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2007年7月29日 (日)

演劇脚本と著作権(新宿梁山泊仮処分事件)

 劇団「新宿梁山泊」を相手取って脚本家の鄭義信さんが公演の中止を求める仮処分を申し立てていた問題で、下記のとおり和解が成立したようです。

(以下読売オンライン2007年7月24日より一部引用)
鄭義信さん、劇団「新宿梁山泊」と和解…8月は上演中止
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070724i412.htm
 劇団「新宿梁山泊」が来月1日から5日まで、東京・中野で上演を予定していた戯曲「それからの夏2007」について、劇作家の鄭義信(チョン・ウィシン)さん(50)が著作権侵害を理由に上演差し止めなどの仮処分を申し立てていた問題は24日、新宿梁山泊が上演を中止することなどを条件に東京地裁で和解が成立した。
(中略)劇団側は近く、鄭さんの作品の上演権が劇団にあることを確認する訴訟を起こすとしており、「訴訟で上演権が認められるまでは公演を延期することにした」と説明している。
(以下略、以上引用終わり)

 なお、申し立て時の報道は以下の通り。

(以下毎日インタラクティブ2007年7月7日より一部引用)
無許可上演:自作の上演禁止求め仮処分申請 脚本家・鄭さん、新宿梁山泊に
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/archive/news/2007/07/07/20070707ddm041040159000c.html
 劇団「新宿梁山泊」(金守珍(キムスジン)代表)が上演予定の「それからの夏2007」を巡り、脚本家の鄭義信(チョンウィシン)さんが6日、「自分の作品を無許可で上演しようとしている」と、東京地裁に上演差し止めの仮処分申請をした。
 申立書によると、鄭さんは95年に同劇団を退団した際「一言断ってもらえれば自作の上演を許可する」と条件をつけたが、劇団が3回にわたって無断上演したため上演を一切許可しないと通告した。しかし、劇団は鄭さんが執筆した「それからの夏」を改題して8月に東京都内で上演することを決定。7月からチケット発売も始めた。
(以下略、以上引用終わり)

 私も今回の公演案内が来た時には「お!」と喜んだクチですので、公演中止は本当に残念です。
 ただ、それと著作権法上の問題は別であり、上記のような経緯のもと鄭義信氏の了解を得られないまま公演を行おうとしたのであれば、やはりそこに生じる問題点を検討しないわけにはいきません。

 報道によると、劇団側の主張としては、「作品は劇団全体で作り上げたもので、作家だけに著作権があるというのは異論がある」というもののようです。
 この主張を心情的には理解できないわけではありませんが、現行著作権制度のもとでは、劇団に(も)著作権があるという主張は、法的にはやはり困難と言わざるを得ないと思います。

 そもそも演劇脚本と著作権の関係は、これまでグレーゾーンでした。
 また演劇脚本と著作権の関係・内容を検討する場合に考慮すべき(小説等と違う)演劇脚本の特殊性として、元になる本が書かれた後に、劇団全体で練り上げられていく(そしてそれを受けてどんどん内容が(ときには原形をとどめないほどに)変わっていく)、という性質があります。そのような特殊性も踏まえてきちんと検討する必要がありますし、その上で現行法規定では演劇脚本の実態を十分に反映しきれないのであれば、それに対する手当も考えていく必要があります。
 この問題も、後日さらに深めて検討してみたいと思います。

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