昨日は福祉の現場職員の方々が主催されている定例勉強会に出てきました。この勉強会はいつも本当に勉強になることばかりで、このような機会を与えていだだけることに感謝しなければいけないと思っています。
さて、今日の勉強会テーマは「面接技術・対人援助技術」でした。僕自身、とくに最近関心の強い分野です。この会は生活保護行政や高齢者福祉の現場で苦労されている方々が参加されている勉強会で、そのような相談業務の現場でのさまざまな苦労も見えましたし、今日の会も、大変参考になりました。
で、今日の話題は、弁護士の「法律相談技術」。
対人援助技術の基本として、「バイスティックの七原則」というものがあります。以下昨日のレジュメからの受け売りなのですが、
1 個別化の原則
相手を個人としてとらえ、相手の問題状況に応じて個別的な対応をすること
2 意図的な感情表出の原則
援助者が相手の考えや感情(肯定的な感情も否定的な感情も)を自由に表現できるように働きかけなければならない。そして、その相手の感情表現を大切に扱わなければならない。
3 制御された情緒関与の原則
援助者は自身の感情を自覚し吟味しながら、援助者が相手の表出した感情を受容的・共感的に受け止めること。
4 非審判的態度の原則(受容の原則)
援助者は相手の言動や行動を、一定の価値基準や援助者自身の価値基準から良いとか悪いとか評価する態度を慎まなければならない。相手のあるがままを受け入れるように努め、相手を一方的に非難してはならない。
5 自己決定の原則
援助者は相手の意思に基づく決定が出来るように援助していく。問題解決の方策についてメリットとデメリットを検討しつつ自己決定に至る過程を一緒にたどったり、さまざまな選択肢を用意するなど自己決定の条件整備をすることも求められる。そして、その相手の自己決定を促し尊重する。
6 秘密保持の原則
相手から信頼を得るためには、援助関係の中で相手の言動や状況を秘密(プライバシー)として守らねばならない。また秘密(プライバシー)が守られることが保証されることにより、はじめて「意図的な感情表出」も可能となる。
7 専門的援助関係の原則
援助者は、個人的な関心・興味から相手に関わってはならない。援助者は、常に専門職としての態度で臨まなければならない。
…あたりまえのように見えますが、弁護士に引き寄せて考えると、法律相談においてこれらを実践できている方は、残念ですが、おそらくあまり多くありません。多くの法律相談は、相談者の話から一刻も早く法的結論を導くための情報を引き出す作業になってしまっています。
問題意識すらなくそのようになってしまっている弁護士もいれば、弁護士はそのような情報を与えるのが職務だからそれでいいのだ、という反論をする弁護士もいます。しかしそれに対しては、僕ははっきりと「NO」と言いたいのです。そんな弁護士像は、そろそろ克服されなければなりません。
民事訴訟制度の目的(存在理由)は何か、という根本的な議論があります。これについては、民事訴訟の目的は「紛争解決」にある、とする見解が有力です。
市民が民事訴訟制度を利用する意図は基本的にここにあると言っていいと思うので、僕も基本的にこの立場に賛成です。
で、とすれば、民事訴訟の前提・場合によってはスタートラインとなる、弁護士へのはじめての法律相談も、弁護士はその究極目的は紛争解決にある、と考えなければなりません。法的結論を導出・提示するのも、それが紛争解決に資するという理由で、正当化されるのです。
逆にいえば、紛争解決を遠ざける形で法的結論の提示にこだわる(または、そのような形でしか法律相談を実践できない)ことは、目的との関係では、場合によってはむしろ避けなければならないのではないでしょうか。それは、弁護士様の、高尚な、ありがたい専門知識のご開陳、にすぎません。話している弁護士はご満悦でしょうが、相談者にとってはけむに巻かれ、時には腹立ちすら覚え、満足せずに帰り、結局紛争解決には何にも役に立ちません。
相手の「援助」という視点に立ち切った上記七原則その他のソーシャルワーク的視点、及びそれらの意識化は、弁護士の法律相談業務の性質に矛盾しないばかりか、積極的に取り入れて行くべきと思います。
この話(なお、「リーガルコミュニケーション」とか「ロイヤリング」などとも言われます)、重要な問題だと考えているので、機会をあらためてまた書いてみたいと思います。(でも今日はここまで)