判員、「日当」は上限1万円 最高裁が方針
http://www.asahi.com/national/update/0520/TKY200705190212.html
 重大な刑事事件の裁判に無作為に選ばれた市民が参加する「裁判員制度」の導入に向け、最高裁事務総局は、裁判員に支払う「日当」の上限を1万円程度とする方針を固めた。実際の日当額は、裁判にかかる時間に応じて3~4段階に分ける考えだ。最高裁規則をつくる委員会に23日に諮ったうえで、6月中に正式に額を決める。
 日当には、裁判員になった市民が本来の仕事を休まざるをえないことに対する補償の意味合いがある。(中略)事務総局は、同じように市民からくじで審査員を選んでいる検察審査会に着目。審査員の日当の上限は8000円で、この額を目安に裁判員の日当額を検討してきた。検察審査会では、審査員は長くても6時間ほどの拘束で済んでいる。これに対し裁判員は、事件によって異なるものの、午前9時半までに裁判所に来てもらい、昼食や休憩を挟んで午後5時ごろまで、法廷での審理や有罪無罪と量刑を判断する評議、審理の進め方に関する打ち合わせなどをこなすスケジュールが想定されている。 (以下略、以上引用終わり)

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2007年5月20日 (日)

「運転過失致死傷罪」新設(刑法改正)

 刑法改正により、「運転過失致死傷罪」が新設されました。

 危険運転致死傷罪の適用要件に当てはまらない悪質な交通致死事件について、危険運転致死罪と業務上過失致傷罪との法定刑の差が大きいことから、業務上過失致死傷罪の法定刑引き上げの要請がなされていたことに対する、立法対応です。

(以下毎日インタラクティブ2007年5月18日より一部引用)
改正刑法:成立 「運転過失致死傷罪」新設、最高刑懲役7年
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20070518ddm012010133000c.html
 車の運転による事故の罰則を強化する「自動車運転過失致死傷罪」の新設を盛り込んだ改正刑法は17日、衆院本会議で可決、成立した。今後、スピードの出しすぎや脇見、飲酒など重大な過失により死傷事故を起こした運転者の最高刑は、現行で適用される業務上過失致死傷罪の懲役・禁固5年から、懲役・禁固7年に引き上げられる。公布から20日後の施行で、早ければ6月上旬にも施行される。
 改正対象となる「自動車」にはオートバイやバイクなどの二輪車も含まれている。また、危険運転致死傷罪(死亡時に最高で懲役20年、負傷児童15年)の適用対象となる車に二輪車も加えられた。
(以下略、以上引用終わり)

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2007年5月10日 (木)

責任能力・刑法39条

刑法には、39条という条文があります。被告人の責任能力の減免(心神喪失、心神こう弱)について定めたものです。

最近、この39条は削除すべきである、という論説が見られます。しかし、「学会」的にはあまり重要視されていないように思います。

この規定が精神障害に対する差別であるという指摘とは別に、思うに、この39条廃止論は、昔ながらの刑法理論が、犯罪行為に出るものは自分でそれなりの意思決定をして行為に及んでいるのだから(これを「規範の壁に直面して、それをあえて乗り越えている」などと言います。)、責任非難が可能である(=その場合にはその人を罰することができる)、という擬制を行っていることへの、重大な問題提起を含んでいるように思います。

この提起は、実は、刑事処分、保安的処分、その他刑事的手続の先にあるものの今後あるべき姿まで見据えて、つまり、刑として課される「罰」とは何なのか、なぜ課されるのか(課すことの意味)、そして「罰」のありかたは今のバリエーションだけでいいのか、などの問いかけなどもふまえて、正面から受け止めていく必要があるのではないでしょうか。

「刑法39条はもういらない」(佐藤直樹著・青弓社)「刑法39条は削除せよ!是か非か」(呉智英、佐藤幹夫編著・洋泉社)などを読んでいて、廃止論に今すぐ全面的には同調できないにせよ、そう感じました。

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2007年2月12日 (月)

裁判員裁判映画上映会(明日!)

明日夜7時から、八王子スクエアビル(JR八王子駅北口徒歩すぐ)で、
裁判員裁判の映画上映会があります(八王子青年会議所主催)。

弁護士会多摩支部もこれに協力させていただいており、明日は私も参加の予定です。

お時間のある方は、ぜひお越しください。

八王子青年会議所HP→
http://www.hachioji-jc.or.jp/

<企画要領>

開催日時 2006年2月13日(火) 
     18:30~ 登録受付開始
     19:00~ 開会
     19:20~ 
       <1部> 裁判員制度 DVD上映
     20:30~ 
       <2部> 講演 

開催場所  八王子学園都市センター
       12階イベントホール
        東京都八王子市旭町9-1
        八王子スクエアビル
(地図→ http://www.hachiojibunka.or.jp/gakuen/gakuenn-top.htm )

入場無料  先着順 

内容
<1部>DVD上映
  「もしも貴方が裁判員に選ばれたら」
   ~あなたならどうする~
   中村雅俊(監督・主演)
               
<2部>講演
  (講師)東京高等検察庁企画調査課長
      清水 喜久夫氏

【共催】八王子商工会議所
【後援】東京三弁護士会多摩支部

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2007年1月 2日 (火)

当番弁護士

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、私は今日が働き初めでした。
今日が「当番弁護士」の待機日だったのです。

当番弁護士制度とは、
http://www.toben.or.jp/consultation/arrest/
「交通事故や、暴行・傷害・殺人事件をおこしたり、覚せい剤の所持、外国人の不法滞在などの刑事事件で警察に逮捕された場合、弁護士が、身柄を勾留されている被疑者の方のところに一度無料でかけつける制度」
(以上、東京弁護士会ホームページより抜粋)
です。
毎日誰か弁護士が待機して、警察署などからくる、身柄拘束されている人からの要請に応じて、接見(=面会)に行くわけです(要請者から費用はいただきません)。
接見して何をしてくるかというと、接見して様々な質問に答えまた法的アドバイスを行い、また本人の要望がある場合は、弁護人として選任を受けたりします。

弁護士会で1年中365日待機者が割り振られているので、盆暮れ構わず待機日が当たることもあるのです。これも弁護士に求められる大事な仕事ですから、やむをえないと思っています(家族には、申し訳ない、の一言ですが・・・)。

(なお上記の東京弁護士会ホームページの説明は、昨年10月2日に導入された「被疑者国選弁護制度』に対応していません。
「被疑者国選弁護制度」については、
ウェブ上の情報では、たとえば
「予防法務ジャーナル『そよ風』」
http://www.soyokaze-law.jp/143-2.htm
などがよくまとまっていると思います。)

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2006年10月21日 (土)

検察官の違法取調べ(威迫など)

 こんな事件がありました。

 これくらいの取調べは頻繁に(とくに警察段階では)なされているという印象がありますが・・そして、個別事件でそれに強く抗議をすると、目の前の依頼者(被疑者)に事実上の不利益が及ぶ可能性があるため、やむをえず黙っている(または、ほどほどの抗議でとどめる)ケースも、実際には多いのです。

 今回の記事について、井戸田侃立命大名誉教授は、「被告の夫婦関係を利用した捜査手法は権力をかさに着た脅しともいえる違法な行為だ。もし、妻が隠しどりした録音テープが存在しなかったら、検察の行為は闇に葬られたかもしれない。現在、最高検が、容疑者に対する取り調べの可視化(録音・録画)の効果を検証しているが、今後は、参考人の事情聴取での導入も検討課題になるのではないか」とのコメントを寄せておられます。

 警察官・検察官からの「脅し」「欺もう」は「ありえない」との弁解は法廷でもよくなされますが、そのような弁解はもう聞き飽きた感があります。しかし実際の刑事裁判ではそれらが認定されることなど、ほとんどありません。実感として、「闇に葬られた」ケースは、実際に多数あると思いますが・・
 そして、あわせて解決すべきなのは、このような問題に対する裁判官の認識なのでしょうね。そこさえしっかり機能していれば、まだ少しはましになるように思います。

(以下、読売新聞2006年10月18日より一部引用)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20061018p101.htm
夫の自白説得へ検事が妻に圧力は違法…大阪地裁
 卓球の指導中に女児の体に触ったとして強制わいせつ罪に問われ、高松高裁で無罪判決が確定した高知市の会社員竹内真一郎さん(48)とその妻八恵(やえ)さん(44)が、「1審公判中、担当検事から妻を呼び出され、罪を認めるよう迫られるなどして精神的苦痛を受けた」として、国に慰謝料など440万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、大阪地裁であった。森宏司裁判長は「検事は妻に圧迫感を与えており、当時被告だった竹内さんに、妻を通じて間接的に自白を求めた違法行為で、夫婦の人格権を侵害した」などと認定し、国に慰謝料など77万円の支払いを命じた。
 判決によると、竹内さんは2002年4月に小学校で卓球の指導をしていた女児(当時10歳)にわいせつな行為をしたとして起訴された。1審・高知地裁で公判中の同年11月、担当検事が八恵さんを高知地検に呼び出し、「否認していると、刑務所に入ることになる」などと繰り返し、罪を認めるように竹内さんを説得することを求めた。
 八恵さんはやりとりを録音テープで隠しどりし、検事の発言をそのまま夫に伝えた。
 03年3月の1審判決は有罪だったが、04年6月の2審・高松高裁は「被害女児の証言には信用性が薄い」などとして逆転無罪を言い渡し、確定した。
 この日の判決は、このテープを基に判断。森裁判長は「否認を貫くことが、竹内さんにとって不利益なことと誤信させる内容だった」と担当検事の行為を違法と認定した。
(中略)検事の主な発言は次の通り。
 担当検事 「僕ははっきり言って、本人が否定したままでいっても、全く構わないです。そうしたら刑務所入るだけなんで」「このままだったら、刑務所に入ることになるんですよ」
(中略)担当検事 「本人がやったということは、自分が一番よくわかってるはずじゃないですか」「認めていれば刑務所に入ることもないし、保釈もあったかもしれない」
(以上引用終わり)

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2006年10月20日 (金)

自閉症・発達障害をめぐる2つの刑事裁判

 次の2つの刑事裁判の記事を読んで、刑事裁判における発達障害・アスペルガー症候群・自閉症の扱いについて思うところのある方もおられるのではないでしょうか。
 そのような趣旨で、記事の紹介だけしておきます。

1 (以下毎日インタラクティブ2006年10月19日より一部引用)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2006/10/19/20061019dde001040023000c.html
大阪・寝屋川の小学校教職員殺傷:18歳に懲役12年 地裁「発達障害過大視できぬ」 大阪府寝屋川市立中央小学校の教職員殺傷事件で、殺人などの罪に問われた卒業生の少年(18)に対し、大阪地裁は19日、懲役12年(求刑・無期懲役)の判決を言い渡した。横田信之裁判長は少年の広汎性発達障害が犯行に与えた影響を認めたが、「その影響は過大視できない。結果の重大性などに照らして極めて悪質な事案で、もはや保護処分の域を超えている」と判断し、刑事処分を選択した。
 一方で、横田裁判長は再犯防止などのために障害を踏まえた処遇の必要性に言及、「少年刑務所での適切な処遇を強く希望する」と付け加えた。
(以下略)

2 (以下埼玉新聞2006年10月18日より一部引用)
http://www.saitama-np.co.jp/news10/18/28x.html
自閉症理由に公判停止 所沢の児童暴行事件 弁護団、免訴求める
 所沢市内で小学生児童の頭を殴ったとして、暴行罪に問われ、さいたま地裁川越支部で公判中の県内の男性被告(37)について、曽我大三郎裁判長は十七日までに、中程度の精神遅滞を伴う自閉症によりコミュニケーション障害があり、訴訟能力がないと判断し、公判停止を決定した。これを受けて、弁護側は「訴訟能力の回復はまったく期待できない」などとして、同支部の決定取り消しと免訴の裁判または公訴棄却を求め、東京高裁に抗告した。
 弁護側によると、自閉症を理由に訴訟能力が争われ、公判停止となったのは初めてという。
(以下略)

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2006年9月20日 (水)

司法支援センター・被疑者国選・ガイダンス

今日は弁護士会多摩支部の刑事弁護委員会主催で、会員向けに、「新国選弁護制度ガイダンス」を行いました。私もそこで、新しく弁護士の活動がどのように変わるかということについて、説明役として、少しだけしゃべりました。

この10月から日本司法支援センター(法テラス)が業務を開始し、また刑事弁護の分野では、「被疑者国選」制度がスタートします。つまり、刑事弁護の(よしあしは別にして)新しい時代が始まるのです(大学・大学院などで刑事訴訟法を勉強されている学生さんにとっては、今はきっと、勉強のしがいがある時でしょう・・今、この60年間続いてきた刑事裁判・刑事手続のしくみは大きく変わろうとしています。)。上に書いたガイダンスは、新しい制度が始まるに際して、会員(=多摩支部の弁護士)向けにこれまで開いてきた説明会のうちのひとつです。

刑事裁判は今、時代の大転換期を迎えています。そこには困難もありますが、その時代に立ち会っている人間として、自分なりに責任を果たしたいと思っています。

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2006年9月 1日 (金)

刑務所も民間委託?

 刑務所について、こんな記事がありました。

(以下アサヒドットコム2006年8月30日から引用)
http://www.asahi.com/national/update/0830/TKY200608290387.html
新設2刑務所、受刑者監視など民間委託へ 法務省方針

 法務省は、国が建設する刑務所での受刑者の動静の監視など業務の一部を民間委託する方針を決めた。来年秋にも収容を始める喜連川(きつれがわ)(栃木県)、播磨(兵庫県)の両刑務所で始める。刑務所の過剰収容で看守の手が足りなくなる一方、政府の行革方針で大幅な人員増は難しいことから、民間委託で浮いた人手を看守業務に回す狙いだ。
 全国の刑務所では03年度から今年度までに、食事の提供や電話交換など公権力の行使にあたらない849人分の仕事を民間に委託してきた。
 しかし「小泉改革」で公務員総人件費の削減が掲げられ、先の通常国会で成立した行革推進法などには、刑務所などでさらに民間委託を検討する方針も盛り込まれた。
 このため法務省は、規制を緩和する構造改革特区制度を利用して、新設する二つの刑務所で、受刑者の監視や警備、職業訓練、手紙の検査の補助など233人分の仕事について、民間委託することにした。
 法務省は来年度の概算要求に計1082人分の仕事の民間委託費として約34億円を盛り込んだ。
 喜連川刑務所の収容定員は約2000人、播磨刑務所は約1000人。運営業務の約3割を民間に委託することになる。
(引用終わり)

 このブログで再三、「国は必要なところに人とお金を出すべきだ」といい続けていますが、今回の記事は、それとは逆行するような話です。

 最近は公務員人件費の削減がブームのようになっていますが、もう一度、削減してはいけないところ(原辰徳風に言えば「聖域」)はないのか、考えてみる必要があると思います。

 先の「耐震強度偽装マンション」問題では、偽装の一因として、イーホームズなどの民間検査機関による建築確認審査の問題性(=手抜き審査の横行)が強く指摘されました。
 あの問題と今回の問題は、一見まったく関係なさそうに見えて、実は強く深くつながっている問題だと思います。何でも民間に委託すればいい・何でも市場にゆだねればいい、というものではないのではないでしょうか。

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2006年8月31日 (木)

「接見させてよ」

 刑事弁護人(=弁護士)は、拘置所・留置所で、捕まっている被疑者・被告人(=捕まっている人。起訴される前が「被疑者」、起訴された後は「被告人」と、同じ人でも呼び方が変わります。うーんややこしい。)と接見(=面会)します。

 この接見で、被疑者・被告人と弁護士は、事件その他に関する聴き取りや打ち合わせをします。ドラマなどで、捕まっている人と弁護士がガラス越しに面会している、あれのことです(ところで最近のドラマは、接見室の様子を、かなり正確に再現していると思います)。

 この弁護人の権利(究極には被疑者・被告人の権利)=「接見交通権」は、被疑者・被告人の弁護を受ける権利の根幹をなすものですから、捜査機関はそれを基本的に妨げてはなりません。

(法律上の根拠は刑事訴訟法第39条第1項、同第3項:裁判例としては、最高裁昭和53年7月10日判決(民集32・5・820)、同平成3年5月10日判決(民集45・5・919)、広島高裁平成9年12月26日判決(判タ979・104)、東京高裁平成11年3月23日判決(判タ1001・294)など)

 しかし実際の現場では、「接見させろ/させない」とやりあうときがあるのがまだまだ現状で、ときに接見させなかった・または十分な接見時間を与えなかった場合、弁護人は、今後のそのような不当違法な自体を抑止するためにも、あえて国を相手に賠償請求訴訟をすることがあります。

 以下の報道は、そのような「接見妨害国家賠償請求訴訟」に関するものです。

(以下アサヒドッドコム2006年8月29日から引用)
http://www.asahi.com/national/update/0829/TKY200608290295.html
被告と弁護人の接見「3分だけ」は違法 国に賠償命令

 東京拘置所に勾留(こうりゅう)された被告との接見時間を拘置所側が3分間に限ったのは違法として、被告の弁護人が国に賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。中村也寸志裁判長は「社会通念上、相当な接見時間を確保せず、弁護人の円滑な職務遂行を妨げた」と違法性を認め、請求通り10万円の支払いを命じた。
 判決によると、弁護人は昨年10月、恐喝などの罪で起訴された男性と接見するため拘置所を訪れた。受け付けは午前の締め切り時刻の11時半までに終えたのに、男性が接見室につれてこられたのは11時57分。面会終了時刻の正午まで3分しか会えなかった。
 国側は、拘置所が工事中のため「連行には20分以上かかる」と主張したが、中村裁判長は「担当職員に事務処理上の不手際があったと推認されるし、そうでなければ拘置所の体制自体に問題がある」と指摘した。
(引用終わり:なお下線は私が付したものです)

 確かに3分では何もできない・・体調を聞いて終わりですね。

 

 さて、接見させない/接見時間が短く切られる理由の多くに、「施設管理上の問題」があげられます。面会時間切れとか、人手不足により対応できないとか、そのような理由です。

 現場を見ていると、確かに施設管理は大変だろうなあと、正直思わず同情したくなることもあります。

 しかしそのようなときでも、やはり各事件の接見は確保されなければなりません。

 問題の解決は予算・人事面の充実により解消すべきものです。
 接見交通権を巡る賠償命令判決は、各留置係官や拘置所職員に向けられたものというよりは、あるべき場所に予算や人をつけない国に向けられた問題というべきかもしれません。

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2006年8月10日 (木)

判決より長く刑務所に入るところだった話

 こんなこともあるんですね‥

(2006年8月7日東京新聞より引用)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006080701004876.html
刑期誤記のまま判決確定 大阪、裁判官を厳重注意

 大阪地裁の裁判官(54)が法廷で、恐喝未遂罪に問われた男性(59)に懲役1年2月の判決を宣告したのに、判決書に「懲役1年6月」と誤って記載し、そのまま最高裁で確定していたことが7日、分かった。
 検察当局が気付き、検事総長が確定判決のミスを是正する「非常上告」を申し立てたため、男性は誤って長く服役することはなかった。

(以上引用終わり)

 裁判官にとっては、1年2ヶ月でも1年4ヶ月でも、その差2ヶ月は、意識するに足りる期間の違いではなかったのでしょうか。

 裁判官や検察官、ときに弁護士など同業者を見ていて失礼ながら感じることがあるのは、懲役とか勾留とか、人の「身柄」(この言い方も、人を人として見ていないような語感がしてあまりよくないように思います)を拘束することに対する感覚の鈍磨です(もちろん、全員ではありません)。

人が1日でも拘束されるということが当人の・または家族の人生にどのような影響を与えるか、その影響が「自業自得」と言い切れるものばかりか、時に感覚の違いを感じざるを得ないことがあります。

 私たち法律家は毎日毎日多数の裁判にかかわっているので、きちんと心がけておかないと、一つ一つの事件の裏にある「人の生活(または、人生)」を感じる力が鈍る危険があります。そのことを忘れないようにしないといけません。今回のこの事件も、裁判官をただ非難するだけでなく、教訓としないといけません。

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2006年8月 5日 (土)

「違法収集証拠」に関する地裁判決

 以下のような刑事事件判決がありました。

(2006年8月3日読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060803i214.htm
「違法捜査の尿鑑定書、証拠能力なし」と無罪判決
 覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた男性被告(41)に対し、宇都宮地裁(池本寿美子裁判官)は3日、「違法捜査に基づく尿の鑑定書の証拠能力はない」として無罪(求刑・懲役2年)を言い渡した。

 判決などによると、男性は2005年1月25日、栃木県大田原市のモテルから警察官4人に警察署に連行され、尿鑑定で覚せい剤反応が出たため、同日逮捕された。

 判決は、連行時の警察官の行為について、「激しく抵抗する男性の両腕をつかんで強制的に連れ出し、約20メートル引きずって警察車両に乗せた」とし、任意捜査の範囲を超えているとした。

(以上引用終わり)

 捜査に違法があったが犯罪があったこと自体には争いがない場合、有罪とするか無罪とするかは、違法捜査の抑止と刑罰の要請とのどちらを重視するか、で結論が分かれます。
 裁判例では、最高裁第2小法廷判決平15年2月14日(http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=25200&hanreiKbn=01)などがあります。

 参考として、この最高裁判決に関する大阪経済法科大学の中川孝博助教授のネット上の論考のURLも貼り付けておきます。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakagawa1015/0355610hanrei005.htm

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2006年8月 4日 (金)

公判前整理手続(2)

 以前7月6日のブログで「続編」を予告しつつ、そのままになっていた「公判前整理手続の問題点」について、今日は書いてみたいと思います。

 この手続の最大の問題点は、この手続のスケジューリングです。もちろん手続上さまざまな問題がありますが、それらはほぼ、このスケジュールの問題から派生するように思います(ほかにも理論的問題などがあるのですが、ここでは省略します)。

 ある事件では、
①専門家証人・目撃証人の尋問期日②被告人質問期日③論告・弁論・判決(!)期日の3期日が、3日間連続で開廷され、
うち、②期日は終日実施で20時05分まで行われた後、
弁護人はその日そのまま自分の事務所で、被告人質問の内容(=弁護人のうち1名がノートPCで速記したそうです)を受けて、弁論(=判決に向けての弁護人の意見書:なお「論告」は、検察官作成の、判決に向けた意見書:いずれも手続上、作成する必要があるもの)の作成に入り、
午前4時過ぎまで弁論作成を行い、
翌日午前10時からのの弁論期日に間に合わせたそうです
(なお裁判所は、午前中に論告・弁論を聞き、16時30分に判決宣告をしたそうです)。

 また別の事件では、
国選弁護人(3名)選任後、
約100日の間に合計13回の裁判所との打ち合わせ(週1回ペース)が行われ、
また第1回公判~判決期日までの1ヶ月間で8回の公判期日指定がされたそうです(この中には、4日間連続の期日もあり)。

 そしてもちろんそれぞれの事件の弁護人は、その数ヶ月間、深夜・休日も関係なく働き、サボっていたとは到底いえない状況だったと思われます。

 

 さて、このような期日設定には、到底無理があります。このような実例を見たら、今後公判前整理手続事件を受任する弁護士はほとんどいなくなるでしょう。

 

 と言っても、弁護士業務の実情をお話しないとご理解はいただけないと思うので、なぜ無理があるのかを、以下に書きます。

 刑事弁護人になる弁護士は、もちろんその事件以外にも、業務を抱えています。
 そして、このような期日設定では、ほかの業務は回りません(ほかの事件の依頼者さんも、それぞれ深刻な悩みをかかえてこられているので、「公判前整理手続だから・・」という理由で待たせるわけにはいきません)。
 それではほかの事件をやめて、このような刑事事件のみに集中して弁護士事務所経営が維持できるか(=事務所賃料を払い、事務員の給料を払えるだけの収入が確保できるか)を考えると、
現在の国選弁護報酬の金額では、それは到底不可能です(具体的に言うと、時給計算すると、学生アルバイト並になることすらあります)。
私選弁護で相応の報酬を支払える被告人も、ほとんどいませんから、私選弁護の収入に期待するわけにも行きません
(なお、マスコミに出るような重大刑事事件の弁護活動は、費用は弁護士の持ち出し(本人は報酬をほとんど払えないので)で、刑事弁護に対する弁護士としての使命感のみを支えに行っている例が、多く見られます。このような実態はほとんど知られていないのではないかと思います。私も、自分が弁護士になるまで知りませんでした)。

 このような弁護活動・弁護士業務の実態を考えると、このような期日設定では十分な活動は不可能でしょうし(その期間は公判前整理手続中心に業務を行い、その結果刑事法廷が円滑に回っても、ほかの事件の依頼者には多大な迷惑をかけ、結局その弁護士がその後の対依頼者の信頼を失うことになります)、制度の円滑実施を阻害することにもなると思われます(公判前整理手続が円滑に実施できないということは、それを受ける裁判員裁判も円滑に実施できないということになりますので、看過できません。)。

 ただでさえ、刑事弁護をやる弁護士は一部に限られる傾向があります。そのような中、刑事弁護に熱心な、そして誠実な弁護士を、つぶしては/または刑事弁護から遠ざけてはなりません。そのためには今後の制度改善が絶対に必要ですし、その改善のためには、個別事件の各弁護人が、それぞれ十分な制度理解の下、裁判所と折衝を行っていく必要もありますが(ここまで述べてきたことが弁護士側の単なる「言い訳」と取られないためにも)、
制度設計者・報道関係者その他の関係各方面にも、このような現場の実態をご理解いただいた上で、各方面の協力の下、「持続可能な公判前整理手続」を目指して行きたいものです。制度はあくまで「人間」が動かしていくものなので・・

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2006年7月28日 (金)

「代替刑」「自宅拘禁」法相諮問

 下記引用のような記事が出ています。

(アサヒドットコム2006・7・26)

http://www.asahi.com/national/update/0726/TKY200607260669.html
「代替刑」や「自宅拘禁」など法相が諮問

 この記事によれば、「刑務所や拘置所に収容する代わりに、社会奉仕命令などの「代替刑」を科せるようにして社会復帰を促進したり、被告人を保釈しやすくしたりして被告人の権利を向上させる狙い。「厳罰化」だけに振れすぎた現在の刑事政策を抜本的に見直す形だ。ただ、新たな人権問題につながる恐れもあり、法制審の議論には時間がかかりそう 」だそうです。

 代替刑としては、①自宅拘禁(対象者への全地球測位システム(GPS)の装着などが議論になりそう、とのこと)②社会奉仕活動(罰金を払えなかった人を対称にすることが想定されているようで、道路清掃や老人ホームでの作業などの義務づけは、20カ国以上で実施されているとのことです。③「ハーフウェーハウス」(鍵のかかる専用拘禁施設)などの中間処遇④特に再犯の恐れが高い薬物・性犯罪者に、裁判所の命令に基づいて教育プログラムの受講や治療、血液検査などを義務づけること、などが想定されているようです。

 現状の刑事政策は中間処遇的なものが乏しく、処遇の選択肢に限りがあるという点の悩みはあるので、その打開策になる期待をもちます。しかしこれが安易に検討されると、あらたな不当処遇を生む可能性もあるので、慎重な検討が必要でしょう。 

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2006年7月21日 (金)

「更生保護」

 下記引用のような記事をみつけました。実刑での服役を終え出所したものの住まいも仕事もなく、再び刑務所に入ろうとして、110番で「15年ぐらい前に、札幌・ススキノのソープランドで知り合った女性を、静岡県の日本平付近の山林で首を絞めて殺害した」とうそをついた人がいる、という事件です。

 さて、実刑判決を受けて服役した人が刑期を終え出所しても、その更生をサポートする「更生保護」(法務省HP:http://www.moj.go.jp/HOGO/hogo01.html、更生保護事業法:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H07/H07HO086.html)は、現場で苦労されている方はおられるものの、全体としてきわめて不十分なのが実情です。

 また社会の理解としても、今ちょうど上戸彩さんのポスターが街中にはってあり「社会を明るくする運動」の実施中ですが(http://www.moj.go.jp/HOGO/hogo06.html)、この運動がどういうものかをご存知の方も、実はそれほど多くないのではないでしょうか。

 しかし、前科を持つ人間に対する、社会復帰のための、偏見のない・また厄介払いしない、十分なサポートは、刑事事件の現場では、切実に必要とされています。

 なおつい先日7月15日の毎日新聞でも、この問題について論じられていました(http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kaisetsu/news/20060715ddm004070094000c.html)。 ここでは更生保護制度の見直し検討の法務省有識者会議が法相に提出した最終報告書がとりあげられています。
 その報告書では「更生保護の人的・物的体制は不十分で、民間の保護司に過度に依存し、再犯防止という目的を十分果たしていない」との批判がされ、「・保護観察対象者に保護司らの訪問を受け入れる義務を課す・順守事項を守らない対象者の仮釈放や執行猶予を取り消す・一定期間、更生保護施設に宿泊させて処遇プログラムを受けさせる『居住指定制度』を導入する、などの保護観察強化策」が提案されているようです。この報告書の全文を読んだわけではないので評価は留保しますが、ただ再犯してしまった人たちを見ていて思うに、問題は更生保護に人もお金も十分に投入されていないところにあるのであって(この点で、「人的・物的体制は不十分」という上記報告書の評価はあたっていると思います。そういえば先日の児童養護施設の記事でも同じような話をしましたね・・)、現状の更生保護をめぐる問題の本質・再犯防止のためにまずとるべき対応策は、保護観察対象者などへの強制力の強化、という方向ではないように思います。

(以下引用:東京新聞2006・7・19)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006071901004716.html
刑務所望み「人殺した」 生活苦で虚偽申告の男逮捕
 「人を殺した」とうそを言って刑務所に入ろうとしたとして、警視庁捜査1課と大崎署は19日、軽犯罪法違反(虚偽申告)容疑で住所不定、無職の男(52)を逮捕した。

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2006年7月10日 (月)

「取調べの可視化」

警察、検察による刑事事件の取調べは、取調官(警察官、検察官)と被取調者以外は立ち会わない「密室」で行われています。

そして、そこで作成された「供述調書」などの資料は、刑事裁判に証拠として提出されます。しかし法廷では、その証拠を裁判所で採用してよいかどうかを決めるときに、「あの調書は脅されて/騙されて作成した」「言っていないことが調書になっている」といったトラブルが後を絶ちません。

このようなトラブルを防止するには、取調過程をすべて録画録音し、取調べのやり方を事後的に第三者が検証できるようにする必要があります。事後的チェック効果だけでなく、これにより取調べのやり方に対する抑止も働くと思われ、トラブルの事前予防効果も期待できます。これを、「取調べの可視化」といいます。

日弁連などによる「取調べの可視化」実現運動をうけ、このたび検察庁は取調べの一部を試験的に録画するとの方針を発表しました(下の記事はその実施方法に関するものです)。

しかし取調べは警察で始まるものがほとんどで、検察庁での取調べは、警察で作成された調書の確認的意味合いが強く、可視化するのであれば、警察段階の取調べから含めて捜査の全過程を録画録音しなければ実効性がないと思われます。

近く迫った裁判員制度実施をみすえても、この問題は後回しにはできません。取調べの可視化について、警察段階の取調べから含めて捜査の全過程の可視化に向け、さらに前向きな議論が早期に進むように願っています。

(以下引用:日経ネット2006年7月3日)

NIKKEI NET
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060703AT1G3002T02072006.html
容疑者取り調べでの録音録画、検察の実施概要判明
 法務・検察当局が試行する、取り調べ過程の一部の録音・録画について、具体的な実施方法の概要が2日、明らかになった。2台のビデオカメラで、容疑者と取調室内の様子を同時に収録。両方の映像を一画面で見られるように記録する。映像・音声は後から編集できないように、一度だけ書き込み可能な媒体に保存する。

 録音・録画の対象は、一般市民が審理に参加する裁判員制度の対象となる殺人や放火などの重大事件。最高検を中心に検討し、必要性があると判断した東京地検が担当する事件で近く試行を始める。 (07:00)

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2006年7月 6日 (木)

公判前整理手続(1)

昨日は夕方5時半から8時過ぎまで、弁護士会多摩支部で、刑事弁護委員会主催での研修会を行いました。研修内容は「公判前整理手続」。公判前整理手続を実際に体験された弁護士を講師に招き、この新しい制度の勉強を行いました。

法律もどんどん変わるので、弁護士も常に研鑽を怠ってはならないのです。そこで新しい制度・法律については、このような研修が随時行われています。

さて、「公判前整理手続」とは、昨年11月1日に施行された改正刑事訴訟法(そのうち316条の2~316条の32)で新たに設けられた、刑事裁判に関する新しい手続です。裁判員裁判の導入を見据えて導入されたといわれていますが、制度の利用は裁判員裁判に限られるわけではなく、さっそくたとえばかのライブドア事件(堀江氏の裁判)などで用いられています。なので、テレビ・新聞などを注意してみていれば、この言葉を目にされる機会もあることでしょう。

この手続の導入の目的は、公判(刑事裁判)の迅速化・効率化、といえます。

これまでの刑事裁判は、事件が発生し、「犯人」(もっとも、この時点では無罪推定が働いていますので、「犯人」といわず、「被疑者」といいます)が逮捕され、捜査が進んで1ヶ月弱で起訴されて、その後1ヵ月半くらいあとに入る第1回公判まで、裁判所は「起訴状」(検察官が、これこれの犯罪事実により被告人を罰すべきだ、として裁判所に提出する書面)しかみることができませんでした(これを講学上、「起訴状一般主義」と呼んでいました(刑事訴訟法256条6項)。)。検察官が調べ、まとめた証拠(たとえば証人の供述調書など)は、第1回公判後に裁判所に提出されて、そこではじめて裁判所が見ることができるものでした。 これは、裁判所が被告人(それまでは「被疑者」と呼ばれていましたが、起訴されると同じ人の呼ばれ方が「被告人」に変わります)に対して不当な予断を持たないようにするためでした(証拠とされているものをみたら、きっと普通の裁判官は、その被告人は有罪だ、と最初から疑ってかかってしまうでしょう。しかしそれでは、無実の人が有罪とされてしまう危険がいちじるしく高まります。)。

それに対して、今回の「公判前整理手続」は、起訴後第1回公判前に、検察官・弁護人お互いがそれぞれの主張や証拠を見せあって、第1回公判前に裁判上の争点やその後の裁判の進行をはっきりさせよう(裁判はそこではっきりした「争点」を中心に進めよう)、という制度です。そしてこのやり方では、裁判所は第1回公判前から、起訴状以外のものを見ることができるようになりました。

一見刑事裁判が迅速に進むように見えるのでいいのではないか、とも思えるのですが、この制度にはさまざまな問題点もあるようで、制度を一概に否定しないにしても、その運用は慎重に行う必要がありそうです。

その問題点については、次回以降に続きます。

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