改正国籍法、参院可決成立。
国籍法改正が成立しました。
(東京新聞2008年12月5日より一部引用)
改正国籍法が成立 父親の認知で取得可能に
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008120501000205.html
未婚の日本人男性と外国人女性の間に生まれた子について、父親が認知すれば国籍を取得できるようにする改正国籍法が5日午前、参院本会議で自民、公明、民主各党などの賛成多数で可決、成立した。
両親の結婚を取得条件とする現行法を違憲とした最高裁判決を受けた改正。うその認知で国籍を不正に取得する「偽装認知」を防ぐため、虚偽の届け出をした者には1年以下の懲役か20万円以下の罰金を科す規定を新設した。
自民、民主両党は今国会での成立に向け審議促進で協力していたが、両党の一部議員が「偽装認知が横行する恐れがある」と慎重な審議を求め、採決日程がずれ込んだ。両党間で調整した結果、参院法務委員会での4日の採決に際して(1)DNA鑑定導入の当否を検討(2)父親への聞き取り調査など審査の厳格化―などを盛り込んだ付帯決議を採択した。
(中略)各法務局は改正法施行後の来年1月から取得届の審査を始める予定だ。
(以上引用終わり)
なお採決直前になって急に「偽装認知の恐れ」が強調されはじめたように感じますが、
今回の最高裁判決はこの点について、
「国籍法は,前記のとおり,父母両系血統主義を採用し,日本国民である父又は母との法律上の親子関係があることをもって我が国との密接な結び付きがあるものとして日本国籍を付与するという立場に立って,出生の時に父又は母のいずれかが日本国民であるときには子が日本国籍を取得するものとしている(2条1号)。
その結果,日本国民である父又は母の嫡出子として出生した子はもとより,日本国民である父から胎児認知された非嫡出子及び日本国民である母の非嫡出子も,生来的に日本国籍を取得することとなるところ,
同じく日本国民を血統上の親として出生し,法律上の親子関係を生じた子であるにもかかわらず,日本国民である父から出生後に認知された子のうち準正により嫡出子たる身分を取得しないものに限っては,生来的に日本国籍を取得しないのみならず,同法3条1項所定の届出により日本国籍を取得することもできないことになる。このような区別の結果,日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが,日本国籍の取得について著しい差別的取扱いを受けているものといわざるを得ない。」
とした上で、
「なお,日本国民である父の認知によって準正を待たずに日本国籍の取得を認めた場合に,国籍取得のための仮装認知がされるおそれがあるから,このような仮装行為による国籍取得を防止する必要があるということも,本件区別が設けられた理由の一つであると解される。
しかし,そのようなおそれがあるとしても,父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが,仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有するものとはいい難く,上記オの結論を覆す理由とすることは困難である。」
としていること(下線部筆者)に、念のため触れておきたいと思います。
日弁連会長談話が下記の通り発表されていますが、後半部分の趣旨としては、おそらく上記最高裁判決引用部分の趣旨に留意すべきである、ということでしょう。
(参考:最高裁判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080604174246.pdf
(参考:日弁連会長談話)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/081205.html
本日、国籍法の改正法が成立した。本改正は本年6月4日の国籍法違憲訴訟最高裁大法廷判決を受け、日本国籍を有する父又は母が生後認知した未成年者については父母の婚姻を要件とせず、届出による日本国籍の取得を認めるようにするものである。当連合会も、1996(平成8)年6月、父母の婚姻要件を定める現行国籍法の規定が憲法14条1項、国際人権自由権規約24条等、子どもの権利条約2条にも違反することを指摘し、政府に対して法改正を求めてきたところであり、今回の改正はこの主張に沿うものとして評価するものである。
しかし、今回の改正(附則3条)でも、2003(平成15)年1月1日の時点ですでに20歳になっていた子については救済されないこととされた。しかしながら、当連合会が既に主張しているとおり、本来は、このような子についても日本国籍の取得が認められるべきところである。
当連合会は政府に対して、改正法による救済対象となった子に漏れなく国籍取得が認められるよう十分な広報を行い、かつ戸籍窓口でも外国関係の資料の提出が困難な母については、代替的な証明手段を認めるなど柔軟な運用を徹底することや、救済対象からもれた子についての帰化や在留資格などへの配慮を積極的に行うことを求める。また、付帯決議で触れられた父子関係の確認については、平等原則を踏まえて検討することを求める。
さらに、今回の法改正により日本国籍を取得した子の外国人の母についての日本への入国および在留についても、上記最高裁判決の趣旨に基づいて子の利益に重点をおき、原則的にこれを認める運用をなすべきである。
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