2010年5月20日 (木)

生活保護受給者の自己破産予納金(管財予納金含)、立替え可能に!

なかなか更新できず、ご心配をおかけしました(誰も心配してないって)。

さて、本日は多重債務者支援に取り組む弁護士向けのニュース。

法テラス(http://www.houterasu.or.jp/)で、生活保護受給者の自己破産予納金を立て替えることが可能になったとのことです。
具体的には、官報広告費用10,290円、管財人費用20万円の立替が可能になりました。

とくに管財人費用20万円については、これが積み立てできずに破産申立ができず止まってしまうケースがあったので、実務上非常に大きな意味のある運用変更です。

なお2010年4月1日援助決定分から運用開始とのことです。

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2009年12月 9日 (水)

「債務整理ビジネス」と「広告規制」と「弁護士自治」と「品位」とその他あれこれ

以下の報道を見ました。ちょうど昨日、消費者分野でご活躍の某弁護士とも、このような話をしていたところでした。

私も、派手に広告をしている「債務整理専門事務所」に依頼された方で、過払金だけしっかり回収してあとは「連絡がつかない」「弁護士費用の分割が滞った」などとしてあっさり辞任されてしまい、かつ弁護士介入中からその後の生活再建のための適切な指導・支援をしてもらえなかった結果、ぐちゃぐたの状態になって最後に私のところに来たというようなケースを、これまで複数経験しています。
過払い回収だけ受け、ヤミ金は受けず、また弁護士費用の無理な分割支払いを強いているような事務所もあります。弁護士が直接応対しない(依頼のの最初に顔を出して、まさに名刺を渡すだけ)なんて、ざらにあります。

そういう事務所による事件処理の結果として、その事務所を放り出されて私のところに来たときには、手もとにまったくお金はなく借金は残り、借金を消し生活を立て直そうにも破産手続(とくに管財手続)の費用が出せず(本当なら回収された過払い金が使えたはずなのに…)、さらに「弁護士費用の分割払いのために」ヤミ金にまで手を出した(←実話)など、事案がぐちゃぐちゃになっていて、解決への道筋をつけるのが非常に困難な状態になっていることもあります。
そんなときには本気で怒りを覚えるのですが、そんな事務所の広告を電車・バスなどで見てしまうのも、また今の弁護士広告の現実です。なので私も、今回の報道で提起されたような広告規制には慎重であるべきと思うのですが、「気持ちはわかるよ」とつい言いたくもなるのです。

今日の別の報道では、「弁護士の品位」が問題となっているものもありましたね。その記事で提起されている「ビジネスモデル(?)」の当否はさておき、情緒的な話ではありますが、とくにここ数年、そしてとくに債務整理分野で、「弁護士の品位」を考えさせられることがあります。

私が弁護士登録をしたころはまだ今ほどの「過払いバブル」はなく、サラ金・商工ローンもまだまだ、無理な貸し付けと、横柄・乱暴な取り立てをしていました。そんな業者と電話口で怒鳴りあいの喧嘩をしたこともありましたし(ちなみにこのころガラが悪かった会社から順々に、その後、倒れていきました)、ヤミ金が事務所に乗り込んできたとか、消防車が呼ばれたり頼んでもいない特上寿司が頼まれたり、という話も、よく聞きました。そんな中で相手方と対峙し、また依頼者に辛抱強く向き合い、被害者救済と生活再建支援に奔走するのが債務整理事件というものだと、私は勉強してきましたし、人権擁護・社会正義の実現の担い手(弁護士法1条)という弁護士業務の実体法上根拠のもとで考えても、弁護士が債務整理事件にかかわる大きな意味ないし必要性は、そこにあると思っています。この分野の先輩たちもきっとそう思われてこの分野を切り開いてこられたのでしょうし、だからこそ下記の記事のように、現状への怒りもまた強いのでしょう。そのような苦労を知らずに「新しいビジネスモデルの成功例」と称してこのバブルの恩恵のみをガツガツ享受している弁護士・司法書士も多いと思いますが、そういうのって、弁護士法1条や懲戒請求・広告規制などの抑制方法をいろいろ考える以前の直観的なレベルの話で、まさに「品位」がない。本当にいい加減にしてほしいものです。

参考:平成21年7月17日日弁連理事会議決「債務整理事件処理に関する指針」
http://www.nichibenren.or.jp/ja/jfba_info/rules/pdf/kaisoku/kisoku_no_81_1.pdf
↑こんなものも本当は不要で、むしろ弊害もあると思うのですが、上記の状況を考えると…。

参考:弁護士法
(弁護士の使命)
第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
(弁護士の職責の根本基準)
第二条 弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。

(以下アサヒドットコム2009年12月7日より引用)
債務整理ビジネスに「悪徳弁護士も」 対策協など批判
http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200912070306.html

 多重債務問題に取り組む「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」などが、債務整理をビジネスにする弁護士らが「二次被害」を生んでいるとの批判を強めている。11月29日には弁護士らの「単独の広告の禁止」を求める決議をした。00年に自由化された広告の規制をめぐる論議になりそうだ。
 貸金業者が利息制限法を超える「グレーゾーン金利」で取っていた過払い利息の返還請求は、06年1月の最高裁判決を機に急増。消費者金融専業主要7社の06年4月から09年9月までの利息返還額の合計は約1.4兆円に達し、司法界に「特需」が発生した。
 しかし、同協議会などには「多額の報酬を求められた」「弁護士本人が直接面談しない」「本人の生活再建の視点が全くない」などの苦情が寄せられている。弁護士らによる利息返還ビジネスの所得の申告漏れも発覚している。
 決議は「都市圏を中心に弁護士らの債務整理広告が氾濫(はんらん)しており、多重債務者の窮状につけ込んで集客している」と批判。弁護士会などの団体によるもの以外の弁護士・司法書士、事務所の単独の広告を禁じるよう求めた。
 日本司法書士会連合会も「自らの利益追求のみに走る弁護士や司法書士が一定数存在する」と認め、指針作りに乗り出している。
(以上引用終わり)

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2009年10月 7日 (水)

東村山「これで撃退!悪質商法」イベントのお知らせ

弁護士会多摩支部はこのたび、東村山市・東村山市社会福祉協議会との共催・東村山市後援で、10月31日にイベント「私はダマされない! これで撃退!悪質商法」を開催します。

 日時:平成21年10月31日(土)
    開場 13:00 開演 13:30

 場所:東村山市地域福祉センター(1階)
    地域福祉活動室
 
 ※先着80名・入場無料

悪質商法について、警察官からのお話(振り込め詐欺)、消費生活相談員からのお話(消費者被害)の他、私も弁護士の立場からお話をする予定になっています。そのほか、市民劇団の寸劇などもあり、それらを通じて皆様に悪質商法や消費者被害の防止について考える機会として頂ければと思います。
ぜひ、ご来場下さい。

(会場:東村山市地域福祉センター)
http://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/~kakukaweb/026100/hokenjyo2.htm

(参考:弁護士会多摩支部HP)
http://www.tama-b.com/1031koreisha.pdf

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2009年10月 6日 (火)

多摩・消費者被害110番(臨時無料電話相談)のお知らせ

弁護士会多摩支部では、10月30日(金)、31日(土)の2日間、商品やサービスに関する契約などで被害にあわれた方のために、弁護士による無料電話相談を行います。

期間、電話番号は下記の通りです。

 「消費者被害110番」開設期間
  10月30日(金)~31日(土)
   10時~16時
 電話番号 042-548-5588

聞いてみたいことがあれば、弁護士に電話するようなことかな…などと悩まれずに、まずはお電話下さい。

(参考:弁護士会多摩支部HP)
http://www.tama-b.com/1030shohisya110ban.pdf

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2009年10月 5日 (月)

10/3TBS「報道特集NEXT」、民法改正問題等

10月3日(土)、TBS「報道特集NEXT」
http://www.tbs.co.jp/houtoku/onair/20091003_2_1.html
で、先日お伝えしたインプロトテレコム社被害
http://lawyer-m.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-fe6b.html
について、特集されました。

私は当日見ることが出来なかったので録画で見たのですが、
問題状況をわかりやすく伝えていただいていると思います。
機会があれば、ぜひご覧下さい。

さて、今、読みそびれていた
内田貴著「債権法の新時代~『債権法改正の基本方針』の概要」(商事法務)をようやく読んでいます。
今議論されている債権法改正では、この本でも書かれているように、
「ファイナンスリース」の典型契約としての類型化のほか、
民法上の「人」概念の見直しや消費者契約法の拡張など、
今回の問題にも直接関わる諸問題が議論されています。

内田氏は、この本の中でも再三「市民」の視点に立った改正」を力説されています。
その視点で改正するなら、安易に「市民」という言葉に寄りかからず、真に「市民」の視点に立ち、紛争の実態に適合した適用が可能な改正であってほしい、という感想を持ちます。
「市民」には、いろいろな人間がいます。「市民」でくくれる人間など存在せず、「合理的一般人」など存在せず、現実には、同じ一人の人間が、それぞれの紛争局面でいろいろな姿を見せるものです。たとえば今回の問題でもなされると思われる、「事業者」「消費者」がきっちりと分かれる、などという見解は、紛争実態や生活実態に照らしてみれば、非常にナンセンスです。民法解釈の時代は、既に、新しい時代に移りはじめているのだと思います。

なお同じことは、たとえば刑法での「故意」判断、「責任能力」判断などでも感じます。同じことが、いろいろな場面で形を変えて問題になると言うことですね。

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2009年8月29日 (土)

報道紹介&多摩地域の消費者事件に対する地域の弁護士のかかわりについて

以下の各報道をご紹介します(テレビ報道もされたようです。)。
問題となった会社が多摩地域に支店を持ち営業活動をしていたこともあり、多摩地域にも多数の被害者がいる事件です。

多摩地域は、広く、また高齢者も多く、かつ交通網的には営業活動が及びやすい地域でもあることなどから、消費者被害が多数発生しやすい要素を多数持っている土地柄です(今回の事件被害者は「大家さん」ですが、現場を見、事情を実質的に見ると、これも間違いなく「消費者」事件と言えるでしょう。)。そして、多摩地域のとくに奥のほうの地域の被害者は、弁護士へのアクセスも困難で、また消費者事件対応に慣れた弁護士もまだまだ十分にいるとは言えないことなどの事情も影響して、被害が埋もれがちな環境にもあります。したがって、すでに起きた今回のような事件の解決支援も重要ですし、また今後同種の事件が起きないようにするための予防的活動が、多摩地域の弁護士・弁護士会多摩支部にも強く求められるところです。

(以下読売新聞2009年8月28日より引用)

「負担ゼロでネット整備」実際は高額、と提訴へ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090827-OYT1T00599.htm

 アパートやマンションの経営者(家主)らが、訪問販売業者から「費用負担をしないで、入居者がインターネットを使えるようになります」と勧められてクレジット契約などを結んだものの、実際には高額の費用負担を求められるケースが相次いでいる。
 被害対策弁護団には首都圏を中心に相談が相次いでおり、うち26人が業者などを相手取り、計約5800万円のシステム購入代金返還や債務が存在しないことの確認を求めて28日、東京地裁に提訴する。
 問題となっているのは、「インプロトテレコム」(東京)が販売したネット利用システム。訴えによると、光ファイバーを使ったNTT東日本のブロードバンドをアパートなどに引き込み、各部屋に配線する仕組みで、26人は2005~06年、インプロトテレコムの訪問販売で、金融サービス会社「GEフィナンシャルサービス(GE)」(同)と約70万~560万円のクレジット契約を結んだ。
 家主らはインプロトテレコムから、〈1〉関係会社の「インプロトホーム」(東京)が入居者への勧誘を行い、ネット利用料も徴収する〈2〉インプロトホームから毎月、クレジット払い相当額を家主に入金するので家主の負担はゼロで済む――と説明されたと主張。
 しかし、入居者の利用はほとんど進まず、昨年3月ごろから家主への入金がストップした。さらに今年に入り、インプロトホームから「入金は『立て替え』だった」と入金分の返還を求める通知があり、驚いた家主らが弁護士に相談したことで、問題が表面化した。
 GE以外にも大手のクレジット・リース会社が契約にかかわっており、現在まで約450人の家主が弁護団に解決を依頼。クレジット・リース契約の債務は総額約13億円に上るという。
 東京都町田市でアパート2棟(計28戸)を経営する原告男性(61)は05年8月、GEと約350万円の契約を結んだが、昨年3月にインプロトホームからの入金が途絶え、約200万円の債務が残った。男性は「費用負担があるなら契約はしなかった」と話す。
 弁護団の瀬戸和宏弁護士は「費用負担ゼロでネット環境が整備できるかのように誤信させており、悪質な商法」と主張。クレジット・リース会社についても「十分調査していれば、問題のある契約だと見抜けたはず」と指摘している。
 取材に対し、インプロトホームは「対応できない」としている。
 GEフィナンシャルサービスの話「訴えの正確な内容が確認できないのでコメントは差し控えたい」

(以下毎日新聞2009年8月28日朝刊より引用)

提訴:大家ら集団提訴へ 「ネット整備負担ゼロ」、業者倒産し--横浜、東京地裁
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090828ddm012040025000c.html

 「費用負担はない」と訪問販売会社に勧められてインターネット接続機器を導入した神奈川県や東京都などのアパート、マンションの大家が、この会社の倒産などに伴い、提携先クレジット会社などから高額な導入費用の支払いを求められるのは不当と集団提訴する。被害対策弁護団には首都圏の約500人から相談があり、請求額は計約15億円。弁護団は「機器に詳しくないお年寄りの大家を狙った詐欺被害だ」として、第1陣26人が東京地裁へ28日に提訴、9月下旬にも横浜地裁へ提訴を予定している。
 各地の相談人数は▽横浜約100人▽東京約280人▽埼玉約90人▽東京・多摩地区約30人。契約を複数結び、1000万円超を請求されている人もいる。弁護団によると、問題の業者は▽「インプロトテレコム」と、協力会社の「インプロトホーム」▽倒産した「ビックウィン」=いずれも東京都。弁護団は「テレコム社は倒産状態」としている。
 訴状などによると05年ごろから、社員らが大家の自宅を訪問し、実勢価格より高い値段(6世帯用約170万円)で、光ファイバーのインターネット接続機器を購入・リースする契約を、提携先のクレジット会社やリース会社と結ばせ、各部屋にネット回線を敷設。大家は導入費用を分割払いするが、社員は「入居者から徴収したネット利用料を『立て替え金』として支払う」と説明、実質負担はないと勧誘していた。
 だが昨年6月ごろまでに倒産などを理由に入金がストップ。大家は残った導入費用分の支払いを求められた。

(以下読売新聞2009年8月28日より引用)

「入居者負担ゼロでネット導入」業者を集団提訴
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090828-OYT1T00664.htm

 東京や神奈川、千葉のアパート・マンションの経営者(家主)26人が、「費用負担ゼロでインターネットが導入できると説明されたのに、高額の費用を請求された」として、通信関連会社「インプロトホーム」(東京)や、金融サービス会社「GEフィナンシャルサービス(GE)」(同)などに、約1100万円のシステム購入代金の返還と約4700万円の債務不存在確認などを求める訴訟を28日、東京地裁に起こした。
 訴状によると、原告らは2005~06年、通信関連会社「インプロトテレコム」から、入居者向けのインターネット利用システムを購入し、GEとクレジット契約を結んだ。その際、インプロトテレコムからは、「インプロトホームが入居者から利用料を徴収し、毎月、クレジット代金分を入金するので家主の負担はない」と説明されたが、昨年以降、入金が停止し契約は無効としている。
 インプロトホームの話「当社からの入金はあくまでも『立て替え』であり、代金はいずれは家主が入居者から回収すると契約書に明記している。原告らは理解して契約したはずだ」

(以下毎日新聞2009年8月28日夕刊より引用)

債務不存在確認訴訟:ネット機器費用で 大家が提訴
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090828dde041040038000c.html

 訪問販売会社の勧めで光ファイバーのインターネット接続機器を導入した神奈川県や東京都などのアパート・マンションの大家26人が、提携先クレジット会社「GEフィナンシャルサービス」(東京都港区)から高額な導入費用の支払いを求められるのは不当として、GEを相手に約4700万円の債務不存在確認を求めて東京地裁に28日提訴した。訪問販売したインプロトテレコム(新宿区)▽協力会社のインプロトホーム(渋谷区)▽GE--の3社に計約1200万円の賠償も求めた。
 訴状によると、テレコム社は「立て替え金を払うので(実質)費用負担はない」と勧誘、大家は導入費用についてGEとクレジット契約を結んだ。しかし、大家への入金が止まり、残った費用分の支払いを求められた。ホーム社は「書面の内容を確認し契約されたと思っている」、GEは「訴状を見ていないので回答を控える」とコメントした。

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2009年6月 1日 (月)

「消費者庁」発足へ

「消費者庁」が今年秋ころ、いよいよ発足のようです。

(以下東京新聞2009年5月30日より一部引用)
消費者庁 秋に発足 関連法成立
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009053002000090.html
 消費者行政を一元化する消費者庁設置関連三法案が、二十九日午後の参院本会議で全会一致で可決し、成立した。政府は今秋の発足を目指し準備作業を本格化する。 
 消費者庁を内閣府の外局に、消費者庁の監視機関「消費者委員会」を内閣府内にそれぞれ設置。消費者庁は、消費者被害が広がる事件・事故が発生・拡大した場合に、所管する各省に事業者への行政処分などを要請する。所管が不明確な「すき間事案」は消費者庁自らが処分を行う。
 消費者委は民間の専門家で組織。消費者庁の対応に意見を述べる。各省の対応が遅れている場合は、必要な対応を首相に勧告し、事後報告を求めることもできる。
 消費者からの苦情・相談を受け付ける消費生活センターは、都道府県に設置を義務付ける。市町村は必要に応じて設置に努めることとし、消費生活相談員の人材確保や資質向上を求めている。
(以上引用終わり)

しかし、以下のように、問題点も指摘されています。

(以下毎日jp2009年5月30日より引用)
消費者庁法案:成立 今秋にも誕生
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090530ddm001010065000c.html
 消費者庁設置関連3法の修正案が29日、参院本会議で全会一致で可決され、3法が成立した。消費者行政の一元化を図る消費者庁が今秋にも誕生する。ただ、与野党が合意形成を優先したため先送りされた課題も多く、被害者救済制度の検討などを求める34項目の付帯決議が行われた。
 消費者庁は食品安全基本法や製造物責任法など約30本の法律を所管する。業界を監督する省庁の対応が不十分な場合、改善勧告を出せる。所管省庁が不明な場合などは、消費者庁が業者への勧告や立ち入り調査のほか、一定期間販売を中止させることもできる。
 一方、地方の消費生活相談員の雇用など多くの課題が先送りされた。相談員は非正規雇用のケースが多く、付帯決議で「雇用の安定を促進するための必要な措置を早急に講じること」としたが、実現のめどは立っていない。
 また、海外には行政が被害者に代わって加害業者の不当利益を回収するなどの被害者救済制度があるが、付帯決議は「幅広い検討を行う」とするにとどまり、救済制度の創設は未知数だ。
 有識者による消費者庁の監視機関「消費者委員会」が機能するかどうかにも疑問が残る。与野党の修正協議で首相への「意見具申」から「勧告・建議」ができるよう強化されたが、現在も勧告権を持つ食品安全委員会は一度もその権限を行使したことがないのが実情。消費者委員会の委員は全員が非常勤で、付帯決議は「常勤的に勤めることが可能になる」よう求めている。
(引用終わり)

・法案、衆院修正案はこちらです。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm

・なお、法案要旨は以下の通り。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_gian_jyoho.htm

一、消費者庁の設置
  内閣府の外局として、消費者庁を設置し、その長は、消費者庁長官(以下「長官」という。)とする。
二、消費者庁の所掌事務
  消費者庁の所掌事務は、次に掲げる事項とする。
 1 消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事項
 2 消費者の利益の擁護及び増進に関する関係行政機関の事務の調整に関する事項
 3 消費者の利益の擁護及び増進を図る上で必要な環境の整備に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事項
 4 消費者安全法の規定による消費者安全の確保に関する事項
 5 宅地建物取引業法等の規定による「取引」の相手方の利益の保護に関する事項
 6 消費生活用製品安全法等に規定する「安全」に関する事項
 7 食品衛生法等に規定する「表示」に関する事項
 8 物価、公益通報者の保護、個人情報の保護に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進等に関する事項
三、資料の提出要求等
  長官は、消費者庁の所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、説明その他必要な協力を求めることができる。
四、消費者委員会
 1 内閣府に、消費者委員会(以下「委員会」という。)を置く。委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
  イ 消費者の利益の擁護及び増進に関する基本的な政策等に関する重要事項に関し、自ら調査審議し、必要と認められる事項を内閣総理大臣、関係各大臣又は長官に建議すること。
  ロ 内閣総理大臣、関係各大臣又は長官の諮問に応じ、イの重要事項に関し、調査審議すること。
  ハ 消費者安全法第二十条の規定により、内閣総理大臣に対し、必要な勧告をし、これに基づき講じた措置について報告を求めること。
  ニ 消費者基本法等の法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
 2 委員会の委員は、独立してその職権を行う。
 3 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、報告を求めることのほか、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
 4 委員会は、委員十人以内で組織する。委員は任期二年、再任可能とし、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に関して優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
 5 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
五、施行期日等
 1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 2 政府は、消費者委員会の委員の常勤化、消費者庁の所管法律の見直し及び消費者行政に係る体制整備、地方公共団体に対する国の支援の在り方、適格消費者団体に対する支援の在り方、不当な収益のはく奪及び被害者救済制度について検討するものとする。

・また、参議院消費者問題特別委員会での34項目の付帯決議は、以下の通りです。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/171/f420_052801.pdf

消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案に対する附帯決議

政府は、消費者庁関連三法の施行に当たり、消費者庁及び消費者委員会の創設が消費者基本法の基本理念を実現し、行政のパラダイム( 価値規範) の転換を行うための真の拠点となるものであることにかんがみ、行政の意識改革を図るとともに、次の事項について万全を期すべきである。

一、消費者庁がその任務を遂行するに当たっては、消費者基本法第二条に定める消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのっとり行うことが明記された趣旨にかんがみ、消費者の権利尊重に万全を期すること。

二、消費者庁がその任務を十全に果たすことができるよう、消費者行政に関する幅広い専門性を持った職員を行政組織内外から登用し、消費者の視点を重視した配置を行うとともに、民間のノウハウの活用を図ること。また、政府全体において公務員に対する十分な消費者教育・研修を実施することにより消費者行政を担う人材の育成を行うとともに、各府省庁における消費者担当部局の強化を行うこと。

三、消費者委員会は、自ら積極的に調査審議を行うとともに、内閣総理大臣等への勧告・建議を始め、その与えられた機能を積極的に行使し、消費者の利益の擁護及び増進のため、適切にその職務を遂行すること。

四、消費者庁及び消費者委員会は、消費者の利益の擁護及び増進のため、各々の独立性を堅持しつつ、情報の共有を始めとして、適宜適切に協力して職務に当たること。

五、消費者の利益の擁護及び増進を図り、真に消費者、生活者が主役となる社会を実現するためには、消費者行政を担当する内閣府特命担当大臣が、消費者行政の司令塔である消費者庁及び消費者行政全般の監視機能を果たす消費者委員会双方の判断を総合的に勘案し、その掌理する事務を遂行することが極めて重要であることにかんがみ、消費者政策担当大臣の判断を補佐するスタッフの配置を行うこと。

六、消費者委員会の委員長及び委員は、すべて民間から登用するものとし、その年齢、性別、専門性等について十分配慮すること。また、委員の任命理由を明確化する等、説明責任を果たすよう努めること。

七、初代の消費者委員会の委員の三人について、常勤的に勤めることが可能になるように人選し、財政的な措置も行うこと。またその他の委員についても、委員としての職務に専念できるような人選を行うように努めるものとすること。

八、消費者委員会からの関係行政機関の長への報告徴求、資料の提出要求等に対しては、各行政機関は迅速かつ誠意をもって対応すること。関係行政機関の長は、その有する民間事業者に係る情報及びその所掌に係る民間事業者に関する情報についても必要に応じて収集・分析を行い、個人情報や企業秘密、適正手続の確保に配慮しつつ、消費者委員会からの求めに応じ、積極的な提供に努めること。

九、消費者委員会が個別具体的な事案に関して「勧告」を行うにあたっては、当該事案に関して的確な情報を得た上で、その必要性を踏まえたものとすること。消費者庁及び消費者委員会設置法第八条の「資料の提出要求等」の権限が、その情報収集のための法的担保として設けられているものであるが、事実上の情報収集の手段として、消費者や事業者等からの自発的な通報・提供という形で情報を得ること、消費者委員会の要請に対して事業者等が自ら進んでこれに協力する等の形で、消費者委員会が事情説明や資料提供等を受ける等の調査を行うことまで否定しているわけではないことに留意すること。

十、内閣総理大臣、関係行政機関の長等は、消費者委員会からの建議又は勧告に対して、迅速かつ誠実に対応すること。

十一、消費者委員会が独立して消費者行政全般についての監視機能を十全に果たすことを担保するため、その事務局については財政上の措置を含めた機能強化を図るとともに、その職員については専任とするよう努めること。また、事務局職員の任命に当たっては、多様な専門分野にわたる民間からの登用を行うとともに、その所掌事務を行うために十分な人員を確保することにより、同委員会の補佐に万全を図ること。

十二、消費者政策会議については、当委員会で行われた議論を十分踏まえ、消費者庁及び消費者委員会との関係を総合的に判断し、国会と連携を図りつつ存置を含めその在り方の見直しを検討すること。また、次期の消費者基本計画の案の作成に当たって消費者政策会議は、本委員会を始めとする国会における議論及び消費者委員会の意見を尊重すること。

十三、消費者被害に関する幅広い情報が確実に消費者庁に集約されるよう、その手続を明確化することにより、関係省庁や地方自治体との連携を密にする等、体制を整備すること。

十四、消費者事故についての調査が、更なる消費者被害の発生又は拡大の防止に資するものであることにかんがみ、消費者庁に集約された情報の調査分析が機動的に行えるようタスクフォースを活用し、消費者事故等についての独立した調査機関の在り方について法制化を含めた検討を行うとともに、消費者庁及び事故の関係省庁、特定行政庁と警察、消防など関係機関は対等・協力の関係をお互いに確認し、事故原因の究明、再発防止対策の迅速化をはかること。なお、事故情報の一元化の体制整備に当たっては、児童や高齢者、妊産婦、障害者等の事故情報について特別な配慮をすること。また、消費者庁に消費者事故等の原因究明について分析能力を有する人材を登用するとともに、その養成を行うこと。

十五、消費生活に関わる事故に関する情報は、国民の共有財産であるとの認識に基づき、消費者庁を含む関係省庁は、消費者事故等に関する情報について、個人情報保護に配慮しつつ、十分な開示を行うこと。

十六、消費者教育の推進については、消費者庁が司令塔機能を果たし、消費者基本法の基本理念及び消費者基本計画の基本的方向のもと、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため、多様な視点から物事をとらえる能力を身につけ、自主的かつ合理的な行動をすることができるよう、消費者庁と文部科学省が連携を図り、学校教育及び社会教育における施策を始めとしたあらゆる機会を活用しながら、財政措置を含め、全国におけるなお一層の推進体制の強化を図るとともに、消費者教育を担う人材の育成のための措置を講ずること。また、消費者教育に関する法制の整備についての検討を行うこと。

十七、内閣総理大臣は、消費者事故等の発生に関する情報の集約及び分析の結果に関しては、適時適切に、国会に対し報告しなければならないものとすること。また、結果の公表は迅速に行うとともに、国民に対する十分な周知を行うことができるよう、その公表の在り方についても十分配慮すること。

十八、消費者行政に係る体制整備に当たっては、関係機関、特に独立行政法人国民生活センター、独立行政法人製品評価技術基盤機構、及び独立行政法人農林水産消費安全技術センターを始めとした商品検査機能を有する各機関の機能強化を図るとともに、消費者庁及び消費者委員会、地方公共団体との連携強化のため必要な措置を講ずるものとすること。

十九、聴取能力及び法律知識のみならず、あっせんや行政との連携能力等各地の消費生活センターの相談員にとって必要な能力の水準向上を図るため、教育・研修の機会の拡充等を始め、独立行政法人国民生活センターによる支援を強化すること。また、国民生活センターに配置されている相談員について、その職務内容にふさわしい身分、待遇の改善に努めること。

二十、地方公共団体における消費者行政の推進に関しては、消費者庁関連三法制定の趣旨を地方公共団体の長及び議会議長が参加するトップセミナーの実施等を通じて周知徹底し、全国あまねく消費生活相談を受けることができ、消費者の安全・安心を確保する体制が確立するよう、万全を期すること。

二十一、各地の消費生活センター等が、障害者、高齢者を含めたすべての消費者にとってアクセスしやすい一元的な消費者相談窓口として機能するよう、その認知度を高め、多様な相談受理体制の整備が行われるよう万全を期すること。

二十二、相談員の執務環境及び待遇に関する種々の問題点を改善するため、相談員制度の在り方について全般的な検討を行うとともに、地方公共団体における消費者行政の一層の充実を図るため、正規職員化を含め雇用の安定を促進するための必要な措置を早急に講じること。また、その待遇改善に関しては、今般拡充された地方交付税措置が着実に活用されるよう地方公共団体に要請するとともに、地方消費者行政活性化基金の運用に際しては、支援対象を集中育成・強化期間において増大する業務に係る人件費等に拡充するとともに、交付要綱等において処遇改善を図る地方公共団体への交付金の配分を手厚くすることを定めることにより、相談員の時給の引上げ、超過勤務並びに社会保険及び労働保険に関し法令に基づく適切な対応等を含め、地方公共団体における処遇改善を積極的に支援すること。なお、地方消費者行政活性化基金を真に地方消費者行政の需要を満たすものとするため、事業を支援するメニューの在り方等について地方公共団体の意見を踏まえるとともに、その弾力的な運用を行うこと。

二十三、消費生活センターについて、指定管理者制度や委託等を採用している地方公共団体においても、その受託機関における相談員の処遇については、各種誘導措置が講じられることにより、地方公共団体が自ら行う場合における相談員等と同様に処遇の改善が図られるよう万全を期するよう要請すること。

二十四、今後三年程度の集中育成・強化期間後の国による支援の在り方や、消費生活センターの設置、相談員の配置・処遇等の望ましい姿について、実態調査等を行うとともに、集中育成・強化期間の取組を踏まえ、その後も適切な対応が講じられるよう配意し、工程表も含め消費者委員会で検討すること。なお、検討に当たっては、広域的な設置を含め地域の実情に応じた消費生活センターの設置、PIONET の整備、相談員の資格の在り方についても十分配意すること。

二十五、消費者政策担当大臣が掌理する事務として、内閣府設置法第四条第一項に、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念の実現並びに消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現のための基本的な政策に関する事項が明記された趣旨を十分尊重し、消費者政策担当大臣は、他の行政機関の個別政策を含めた基本的政策に関する事項についての内閣府設置法第十二条の勧告権の適切な行使等、関係行政機関の総合調整に万全を期すること。また、内閣総理大臣は、消費者政策担当大臣の権限行使が十分に果たされるよう行政各部を指揮監督すること。

二十六、消費者安全法第二十条の趣旨にのっとり、内閣総理大臣は、消費者委員会からの勧告に対し、消費者の利益の擁護及び増進のため、内閣一体となった取組が行われるよう、誠意をもって対応すること。また、内閣総理大臣は、消費者委員会から勧告を受けたときは、当該勧告の実施に関する事務を所掌する大臣に対し、適切な対応を行うこと。

二十七、消費者の利益の擁護及び増進に関する法律の消費者庁の関与の在り方を検討する際には、公益通報の窓口の消費者庁への一元化、表示、取引、安全の分野における横断的な新法の制定を含めた検討を行うこと。

二十八、多重債務対策を消費者庁の重要な任務と位置付け、消費者庁の関与やそのために必要な体制を含め、内閣一体としての取組が可能となるよう検討を行うこと。

二十九、適格消費者団体を始め、消費者被害の情報収集、消費者への啓発等を行う消費者団体に対し、関係する情報を提供するとともに、活動のための施設や資金の確保等の支援のあり方について検討を行い、必要な措置を講ずること。

三十、地方公共団体の消費者行政の実施に対し国が行う支援の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を加えるに当たっては、消費者、生活者が主役となる社会を実現する国民本位の行政への転換を目指す消費者庁設置の趣旨にかんがみ、国と地方の役割分担など消費者行政の在り方についても併せて検討すること。

三十一、加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための制度の検討に当たっては、いわゆる父権訴訟、適格消費者団体による損害賠償等団体訴訟制度、課徴金制度等の活用を含めた幅広い検討を行うこと。

三十二、消費者庁関連三法にかかる政令及び内閣府令の制定に当たっては、本委員会における議論を十分に尊重するとともに、消費者団体を始めとする国民各層の意見を広く反映させるため、丁寧な意見募集及び集約の在り方に配意すること。

三十三、消費者庁関連三法の附則各項に規定された見直しに関する検討に際しては、消費者委員会による実質的な審議結果を踏まえた意見を十分に尊重し、所要の措置を講ずるものとすること。

三十四、食品や製品による国境を越えた消費者被害が増加している状況にかんがみ、OECD 消費者政策委員会の活動や、食の安全における近隣諸国や貿易相手国との連携を始めとした、消費者安全を確保するための国際連携を強化するとともに、その体制の更なる充実が図られるよう取り組むこと。

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2009年4月17日 (金)

(情報提供)八王子自動車教習所破産手続開始決定・債権者集会期日

以下、情報提供です。

有限会社八王子自動車教習所は平成21年2月6日付で東京地方裁判所による破産手続き開始決定がされています。

債権者集会日時は、平成21年6月2日午前10時から(於:東京家簡地裁合同庁舎債権者集会場1)だそうです。

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2009年2月 2日 (月)

八王子自動車教習所:教習再開について

八王子自動車教習所につき、教習再開に関する以下の報道をご紹介しておきます。

(以下東京新聞2009年1月31日より一部引用)
飛鳥交通事業引き継ぎ 倒産の八王子自動車教習所 あすから技能・学科再開
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20090131/CK2009013102000077.html

 経営難のため昨年十月に倒産した八王子自動車教習所(日野市)の事業を、タクシーや自動車教習所を運営する飛鳥交通(新宿区)が引き継ぎ、「飛鳥ドライビングカレッジ日野」と名称を改めて二十九日から再スタートを切った。二月一日から技能と学科の教習を再開するという。
(中略)元受講生が入校する場合、入校料と検定料はかかるが、技能や学科の受講料は免除される。
 飛鳥交通はタクシー事業のほか、八王子市、川崎市、埼玉県川口市の三カ所で自動車教習所を経営しており、十九日に事業譲渡契約を結んだ。同社の担当者は「この地域の教習所全体の信頼を回復させたい。地域密着の地道な経営を目指す」と話した。
(以上引用終わり)

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2009年1月27日 (火)

過払金返還請求権の消滅時効起算点(最判H21・1・22)

最高裁判決紹介三連発。
今日は、過払金請求権の消滅時効起算点に関する最高裁判決の紹介です。

実務的にはさんざん争われてきた論点ですが、これまでの最高裁の「消滅時効の起算点」に関する判決の流れからすれば、当然の判決のように思います。すなわち、今回の判決に関しては「最高裁のこれまでの借主保護の流れに沿う…」といった新聞報道、解説などを見ましたが、むしろ「借主保護」という以前の、消滅時効に関するこれまでの判決の延長線上の解釈とみるべきなのではないでしょうか。また、今回とは事案を異にする、「複数の基本契約」でかつ「手形」を用いる商工ローンのような貸付についても、その実質をみれば、この最判の理が及ぶとみるべきでしょう。

(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37212&hanreiKbn=01

(判決理由)

上告代理人山口正徳の上告受理申立て理由について
1 本件は,被上告人が,貸金業者である上告人に対し,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,過払金が発生していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その支払を求める事案である。
上告人は,上記不当利得返還請求権の一部については,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
貸主である上告人と借主である被上告人は,1個の基本契約に基づき,第1審判決別紙「法定金利計算書⑧」の「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,昭和57年8月10日から平成17年3月2日にかけて,継続的に借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借取引を行った。

上記の借入れは,借入金の残元金が一定額となる限度で繰り返し行われ,また,上記の返済は,借入金債務の残額の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月行われるものであった。

上記基本契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。

3 このような過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。
したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。
そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である

借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。

したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。

4 これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,本件において前記特段の事情があったことはうかがわれず,上告人と被上告人の間において継続的な金銭消費貸借取引がされていたのは昭和57年8月10日から平成17年3月2日までであったというのであるから,上記消滅時効期間が経過する前に本件訴えが提起されたことが明らかであり,上記消滅時効は完成していない。

以上によれば,原審の判断は結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官泉徳治裁判官甲斐中辰夫裁判官涌井紀夫裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子)

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