仕事の合間に、梯剛之著「いつも僕の中は光」(角川書店)を読了しました。
ピアニスト・梯剛之公式サイト
http://kakehashi-takeshi.com/JA/index.html
初めて彼のことを知ったのは、実家でNHKを見ているとき、たぶん、この本の中にも出てくるショパンコンクールの時のドキュメンタリーだったのだろうと思います(そのときは何の気なしに見始めたので、正直よく覚えていません)。その番組中で彼の演奏を聴き・見て、心の底を揺さぶられるような感覚に襲われました。技術的に彼がどうなのかは私にはよくわかりませんが、ただ今でもこの不思議な感覚を覚えています。
私事ですが、私の母・姉は音大でピアノを先行しており、私の実家には昔から常にピアノの音が響いていました。母は私にもピアノを習わせようとしたのですが、私はそれに反発し、幼稚園頃からは、一切やりませんでした。熱心だった母には申し訳ないと思いますが、私にとってはその後もクラシック音楽というものは「義務感」を感じさせるものでありつづけ、意識的に自分のエリアから遠ざけてきました。私にとっての音楽は、ロック・ジャズでした。
そんな私の心情もいつの間にか変わってきて、徐々にクラシック音楽を素直に聴けるようになってきました。今思うと、先のドキュメンタリーのころからのように思います。
この本を読み終わった後、仕事で出かけた先で、目を閉じて、耳から聞こえる音を全身で感じ取ろうとしてみました。雨が傘に当たる音、風、人の声、ざわめき、車の音、立ち止まって今自分がここにいるということを体全体で感じ、喜ぶということを、私たちはつい忘れてしまうように思います。すぐれたクラシック・またはすぐれた音楽というものは、その喜びを感じさせてくれるからこそ、素晴らしいのではないでしょうか。で、私はたぶん先のドキュメンタリーからそのような喜びを感じて、クラシック音楽に素直に浸り込むきっかけをつかめたのだろうと思います。