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2013年9月 4日 (水)

「非嫡出子」相続分の違憲判断

久々の更新です。
予期されていましたが、本日、「非嫡出子」相続分に関する民法の規定について、ようやく違憲判断が出ました。以下、ご紹介します。

(以下2013年9月4日時事通信)
婚外子相続格差は違憲=民法規定めぐり初判断-最高裁大法廷

 結婚していない男女の間に生まれた子(婚外子)の遺産相続分を結婚している夫婦の子(嫡出子)の半分とした民法の規定が、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた家事審判の特別抗告審の決定で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は4日、規定を違憲とする初判断を示した。
(以上引用終わり)

早くも裁判所HPには判決がアップされています。
・・ http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83520&hanreiKbn=02

早速読んでみましたが、


「嫡出でない子の法定相続分を嫡出子のそれの2分の1とする本件規定の合理性は,前記2及び(2)で説示したとおり,種々の要素を総合考慮し,個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし,嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であり,法律婚を尊重する意識が幅広く浸透しているということや,嫡出でない子の出生数の多寡,諸外国と比較した出生割合の大小は,上記法的問題の結論に直ちに結び付くものとはいえない。」

・・これは、当たり前のことですよね。仮にマイノリティでもそれでいいというわけではありません。この言い回しは応用が利きますし、他のマイノリティに関する問題についても、このように判断してほしいと思います。


また、差別の合理性判断の文中で、世界的な情勢の推移を示すものとして、以下のように国際条約を引いて説明している部分が目を引きました。地裁レベルからこのように国際条約を引用して判断してほしいと思ったりもします。

「我が国は,昭和54年に「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(昭和54年条約第7号)を,平成6年に「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号)をそれぞれ批准した。これらの条約には,児童が出生によっていかなる差別も受けない旨の規定が設けられている。また,国際連合の関連組織として,前者の条約に基づき自由権規約委員会が,後者の条約に基づき児童の権利委員会が設置されており,これらの委員会は,上記各条約の履行状況等につき,締約国に対し,意見の表明,勧告等をすることができるものとされている。
我が国の嫡出でない子に関する上記各条約の履行状況等については,平成5年に自由権規約委員会が,包括的に嫡出でない子に関する差別的規定の削除を勧告し,その後,上記各委員会が,具体的に本件規定を含む国籍,戸籍及び相続における差別的規定を問題にして,懸念の表明,法改正の勧告等を繰り返してきた。最近でも,平成22年に,児童の権利委員会が,本件規定の存在を懸念する旨の見解を改めて示している。」


あと、こんなことも書いてありました。

「4 先例としての事実上の拘束性について

本決定は,本件規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであり,平成7年大法廷決定並びに前記3(3)キの小法廷判決及び小法廷決定が,それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。

他方,憲法に違反する法律は原則として無効であり,その法律に基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであることからすると,本件規定は,本決定により遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断される以上,本決定の先例としての事実上の拘束性により,上記当時以降は無効であることとなり,また,本件規定に基づいてされた裁判や合意の効力等も否定されることになろう

しかしながら,本件規定は,国民生活や身分関係の基本法である民法の一部を構成し,相続という日常的な現象を規律する規定であって,平成13年7月から既に約12年もの期間が経過していることからすると,その間に,本件規定の合憲性を前提として,多くの遺産の分割が行われ,更にそれを基に新たな権利関係が形成される事態が広く生じてきていることが容易に推察される。
取り分け,本決定の違憲判断は,長期にわたる社会状況の変化に照らし,本件規定がその合理性を失ったことを理由として,その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである。

それにもかかわらず,本決定の違憲判断が,先例としての事実上の拘束性という形で既に行われた遺産の分割等の効力にも影響し,いわば解決済みの事案にも効果が及ぶとすることは,著しく法的安定性を害することになる。
法的安定性は法に内在する普遍的な要請であり,当裁判所の違憲判断も,その先例としての事実上の拘束性を限定し,法的安定性の確保との調和を図ることが求められているといわなければならず,このことは,裁判において本件規定を違憲と判断することの適否という点からも問題となり得るところといえる(前記3(3)ク参照)。

以上の観点からすると,既に関係者間において裁判,合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが,関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば,本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当であるといえる。
そして,相続の開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については,債務者から支払を受け,又は債権者に弁済をするに当たり,法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから,相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的なものとなったとみることは相当ではなく,その後の関係者間での裁判の終局,明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて,法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である。

したがって,本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。」

・・つまり、これまで決まった相続には影響しません、ということです。
この部分については初めて見る言い回しで、おやっと思ったところ、説明として、以下の補足意見がついていました。

(金築裁判官補足意見)
「法廷意見のうち本決定の先例としての事実上の拘束性に関する判示は,これまでの当審の判例にはなかったもので,将来にわたり一般的意義を有し,種々議論があり得ると思われるので,私の理解するところを述べておくこととしたい。

本決定のような考え方が,いかにして可能であるのか。この問題を検討するに当たっては,我が国の違憲審査制度において確立した原則である,いわゆる付随的違憲審査制と違憲判断に関する個別的効力説を前提とすべきであろう。

付随的違憲審査制は,当該具体的事案の解決に必要な限りにおいて法令の憲法適合性判断を行うものであるところ,本件の相続で問題とされているのは,同相続の開始時に実体的な効力を生じさせている法定相続分の規定であるから,その審査は,同相続が開始した時を基準として行うべきである。本決定も,本件の相続が開始した当時を基準として,本件規定の憲法適合性を判断している。

また,個別的効力説では,違憲判断は当該事件限りのものであって,最高裁判所の違憲判断といえども,違憲とされた規定を一般的に無効とする効力がないから,
立法により当該規定が削除ないし改正されない限り,他の事件を担当する裁判所は,当該規定の存在を前提として,改めて憲法判断をしなければならない。個別的効力説における違憲判断は,他の事件に対しては,先例としての事実上の拘束性しか有しないのである。

とはいえ,遅くとも本件の相続開始当時には本件規定は憲法14条1項に違反するに至っていた旨の判断が最高裁判所においてされた以上,法の平等な適用という観点からは,それ以降の相続開始に係る他の事件を担当する裁判所は,同判断に従って本件規定を違憲と判断するのが相当であることになる。
その意味において,本決定の違憲判断の効果は,遡及するのが原則である。

しかし,先例としての事実上の拘束性は,同種の事件に同一の解決を与えることにより,法の公平・平等な適用という要求に応えるものであるから,憲法14条1項の平等原則が合理的な理由による例外を認めるのと同様に,合理的な理由に基づく例外が許されてよい。

また,先例としての事実上の拘束性は,同種の事件に同一の解決を与えることによって,法的安定性の実現を図るものでもあるところ,拘束性を認めることが,かえって法的安定性を害するときは,その役割を後退させるべきであろう。

本決定の違憲判断により,既に行われた遺産分割等の効力が影響を受けるものとすることが,著しく法的安定性を害することについては,法廷意見の説示するとおりであるが,特に,従来の最高裁判例が合憲としてきた法令について違憲判断を行うという本件のような場合にあっては,従来の判例に依拠して行われてきた行為の効力を否定することは,法的安定性を害する程度が更に大きい。

遡及効を制限できるか否かは,裁判所による法の解釈が,正しい法の発見にとどまるのか,法の創造的機能を持つのかという問題に関連するところが大きいとの見解がある。

確かに,当該事件を離れて,特定の法解釈の適用範囲を決定する行為は,立法に類するところがあるといわなければならない。裁判所による法解釈は正しい法の発見にとどまると考えれば,遡及効の制限についても否定的な見解に傾くことになろう。そもそも,他の事件に対する法適用の在り方について判示することの当否を問題にする向きもあるかもしれない。

しかし,本決定のこの点に関する判示は,予測される混乱を回避する方途を示すことなく本件規定を違憲と判断することは相当でないという見地からなされたものと解されるのであって,違憲判断と密接に関連しているものであるから,単なる傍論と評価すべきではない。
また,裁判所による法解釈は正しい法の発見にとどまるという考え方については,法解釈の実態としては,事柄により程度・態様に違いはあっても,通常,何ほどかの法創造的な側面を伴うことは避け難いと考えられるのであって,裁判所による法解釈の在り方を上記のように限定することは,相当とは思われない。
コモン・ローの伝統を受け継ぐ米国においても,判例の不遡及的変更を認めている。

また,判例の不遡及的変更は,憲法判断の場合に限られる問題ではないが,法令の規定に関する憲法判断の変更において,法的安定性の確保の要請が,より深刻かつ広範な問題として現出することは,既に述べたとおりである。法令の違憲審査については,その影響の大きさに鑑み,法令を合憲的に限定解釈するなど,謙抑的な手法がとられることがあるが,遡及効の制限をするのは,違憲判断の及ぶ範囲を限定しようというものであるから,違憲審査権の謙抑的な行使と見ることも可能であろう。

いずれにしても,違憲判断は個別的効力しか有しないのであるから,その判断の遡及効に関する判示を含めて,先例としての事実上の拘束性を持つ判断として,他の裁判所等により尊重され,従われることによって効果を持つものである。その意味でも,立法とは異なるのであるが,実際上も,今後どのような形で関連する紛争が生ずるかは予測しきれないところがあり,本決定は,違憲判断の効果の及ばない場合について,網羅的に判示しているわけでもない。
各裁判所は,本決定の判示を指針としつつも,違憲判断の要否等も含めて,事案の妥当な解決のために適切な判断を行っていく必要があるものと考える。」

・・つまりラフに言うと、本当はこれまでの他の相続でも同じように判断すべきだけれど、そうしたらあまりにぐちゃぐちゃになるから、ここから先のみ、こう扱います、そう扱うことも違憲審査の制度上許容されています、というような話です。

(千葉裁判官補足意見)
「私は,法廷意見における本件の違憲判断の遡及効に係る判示と違憲審査権との関係について,若干の所見を補足しておきたい。

1 法廷意見は,本件規定につき,遅くとも本件の相続が発生した当時において違憲であり,それ以降は無効であるとしたが,本決定の違憲判断の先例としての事実上の拘束性の点については,法的安定性を害することのないよう,既に解決した形となっているものには及ばないとして,その効果の及ぶ範囲を一定程度に制限する判示(以下「本件遡及効の判示」という。)をしている。

この判示については,我が国の最高裁判所による違憲審査権の行使が,いわゆる付随的審査制を採用し,違憲判断の効力については個別的効力説とするのが一般的な理解である以上,本件の違憲判断についての遡及効の有無,範囲等を,それが先例としての事実上の拘束性という形であったとしても,対象となる事件の処理とは離れて,他の同種事件の今後の処理の在り方に関わるものとしてあらかじめ示すことになる点で異例ともいえるものである。

しかし,これは,法令を違憲無効とすることは通常はそれを前提に築き上げられてきた多くの法律関係等を覆滅させる危険を生じさせるため,そのような法的安定性を大きく阻害する事態を避けるための措置であって,この点の配慮を要する事件において,最高裁判所が法令を違憲無効と判断する際には,基本的には常に必要不可欠な説示というべきものである。

その意味で,本件遡及効の判示は,いわゆる傍論(obiter dictum)ではなく,判旨(ratio decidendi)として扱うべきものである。

2 次に,違憲無効とされた法令について立法により廃止措置を行う際には,廃止を定める改正法の施行時期や経過措置について,法的安定性を覆すことの弊害等を考慮して,改正法の附則の規定によって必要な手当を行うことが想定されるところであるが,本件遡及効の判示は,この作用(立法による改正法の附則による手当)と酷似しており,司法作用として可能かどうか,あるいは適当かどうかが問題とされるおそれがないわけではない。

憲法が最高裁判所に付与した違憲審査権は,法令をも対象にするため,それが違憲無効との判断がされると,個別的効力説を前提にしたとしても,先例としての事実上の拘束性が広く及ぶことになるため,そのままでは法的安定性を損なう事態が生ずることは当然に予想されるところである。そのことから考えると,このような事態を避けるため,違憲判断の遡及効の有無,時期,範囲等を一定程度制限するという権能,すなわち,立法が改正法の附則でその施行時期等を定めるのに類した作用も,違憲審査権の制度の一部として当初から予定されているはずであり,本件遡及効の判示は,最高裁判所の違憲審査権の行使に性質上内在する,あるいはこれに付随する権能ないし制度を支える原理,作用の一部であって,憲法は,これを違憲審査権行使の司法作用としてあらかじめ承認しているものと考えるべきである。」

・・これも同じような話ですね。違憲審査という制度を取る以上、こういう自体は予想されるのだから許容されている、ということです。

この最後の話は、今後への影響も大きそうですから、これからいろいろと評釈されるかもしれません。ぐちゃぐちゃになりそうな事例は個別紛争解決によるのが本来の筋であって(これまでの相続の蒸し返しがされたら現実問題として相当に大変なことは確かにわかりますが)、このようにばさっと切ってしまうのはほんとうにそれでいいのかなあ、とも、ちょっと思いますし。

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