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2011年6月 2日 (木)

国際裁判管轄に関する民訴法等改正

今まで明文規定のなかった国際裁判管轄に関して、以下の法改正が4月28日に衆院本会議で可決成立しました。

以下、情報提供として、載せておきます。

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00034.html

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案新旧対照条文

http://www.moj.go.jp/houan1/saibankan9_refer04.html

★民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案要綱第一
 民事訴訟法の一部改正

一 被告の住所等による管轄権

1 日本の裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第一項関係)

2 日本の裁判所は、大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、1にかかわらず、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第二項関係)

3 日本の裁判所は、法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき事務所若しくは営業所がない場合又はその所在地が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有するものとすること。(第三条の二第三項関係)

二 契約上の債務に関する訴え等の管轄権

1 契約上の債務の履行の請求を目的とする訴え又は契約上の債務に関して行われた事務管理若しくは生じた不当利得に係る請求、契約上の債務の不履行による損害賠償の請求その他契約上の債務に関する請求を目的とする訴えは、契約において定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき、又は契約において選択された地の法によれば当該債務の履行地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第一号関係)

2 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴えは、手形又は小切手の支払地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第二号関係)

3 財産権上の訴えは、請求の目的が日本国内にあるとき、又は当該訴えが金銭の支払を請求するものである場合には差し押さえることができる被告の財産が日本国内にあるとき(その財産の価額が著しく低いときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第三号関係)

4 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するものは、当該事務所又は営業所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第四号関係)

5 日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する外国会社をいう。)を含む。)に対する訴えは、当該訴えがその者の日本における業務に関するものであるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第五号関係)

6 船舶債権その他船舶を担保とする債権に基づく訴えは、船舶が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第六号関係)

7 会社その他の社団又は財団に関する訴えで第五条第八号に掲げるものは、社団又は財団が法人である場合にはそれが日本の法令により設立されたものであるとき法人でない場合にはその主たる事務所又は営業所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第七号関係)

8 不法行為に関する訴えは、不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第八号関係)

9 船舶の衝突その他海上の事故に基づく損害賠償の訴えは、損害を受けた船舶が最初に到達した地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第九号関係)

10 海難救助に関する訴えは、海難救助があった地又は救助された船舶が最初に到達した地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十号関係)

11 不動産に関する訴えは、不動産が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十一号関係)

12 相続権若しくは遺留分に関する訴え又は遺贈その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴えは、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十二号関係)

13 相続債権その他相続財産の負担に関する訴えで12の訴えに該当しないものは、12に定めるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の三第十三号関係)

三 消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権

1 消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の四第一項関係)

2 労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができるものとすること。(第三条の四第二項関係)

3 消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、二は、適用しないものとすること。(第三条の四第三項関係)

四 管轄権の専属

1 会社法第七編第二章に規定する訴え(同章第四節及び第六節に規定するものを除く。)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第六章第二節に規定する訴えその他これらの法令以外の日本の法令により設立された社団又は財団に関する訴えでこれらに準ずるものの管轄権は、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第一項関係)

2 登記又は登録に関する訴えの管轄権は、登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第二項関係)

3 知的財産権(知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)第二条第二項に規定する知的財産権をいう。)のうち設定の登録により発生するものの存否又は効力に関する訴えの管轄権は、その登録が日本においてされたものであるときは、日本の裁判所に専属するものとすること。(第三条の五第三項関係)

五 併合請求における管轄権等

1 一の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当該一の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができるものとすること。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限るものとすること。(第三条の六関係)

2 日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により第百四十五条第一項の確認の請求について管轄権を有しないときは、当事者は、同項の確認の判決を求めることができないものとすること。(第百四十五条第三項関係)

3 日本の裁判所が本訴の目的である請求について管轄権を有し、反訴の目的である請求について管轄権を有しない場合には、被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と密接に関連する請求を目的とするときに限り、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができるものとすること。ただし、日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により反訴の目的である請求について管轄権を有しないときは、この限りでないものとすること。(第百四十六条第三項関係)

六 管轄権に関する合意

1 当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができるものとすること。(第三条の七第一項関係)

2 1の合意の方式等について所要の規定を整備すること。(第三条の七第二項及び第三項関係)

3 外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができないものとすること。(第三条の七第四項関係)

4 将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする1の合意は、(一)及び(二)の場合に限り、その効力を有するものとすること。(第三条の七第五項関係)

(一) 消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、(二)の場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

(二) 消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。

5 将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする1の合意は、(一)及び(二)の場合に限り、その効力を有するものとすること。(第三条の七第六項関係)

(一) 労働契約の終了の時にされた合意であって、その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、(二)の場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

(二) 労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業主が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、労働者が当該合意を援用したとき。

七 応訴による管轄権

被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、日本の裁判所は、管轄権を有するものとすること。(第三条の八関係)

八 特別の事情による訴えの却下

日本の裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができるものとすること。(第三条の九関係)

九 管轄権が専属する場合の適用除外

一から八まで(四、五2及び3を除く。)の規定は、訴えについて法令に日本の裁判所の管轄権の専属に関する定めがある場合には、適用しないものとすること。(第三条の十関係)

十 管轄権に関する規定の整備

職権証拠調べ及び管轄権の標準時について規定を整備すること。(第三条の十一及び第三条の十二関係)

十一 上告理由

日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したことを上告の理由とするものとすること。(第三百十二条第二項第二号の二関係)

十二 その他所要の整備

日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属するものとするほか、管轄の規定について所要の規定を整備すること。(第五条第十五号、第十条の二及び第十一条第三項関係)

第二 民事保全法の一部改正

保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができるものとすること。(第十一条関係)

第三 施行期日等

1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。(附則第一条関係)

2 この法律の施行に伴う経過措置の規定を整備すること。(附則第二条関係)

3 この法律の施行に伴う関係法律の規定を整備すること。(附則第三条から第六条まで関係)

※参考:
法制審議会国際裁判管轄法制部会第1回会議(平成20年10月17日開催)配付資料「国際裁判管轄法制の整備について」より

http://www.moj.go.jp/content/000012194.pdf

1 国際裁判管轄法制の整備の必要性

現行民事訴訟法には,国内裁判管轄についての規定は存在するが,国際裁判管轄についての明文の規定は存在しない。国際裁判管轄の法制を整備する必要性は,平成8年の民事訴訟法改正の当時から認識されており,財産権関係の国際裁判管轄の規律は,その改正の際に検討対象とされたものの,当時,ヘーグ国際私法会議において,国際裁判管轄に関し,一般的かつ広範な条約を作成することが検討されていたことなどから,国内法制の整備は見送られた。ところが,同会議においては,その後の交渉の結果,管轄合意に関する小規模な条約が採択されるにとどまり,近い将来,国際裁判管轄についての多国間条約が作成される見込みは失われた。

国際的な民商事紛争の解決については,司法制度改革審議会意見書(平成13年6月公表)においても,「経済活動のグローバル化や国境を越えた電子商取引の急速な拡大に伴い、国際的な民商事紛争を迅速に解決することが極めて重要となっている」との認識が示され,その後,平成15年に仲裁法が制定され,同18年に法の適用に関する通則法が制定されるなど,国内法制の整備が積極的に進められてきた。

国際裁判管轄に関する規律は,国際的な民商事紛争において,我が国の裁判所が管轄を有するかどうかを決する重要な規律であり,社会経済の国際化に伴い,その判断基準の明確化への要請はますます高くなっていることからも,その法制を整備する必要性は高い。

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