2013年11月 5日 (火)

ハーグ条約(研修)

某所研修で、ハーグ条約(付随して「法律と条約の違い」)についてお話ししました。

その際に作成したレジュメ(ちょっとだけ加筆)を以下にアップしておきます。ご活用ください。

ーーー

1 前提として・・・「法律」と「条約」
(1) 違い
  (法律)
  国会で決める(憲法59条)
   ↑
   ↓
  (条約)
  文書による国家間の合意
   内閣が締結、国会が承認(憲法73条3号)

(2)条約の国内法としての効力
  憲法98条2項:
  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、

  これを誠実に遵守することを必要とする。
  →適用可能なものはそのまま国内法として効力あり
   条約の実施のために必要な立法措置をとるものもあり

2 「子の奪取に関するハーグ条約」とは?
 正式名称:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
 ・・子どもがそれまで生活していた常居所地国に

  子を迅速に変換するための国際協力の仕組み、

  国境を越えた親子の面会交流の実現のための

  協力について定めている。
  
 適用対象=16歳未満の子の、国境を越えた移動

3 ハーグ条約の歴史
 国際結婚の増加
 →1970年代~ 

  一方の親による子の連れ去りや監護権を

   めぐる国際裁判管轄の問題発生
 1976年 「ハーグ国際私法会議」が、この問題を検討することを決定
 1980年10月25日 ハーグ条約作成
  →条文(英・和):

  http://www.moj.go.jp/content/000076987.pdf
 2013年6月現在、90か国が加盟

 日本・・現在加盟準備(法整備)中
 2013年5月 国会が加盟承認
 2013年6月 「国際的な子の奪取の民事上の側面に

        関する条約の実施に関する法律」成立
        ・・施行日=条約発効日
   条文等→ http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00122.html
  

 加盟=来年4月?(13/10/23毎日新聞報道)

4 条約の構造(全45条)

 参考:外務省HP
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol82/index.html

 

(1)中央当局の任務
 「中央当局」=条約上、加盟国に設置を義務付けられた政府の窓口

(2)返還裁判(条約11条、12条2項)

<返還事由の証明>
① 子が16歳未満
② 子が日本に所在
③ 常居所地国法に基づく子の監護の権利の侵害
④ 奪取時に常居所地国が条約加盟国であったこと

<返還拒否事由の証明>
① 連れ去りから1年以上経過し、子が新たな環境に適応
② 申請者が事前の同意又は事後の黙認
③ 返還により子が心身に害悪を受け、又は他の耐え難い状況に置かれることとなる重大な危険
④ 子が返還されることを拒み、かつその子が意見を考慮するのに十分な年齢・成熟度に達している

5 日本は?
 日本=G8唯一の未加盟国
 2013年5月 国会で加盟承認

6 なぜ慎重?
 加盟に慎重な立場=

 子連れ帰国の中には夫からの暴力等からの避難事例が少なくないこと

 個別背景を無視して返還原則を貫いてよいのか(子の利益は?)
 

 参考:「国際的な子の奪取に関するハーグ条約」批准がはらむ問題点

    (伊藤和子弁護士)
    http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20130324-00024025/

7 日本の実施法
 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」:全153条

<返還事由の証明>(法27条)
① 子が16歳未満
② 子が日本に所在
③ 常居所地国法に基づく子の監護の権利の侵害
④ 奪取時に常居所地国が条約加盟国であったこと

<返還拒否事由の証明>(法28条)
「重大な危険の抗弁」
 子の返還により、子の心身に害悪を及ぼし、又はその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること(条約13条1項b)=法28条1項4号

・・夫婦間暴力への考慮は?
法28条2項:「重大な危険」の考慮事由
① 子が直接に暴力を受ける恐れ
② 相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心的外傷を与えることとなる暴力等を受ける恐れの有無
③ 常居所地国で申立人または相手方による子の監護が困難な事情の有無
・・世界的に見て異例の立法(=返還拒否の範囲拡大/条約の変換原則の逸脱?)

※諸外国実績:2008年統計では、中央当局への返還申請1903件のうち、
司法判断に至ったのは835件(約44%)、そのうち返還拒否は286件(約34%)
(外務省HP)・・この数字をどう読むか?

<裁判管轄>
東京、大阪に集中(法32条)

<迅速>
6週間経過時の説明要求(法151条)

8 支援者として
 日本で接するのは、外国から日本に子を連れて戻ってくるケースが多い?
 または、外国人DV被害者で子どもを連れて帰国しようと考えている人からの相談等?
 迅速な対応が必要=相談、通訳、資料収集支援等
 (「重大な危険」の立証責任は、連れ去った方にある=原告有利)

9 今後
 「家族」観の国際間ギャップが顕在化?
 「親権」制度への影響も?(共同親権問題)

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2013年10月22日 (火)

雑誌「サイゾー」11月号・コメント掲載

雑誌「サイゾー」11月号に、私のコメントが掲載されていますので、ご紹介しておきます。

http://www.cyzo.com/i/2013/10/post_14835.html

特集「タブー白書」中、在日コリアンに関する「差別」についての63ページに掲載されていますので、関心のある方はお読みいただければと思います。
コメントの趣旨としては、民族差別の問題は、単なる「差別」問題という狭い文脈で固定的に見るのではなく、社会の中でその実態をとらえるべきだというものです。「差別意識」の背景を深く見る必要がありますし、そのように見ていけば、潜んでいる問題は、実は決して「差別」という局面でのみ現れる特有のものではないことを、感じていただけると思います。

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2013年10月 7日 (月)

京都朝鮮第一初級学校襲撃事件・判決(民事)

京都の朝鮮初級学校(小学校)に対し「在特会」が街宣をかけた事件で、以下の判決が出ました。事件内容も含め、下記をご参照ください。

(時事ドットコム2013年10月7日より一部引用)
在特会の街宣は「人種差別」=ヘイトスピーチと認める-賠償命令も・京都地裁
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013100700032

 京都朝鮮第一初級学校(京都市南区)周辺での街宣活動で業務を妨害されたなどとして、学校を運営する京都朝鮮学園(同市右京区)が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と関係者9人を相手取り、半径200メートル以内の街宣禁止と計3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、京都地裁であった。橋詰均裁判長は在特会の街宣は人種差別に当たるとし、同範囲内の街宣禁止と約1226万円の支払いを命じた。
 学校側は街宣をヘイトスピーチ(憎悪表現)と認定した上での賠償を請求。在特会側は街宣は表現の自由により保護されると主張していた。
 橋詰裁判長は、「在特会の一連の行動は在日朝鮮人に対する差別意識を訴える意図があり、人種差別撤廃条約に盛り込まれた『人種差別』に当たる」と、事実上ヘイトスピーチだと認定。「違法性があり、人種差別行為に対する保護及び救済措置となるよう(賠償額は)高額とせざるを得ない」と述べた。
(以下略、以上引用終わり)

 私もこの街宣は何度も映像で見ましたが、ひどいものでした(とくに、小さい子どもにとっては恐怖でしょう)。そのような行為に対して民事で今回のような判決が出ることの意味は、非常に大きいと思います(なお刑事事件判決及び「ヘイトスピーチ」の刑事的問題点については、参考に、前田朗教授のブログへのリンクを貼っておきます→ http://maeda-akira.blogspot.jp/2012/01/blog-post_12.html )。

 私もまだ今回の判決全文を読んでいませんが、読んだ後にさらにコメントをするかもしれません。とりあえず今日は速報ということで、アップしておきます。原告、支援者、弁護団の皆様、まずは、お疲れさまでした。これを機に、子どもが安心して通える/子どもを安心して通わせられる環境が整うことを祈っています。

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2013年6月21日 (金)

「祖国と母国とフットボール」文庫化のお知らせ!

以前このブログで何度か取り上げた慎武宏さん著「祖国と母国とフットボール ザイニチ・サッカー・アイデンティティ」が、このたび朝日新聞出版から「増補版」として、文庫化されました。

Photo

(出版社HP

http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14985

 

(同HP紹介より・・)

北朝鮮代表入りした鄭大世。日本国籍を取得、日本代表入りし2011年アジアカップ決勝戦で決勝点となるボレーシュートを決めた李忠成。

日本で生まれ育った在日コリアンサッカー選手が選んだ、正反対のふたつの道――。

「蹴球は朝鮮の国技」と教えられる在日コリアンにとってのトップスポーツは野球ではなく、貧しくてもボール一つあればプレイできるサッカーだった。

朝鮮高校は日本のサッカー強豪校を次々破り在日コリアンたちを熱狂させ、その熱狂の中から数々の在日コリアンJリーガーが誕生する。

Jリーグで活躍しナショナルチーム入りする段階で、ある者は日本国籍を取得し日本代表入りし、ある者は北朝鮮代表、韓国代表となった。

その過程における様々なドラマを、祖国=韓国・北朝鮮への思いと母国=日本への思いを軸に描き出す。

本文庫版では鄭大世が北朝鮮代表、李忠成が日本代表として対戦した2011年のW杯アジア予選日朝戦について触れた章を増補。

  ↓

本当にお読みいただきたい、おすすめの一冊です。皆様ぜひ、ご購入ください!なお、私の名前もどこかに出てきます(・・所属事務所名は取材当時のものですが)。

あと、チュンソン!代表復帰、ブラジル行きを、心から願っています!

(過去のブログ記事)

http://lawyer-m.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-21fe.html

http://lawyer-m.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-baf2.html

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2012年10月13日 (土)

「外国人」から、Englishman in New York、“legal alien”、「人権」、音楽、映画、小説、マンガ・・・徒然なるままに。

起案に疲れたので休憩がてら、久しぶりの更新です。

先日、関東弁護士会連合会の定期大会のシンポを聞きに行きました。シンポテーマは「外国人の人権」。

シンポに際して様々な調査活動を行った報告書の冒頭に、今回「外国人」という言葉を使用する理由が書いてありました。「外国人」という言葉を使うこと自体に議論はあるだろうが、今回はあえてこの言葉を使います。といったような内容のものです。この報告書は明石書店から「外国人の人権 外国人の直面する困難の解決をめざして」(関東弁護士会連合会編)として出版されていますので、関心のある方は、ぜひお読みください。

→ http://www.akashi.co.jp/book/b103902.html

 

さて、その中にも書いてありましたが、「外国人」というコトバ、概念は、実は相対的なものです。国籍の有無で分けるのか、日本国籍を持っていても外見がいかにも「外国人風」の日本国籍取得者は「外国人」なのか?たとえばラモスさんは?李忠成選手は?

「外国人」概念というものも、実体があるようで、本当はあまり実体がないもののように思います。もっと言えば、「絶対的」概念なんて、実はほとんどないのかもしれません。

 

「外国人」つながりで、Stingの、Englishman in New York を思い出しました。あの曲のPVに出てくるおばあちゃんは実は男性だ、みたいな話が、確かあったと思います。この曲のPVでその人を使ったのはもちろん意図的でしょうし、alien legal alien を歌詞の上で使い分けていたのも、きっと意図的だったのでしょうね(余談ですが、歌詞のこの部分を「合法的外国人」と訳すのは、曲のメッセージを考えれば、完全な誤訳だと思います。)。

 

話はどんどんずれていきますが、音楽は、こういう本質的な問題を考えるときに、直球で、感覚的わしづかみで、正面から提示してくれます。映画もそう。芝居もそう。

「人権」とか、大事な言葉だけれども、時として頭でっかちになってしまう言葉ですよね。言葉で、頭でばかり考えるのではなく、こういった表現に接して、体でその本質を感じる姿勢を、機会を持たないと、「人権」とか、憲法の言う「個人の尊厳」の意味する本質をふまえた活動は出来ないと感じます。

人権活動家のスピーチよりも、憲法学者の言葉よりも(知り合いの人、ごめんなさい)、時としてこのようなStingの歌やPVのほうが、またはMilesの演奏のほうが雄弁です。刑事訴訟法の講義よりも(これも知り合いの人、ごめんなさい)ドストエフスキーをまず読むほうが、学ぶべきことがらがたくさんあるように思います。問題は感じる力で、だから法律家は、または法律家になりたければ、たくさんの音楽を聴け!映画を観ろ!小説を読め!マンガも読め!・・・と僕は思うわけです(^^)

 

と、久しぶりにつれづれと書いてみました。こんな駄文ですが、読んでみて皆様はいかがお考えでしょうか。

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2012年6月14日 (木)

サッカーを愛して止まないあの人のゆめのはなし(スポーツライター・慎武宏さん)

スポーツライター・慎武宏さんが、スルガ銀行のサッカーサイトに載りました。
「少年時代のこと、スポー​ツライターとしての転機、今、取り組んでいることなど」、載っています。「僕の青春ストーリー」だそうです(^^)
ぜひ、ご覧ください!!

http://www.idream-jp.com/#/1206/dream/091/0/

「祖国と母国とフットボール」
http://www.amazon.co.jp/s/?ie=UTF8&keywords=%E7%A5%96%E5%9B%BD%E3%81%A8%E6%AF%8D%E5%9B%BD%E3%81%A8%E3%83%95%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB&tag=googhydr-22&index=aps&jp-ad-ap=0&hvadid=9066283619&hvpos=1t1&hvexid=&hvnetw=g&hvrand=19048217351385813350&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=e&ref=pd_sl_1aq10bgz9f_e

「ヒディング・コリアの真実」
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%92%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E6%85%8E-%E6%AD%A6%E5%AE%8F/dp/4484022192

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2012年5月 1日 (火)

「ネットと愛国」読了。

Photo

久しぶりのブログ更新です。

最近、安田浩一著「ネットと愛国」(講談社)を読了しました。
この10年に僕が感じてきたことと重なった(と思った)ので、書いてみたいと思います。

この本は「在日特権を許さない市民の会」や、その代表者についてのルポです。そして安田氏はエピローグで、「在特会は隣人である」と結論付けています。
この意味するところは、かなり深いように思います。

昔、平壌宣言後の朝鮮学校生徒への嫌がらせの実態について調査しその結果分析を添えて公表したとき、その実態は、決して、一見してレイシストみたいな人がひどいことをしている、みたいな構図ではありませんでした。
その構図への問題意識と、安田氏が在特会にのめり込む人たちの弱さのような部分に着目しているあたりが、重なるように感じます。

昔の話ですが、上記調査結果公表の時、従来からの運動体の多く(あえて「多く」と言います)とマスコミの多くは、「チョゴリの切り裂きは何件あった?」ということしか聞いてきませんでした。そして○○件、というと、むしろ期待にこたえてもらったように喜ぶようなリアクションすらありました。
その一方で、その他の態様や調査結果の分析に興味を持つ人は、残念ながらほとんどいませんでした。評論等でもそのような当時の「ナショナリズム」構造について分析を試みるもので、入手できた本は、小熊英二著「癒しのナショナリズム」他、数冊のみでした。

10年経って、こういう本が手頃な価格で出るようになってきたんだから、状況が変わってきたのかとも思います。ただ、あいも変わらずこんな問題がつづいていて、解決できていないということでもありますが…。

言いたいことは、こういうことです。

構図を単純化しないでそこの内側をきちんと見ないと、この種の問題は、先へは進めないと思います。というか、そうしないと、加害者もそれを非難する側も、同じコインの表と裏になってしまうだけです。「加害者」は「差別主義者」「レイシスト」と非難されがちですが、実は「普通の人」が、スルッと、そんなことをするのです。実は、「加害者」も、それを非難する側も、本質的な違いをそれほど持たないように感じるのです。そのことに我々は自覚的にならないといけないのではないでしょうか?

「在特会」の存在を嘲笑し、また別の問題ではたとえば「石原!」とか「橋下!」などと呼び捨てにして糾弾しているだけでは、問題状況は変わらないと思います。その両者と自身の隠し持っている共通性に、我々は目を向けないといけないと感じ続けています。

※Amazon:「ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて」
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E6%84%9B%E5%9B%BD-%E5%9C%A8%E7%89%B9%E4%BC%9A%E3%81%AE%E3%80%8C%E9%97%87%E3%80%8D%E3%82%92%E8%BF%BD%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%A6-g2book-%E5%AE%89%E7%94%B0-%E6%B5%A9%E4%B8%80/dp/4062171120

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2011年11月11日 (金)

むさしの国際交流まつり2011/11月20日@武蔵境

以下、イベント告知です。

むさしの国際交流まつり2011は、
11月20日(日曜日) 11:00-17:00
に開催されます。

会場は武蔵境駅そば、
スイングビル内です。

詳細はこちら
 ↓
http://www.mia.gr.jp/indexmatsuri.html

ぜひ、ご来場下さい!

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2011年6月24日 (金)

高校無償化・教育補助金:7/16(土)@枝川「教育における民族差別を許さないシンポジウム」

以下のシンポジウムをご案内します。

ーーーーー

「高校無償化からの排除、助成金停止
教育における民族差別を許さないシンポジウム」

竣工した枝川朝鮮学校、その講堂を会場として初めてのシンポジウムを開催します。

校地取り上げ裁判弁護団として活躍したお二人が「高校無償化問題」「助成金」について、熱く語ります。新校舎見学かたがた、ぜひご参加ください。

日時:7/16(土)午後3時~5時
主催:枝川朝鮮学校支援都民基金
お話:金舜植さん「<高校無償化・教育補助金>停止の問題点」
   師岡康子さん「国際人権法とマイノリティの教育権」
会場:枝川朝鮮学校 講堂
東京都江東区枝川1-11-26(東京メトロ有楽町線豊洲駅4番出口より徒歩10分)
参加費:1000円
〈資料実費以外の収益は学校備品購入費に充てます〉
(大学生・高校生、学校教員・保護者は無料)

※東京朝鮮第2初級学校:地図
http://navitokyo.com/03-3644-1544/

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2011年6月 2日 (木)

国際裁判管轄に関する民訴法等改正

今まで明文規定のなかった国際裁判管轄に関して、以下の法改正が4月28日に衆院本会議で可決成立しました。

以下、情報提供として、載せておきます。

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00034.html

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案新旧対照条文

http://www.moj.go.jp/houan1/saibankan9_refer04.html

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案要綱第一
 民事訴訟法の一部改正

一 被告の住所等による管轄権

1 日本の裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第一項関係)

2 日本の裁判所は、大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、1にかかわらず、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第二項関係)

3 日本の裁判所は、法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき事務所若しくは営業所がない場合又はその所在地が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第三項関係)

二 契約上の債務に関する訴え等の管轄権

1 契約上の債務の履行の請求を目的とする訴え又は契約上の債務に関して行われた事務管理若しくは生じた不当利得に係る請求、契約上の債務の不履行による損害賠償の請求その他契約上の債務に関する請求を目的とする訴えは、契約において定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき、又は契約において選択された地の法によれば当該債務の履行地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第一号関係)

2 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴えは、手形又は小切手の支払地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第二号関係)

3 財産権上の訴えは、請求の目的が日本国内にあるとき、又は当該訴えが金銭の支払を請求するものである場合には差し押さえることができる被告の財産が日本国内にあるとき(その財産の価額が著しく低いときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第三号関係)

4 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するものは、当該事務所又は営業所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第四号関係)

5 日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する外国会社をいう。)を含む。)に対する訴えは、当該訴えがその者の日本における業務に関するものであるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第五号関係)

6 船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴えは、船舶が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第六号関係)

7 会社その他の社団又は財団に関する訴えで第五条第八号に掲げるものは、社団又は財団が法人である場合にはそれが日本の法令により設立されたものであるとき法人でない場合にはその主たる事務所又は営業所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第七号関係)

8 不法行為に関する訴えは、不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第八号関係)

9 船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴えは、損害を受けた船舶が最初に到達した地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第九号関係)

10 海難救助に関する訴えは、海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十号関係)

11 不動産に関する訴えは、不動産が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十一号関係)

12 相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴えは、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十二号関係)

13 相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで12の訴えに該当しないものは、12に定めるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十三号関係)

三 消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権

1 消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の四第一項関係)

2 労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の四第二項関係)

3 消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、二は、適用しないものとすること。(第三条の四第三項関係)

四 管轄権の専属

1 会社法第七編第二章に規定する訴え(同章第四節及び第六節に規定するものを除く。)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第六章第二節に規定する訴えその他これらの法令以外の日本の法令により設立された社団又は財団に関する訴えでこれらに準ずるものの管轄権は、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第一項関係)

2 登記又は登録に関する訴えの管轄権は、登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第二項関係)

3 知的財産権(知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)第二条第二項に規定する知的財産権をいう。)のうち設定の登録により発生するものの存否又は効力に関する訴えの管轄権は、その登録が日本においてされたものであるときは、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第三項関係)

五 併合請求における管轄権等

1 一の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当該一の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができるものとすること。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限るものとすること。(第三条の六関係)

2 日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により第百四十五条第一項の確認の請求について管轄権を有しないときは、当事者は、同項の確認の判決を求めることができないものとすること。(第百四十五条第三項関係)

3 日本の裁判所が本訴の目的である請求について管轄権を有し、反訴の目的である請求について管轄権を有しない場合には、被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と密接に関連する請求を目的とするときに限り、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができるものとすること。ただし、日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により反訴の目的である請求について管轄権を有しないときは、この限りでないものとすること。(第百四十六条第三項関係)

六 管轄権に関する合意

1 当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができるものとすること。(第三条の七第一項関係)

2 1の合意の方式等について所要の規定を整備すること。(第三条の七第二項及び第三項関係)

3 外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができないものとすること。(第三条の七第四項関係)

4 将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする1の合意は、(一)及び(二)の場合に限り、その効力を有するものとすること。(第三条の七第五項関係)

(一) 消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、(二)の場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

(二) 消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。

5 将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする1の合意は、(一)及び(二)の場合に限り、その効力を有するものとすること。(第三条の七第六項関係)

(一) 労働契約の終了の時にされた合意であって、その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、(二)の場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

(二) 労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業主が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、労働者が当該合意を援用したとき。

七 応訴による管轄権

被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、日本の裁判所は、管轄権を有するものとすること。(第三条の八関係)

八 特別の事情による訴えの却下

日本の裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができるものとすること。(第三条の九関係)

九 管轄権が専属する場合の適用除外

一から八まで(四、五2及び3を除く。)の規定は、訴えについて法令に日本の裁判所の管轄権の専属に関する定めがある場合には、適用しないものとすること。(第三条の十関係)

十 管轄権に関する規定の整備

職権証拠調べ及び管轄権の標準時について規定を整備すること。(第三条の十一及び第三条の十二関係)

十一 上告理由

日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したことを上告の理由とするものとすること。(第三百十二条第二項第二号の二関係)

十二 その他所要の整備

日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属するものとするほか、管轄の規定について所要の規定を整備すること。(第五条第十五号、第十条の二及び第十一条第三項関係)

第二 民事保全法の一部改正

保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができるものとすること。(第十一条関係)

第三 施行期日等

1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係)

2 この法律の施行に伴う経過措置の規定を整備すること。(附則第二条関係)

3 この法律の施行に伴う関係法律の規定を整備すること。(附則第三条から第六条まで関係)

※参考:
法制審議会国際裁判管轄法制部会第1回会議(平成20年10月17日開催)配付資料「国際裁判管轄法制の整備について」より

http://www.moj.go.jp/content/000012194.pdf

1 国際裁判管轄法制の整備の必要性

現行民事訴訟法には,国内裁判管轄についての規定は存在するが,国際裁判管轄についての明文の規定は存在しない。国際裁判管轄の法制を整備する必要性は,平成8年の民事訴訟法改正の当時から認識されており,財産権関係の国際裁判管轄の規律は,その改正の際に検討対象とされたものの,当時,ヘーグ国際私法会議において,国際裁判管轄に関し,一般的かつ広範な条約を作成することが検討されていたことなどから,国内法制の整備は見送られた。ところが,同会議においては,その後の交渉の結果,管轄合意に関する小規模な条約が採択されるにとどまり,近い将来,国際裁判管轄についての多国間条約が作成される見込みは失われた。

国際的な民商事紛争の解決については,司法制度改革審議会意見書(平成13年6月公表)においても,「経済活動のグローバル化や国境を越えた電子商取引の急速な拡大に伴い、国際的な民商事紛争を迅速に解決することが極めて重要となっている」との認識が示され,その後,平成15年に仲裁法が制定され,同18年に法の適用に関する通則法が制定されるなど,国内法制の整備が積極的に進められてきた。

国際裁判管轄に関する規律は,国際的な民商事紛争において,我が国の裁判所が管轄を有するかどうかを決する重要な規律であり,社会経済の国際化に伴い,その判断基準の明確化への要請はますます高くなっていることからも,その法制を整備する必要性は高い。

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